貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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280話

「よぉっ惜しまれた引退宣言だったな、俺の時とは大違いだぜ」

「俺は目を引きすぎたからな、そりゃ騒ぐさ」

 

自身の引退宣言から数日が経過していた。当然だが多くの者たちからの引き留めを受けた、それは同じトレセン学園の生徒からも同じだった。まだ走って欲しい、まだ一緒に居たいなど嬉しい言葉も貰えたが自分の意志が固い事が分かると受け入れてくれる者達ばかりで嬉しくなるばかりだった。それどころか最後のレースは全力で応援するから勝ってくれとまで言ってくれた。分かってないのはURAだけだ。

 

「まだ来てんのか?」

「そりゃもう、さっきも電話来たし。もう着拒してやろうかな」

「応やったれやったれ」

「つってもトップからの電話もあるからなぁ……」

 

URAの上層部の一部から引退の撤回とファイナルズに関する説明を求める問い合わせは絶えない。ファイナルズに関してはレースの予定や各トレセンとの連携などもあるだろうがその辺りの調整は全部自分と理事長、たづなさんでやってあるので無駄の一言に尽きる。寧ろ調整云々は各トレセンが積極的に引き受けてくれているし、地方トレセンは地元と密接な関係なのもある為かフリースタイルでレースを行っている場所に声を掛けて、一般校ウマ娘の予選実施準備をしてくれている。

 

それ以上に声高に叫ぶのが完全引退撤廃要求。URAにとって自分は金の卵どころの話ではない、文字通りの生きた伝説でありそれによって生まれる利益は莫大な物。自分を上手く乗せる事さえ出来れば出来たであろうイベント案が全て廃案になったと言っても過言ではない、ドリームトロフィーリーグに出ないというのはそう言う事なのである。

 

「幾ら言われても俺は引退撤回するつもりはねぇしファイナルズ関連だって中止にする気はサラサラない」

「何だURAはやめさせたいのか、お情けでURAって付けてやってんのに」

「態々年末にやる超大型レース企画だぜ、URA的に考えれば仕事量も膨大な事になるし全国各地で予選やって最後の本選を中央でやろうっていうんだから負担もデカいからね」

「ハッそれで生まれる利益もデカいんだ我慢しやがれってんだ」

 

URAとて中止にしたい訳ではない、だが余りにも告知が急すぎるURA自体が対応する事が出来ないと言ってきている。だからこそ前以て一番面倒事であるトレセンとの連携を此方でやったのだ、それに比べたら残っているものは楽な部類の仕事。何より―――第二のオグリキャップの発見などもし易くなると言ってみたらURAは想像以上に言葉に詰まり、認めた。

 

「まあ安心しろ、引退しても俺が使ってやる。アグレッサーチームの統括チーフがまだいねぇからそれで使ってやるよ」

「おいおいおい一番面倒臭い役目を押し付けんのかよ、そこは自分がやる所だろうよ」

「ハッ生憎俺は走ってる方が性に合ってるんでな、細かい調整はお前に任せる。そもそもこうやってる間も高速でタイピングしてる奴なんて適任に決まってんだろ」

「やれやれ……見つからなかったら引き受けてやるよ、あと理事長の許可な」

「言質取ったからな」

 

ボイスレコーダーの録音を再生させながら悪い顔をするサンデーサイレンス。アメリカでも重宝していたらしく何度かパパラッチが起こした問題を裁判沙汰にまで持って行った事があるらしい。その結果がどうなったかは此処で語るのはやめておこう。

 

「それでお前の現役人生は結局、今年の年末で終わりで良いんだろ?」

「ああ。URAの連中には一時の大きな利益と長い間続く一定以上の利益を示してどっちがいいかを選択させた」

「それ聞いてるとURAの連中が考えてるのは金だけにしか思えねぇな……」

 

間違ってはいない、トゥインクルシリーズを運営するURAには良くも悪くも大きな資金の流れがある。ランページはその流れを更に太く大きく出来る存在だったのにそれが自分達の知らない間に引退を決断して配信で全世界に宣言してしまったのだから。だがURAのトップはランページの引退を容認した、此処で決断しなければこの先の大きな決断もきっと出来ないと。今も上層部を説得しているとの事。

 

「まあお前の人生だ好きに生きればいい、俺も好きなように生きるからお前を巻き込む」

「出来ればある程度自重してくれると嬉しいんですけど」

「悪いなまだ日本語には不慣れジチョウって言葉の意味は分からねぇな~」

 

悪い顔をしながら出ていくその背中を見つめながらもキーを叩き続ける。有記念に出走する事は決めたが、まだ南坂が指定した休養期間はまだ余裕がある、その間に出来るだけファイナルズとレジェンドに関する事を詰めておかなければならない。それが今の自分に出来る最大の事なのだから……と思っていると扉がノックされる。入って来たのはたづなだった。

 

「どったのよたづなさん、URAから嫌がらせでも来た?」

「何方かというと……各国からでしょうか。引退するのであれば是非ランページさんを我が国に迎え入れたいという要望が殺到してまして……」

「あ~……やっぱり来るよなぁ……」

 

ランページの圧倒的なレース経験と技術、それを腐らせるなんて事は絶対にあってはならない。それならば我が国に来て貰ってその技術の全てを伝授して次のスターを育てて欲しい!!と願うのは自明の理。何せ芝ダートの世界王者、指導力に問題があったとしても併走をして貰えるだけでも得られるものは莫大な物があるだろう。故にそんな連絡がトレセン学園に来ている。

 

「ファイナルズとかやりますって言ったのに来るんだから参ったもんだな……いや設置とか終わったら来てくれってパターン?」

「両方ですね、何方かと言えば終わったら是非と言うのが多いです。特にドバイにアイルランド、アメリカからのラブコールが一番熱が入ってます」

「そこらは俺が直接電話して説得するか……携帯に連絡先あるし」

「何というか本当に凄い電話帳ですね……」

 

そんな話をしているとたづなが忘れる所でした、と封筒を手渡してきた。中身を確認してみるとURAからだった。

 

「何これ、メジロランページ記念設立についての意見を求む?」

「ランページさんの功績を称えてその名前を冠する重賞レースを設立するそうです。ですが芝にするかダートにするかで真っ二つに割れているから意見を欲しいとの事です」

「シンザン記念……的な?」

「はいセントライト記念的なあれです」

 

そういうのもあるのか……と普通に驚く。芝の場合はティアラ路線の三冠のトライアルレースの一つを変える案、ダートの場合はダート三冠のトライアルとして新しく設立する案があるらしい。何方の功績もあるランページだからこそ意見が割れているとの事。

 

「ぶっちゃけどっちでもいいわぁ……たづなさんはどう思う?」

「私に聞かれても困っちゃいます」

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