「最近は如何なのですか、学園は騒がしいでしょう」
「そうでもないですよ。肝心要の俺が極めて落ち着いてる訳なんですから。むやみやたらに騒ぎ立てるのもあれだと思って落ち着いてる子が多いです」
そんな言葉を掛け合っているランページ、相手はメジロアサマ。海外遠征を終えて日本に戻って来てからはアサマからのお茶会の誘いが増えるようになった。十中八九、原因はスーちゃんが海外遠征中の事をアサマに自慢するように話したからだろう。あの人の事だから添い寝の事やらも全部言ったに違いない。何だかんだでアサマも孫の事は大好きなお婆様、ライアンやマックイーン、パーマーもその余波を受けているとの事。まあパーマーは特に気にせずにヘリオスを連れて行って紹介したりする猛者だが。
「ンで引退した後はメジロ家で淑女教育とかって受けるんですか?」
「今更あなたにそのような物を強要出来る愚か者が居ると思いますか、俗物の処分も終わっています。凱旋門を制した時のあれらの顔と来たら……絵画にして永遠に残してあげたいぐらいには美しい構図でしたわ、題名はそうね……極まる栄華と地獄の絶望かしら」
「うわっ題名からして分かる俗物連中の哀れっぷり」
これだからこそメジロランページ、これがメジロランページだと胸を張って言えるレベルに彼女のそれは極まっている。何せG1レースのインタビュー前にハーブシガーを吸ってしまう程の剛の者を今更変えるなんて正気の沙汰ではない。そもそもランページは社会人に求められるレベルのマナーは確りと身についているのに無理にそれ以上を強制するなんて無粋な事はしない。
「それにしてもファイナルズとレジェンドなんて面白い事を考えましたね、私も出ようかしら?」
「えっ」
「冗談ですよ、シンザンさんと違って私は鍛えてはいませんからね。メジロ家の方に回っていましたから大した走りは出来ません、弁えているつもりですよ」
「だとしても吃驚しますって……スーちゃんも言いそうですね」
「間違いなく言うわねあの婆は」
「お婆様……言葉が」
「じゃああのクソお婆は」
「なんでスーちゃん絡むと若くなるんですか」
仲が良いというか悪いというべきか……いや良いというべきなんだろうが本当にこの二人は何とも言えない関係をしている。
「ンで……サンデーさんは如何ですかこっちでは」
「ええっ興味深いお話を聞かせて貰ってるわ」
今の所、サンデーサイレンスはまだメジロ家でお世話になっている。一応物件を漁ったり土地を探したりはしているのだが……トレセン近辺で探すと流石に難しいので大きめの一軒家で妥協するかそれとも離れた所の土地を買うべきかと悩んでいる模様。金は普通にあるから土地を買う事には全く躊躇はないらしいので、メジロ家所有の土地の一部を買う事も検討中との事。
「如何やらマックイーンが気に入られたみたいっすよ、学園だとよく一緒に居てスイーツとか飯食ってますし」
「意外ですね。マックイーンとそりが合うというのは」
「まあどっちかと言えばパーマー辺りが一番だと思いますもんねぇ」
サンデーはマックイーンと仲が良くなっていた。史実でも唯我独尊で暴れん坊なサンデーサイレンス、他の馬にも平気で喧嘩を売っていたのだが隣の放牧地に居たマックイーンにも喧嘩を売った。が、マックイーンは相手にしていなかったのだが……暫くするとサンデーサイレンスはマックイーンに心を開いた、まるで恋人のようだと形容される程に仲良くなっていた。理由は定かが出ないが……一説では自分に怯えなかったマックイーンを気に入ったというのが有力だとか……。
「はぁ~日本の菓子っつうのは侮れねぇな……こんなケーキ初めてだぞ」
「えっ!?アメリカにはショートケーキはないのですか!?」
「こういうのはねぇな……だが滅茶苦茶うめえじゃねえか!?この抹茶パフェも気に入ったぞ!!」
「それでしたら次は此処に行きません事!?不定期ですが此処で出すDXメロンパフェ!!今日がその日だという噂があるのです、例え違っても此処のスイーツは絶品なんですの!!」
「おし行くぞ今直ぐ行くぞ!!ランページの奴から車借りてあるからそれで行くぞ!!」
「はい!!」
「てな感じですげぇ仲良くなってます」
「あらまぁ……」
「お陰で俺のインプのガソリンとタイヤ減りまくり……トホホ……」
口座にある金はとんでもないのに金銭感覚は一般人のままなので、未だにガソリン代の値上げに怯えているランページにとっては車を貸すのはいいのだが平気で使いまくるサンデーは別の意味で恐ろしい……まあ一応補充はしてくれているが運転も荒いのかタイヤもかなり減る。そっちの方が問題なのだが……。
「ですが、彼女が日本に来ていただけたことは大きな財産です。メジロ家としても何時までも居て貰っても問題はありませんと伝えてください」
「まあ一応言っておきますけど……あの人自由だからなぁ……」
今頃自分のインプを隣にマックイーンを乗せて転がしてグルメ&スイーツ巡りをしている事を考えると……如何なんだろうか。
「今日は居るのでしょう?でしたらドーベルとブライトの相手をしてあげてくださいね、会いたがっていましたよ」
「分かりました、可愛い二人の相手はやぶさかではないですからね」
「あらっ私の相手は嫌だというのね?」
「意地悪な言い方しないでくださいよ。大好きお婆ちゃんとの一時が嫌な訳ないでしょ」
「フフッ宜しい♪」
この呼び方をすると矢張りアサマは機嫌がよくなる。皆からお婆様と尊敬を集めるのは当主としては嬉しい事だが、矢張り祖母としては慕って欲しい。だからこそランのこの呼び名は大好き。
「望む事なら、ドーベルやブライトにもそう呼ばれたいわねぇ……」
「強制はしない方が良いですけどね、何れ呼んでくれるかもしれませんよ」
「では期待して待つとしましょうか」
そんなこんなでお茶会を過ごしていると扉が開けられた、そこにはお土産を抱えたサンデーとマックイーンの姿があった。今日の巡りは終わったらしい。
「帰ったぜアサマさんよ、ほれこれお土産だ」
「これはご丁寧に、楽しめましたかサンデーさん」
「応よ。マックイーンの案内で散々巡って来たぜ、だけどよマックイーンお前明日から減量の為に動けよ?俺以上に喰ってたじゃねえか、メジロパックイーンだったぞ」
「そ、そこまでではありませんわ!?大丈夫ですわ、私の体重管理はパーフェクト、微塵の計算違いもありませんわ!!」
「応そうか、んじゃあの変態に話しとくぞ」
「やめてくださいましランページさん!!」
「やっぱ不安なんじゃねえか」
「やれやれ……羽目を外すなとは言いませんがもう少し慎みと落ち着きを持ってくれれば言う事がないのですが……」