最終レース、ラストランをワールドレコードを更新しての引退。これ以上の結果など望むことなど出来ないだろうと言わしめるほどに完璧な引き際を見せたランページ。終了後には抱き着かれて引退を惜しまれる中、引退式が行われた。日本いや世界の暴君の引退式はそれに相応しく行われている、南坂トレーナーと共に現れたメジロランページへとインタビューが行われる。
「私にとってランページさんはターニングポイントでした、私はずっと彼女が入る前のカノープスのままで行くと思ってました。いま語ったらたぶん信じられないと思いますが以前のカノープスは中堅のど真ん中という立ち位置でした、きっとスピカやリギルとは敵わないところに居続けると思っていたんですが……彼女に魅入られたおかげで凄い所まで来ちゃったなぁという思いですね」
『メジロランページさんは南坂トレーナーにはどのような印象を持っていられますか?初めてお会いした時の印象もお聞きしたいのですが』
「そうですねぇ……最初会った時はイクノとの併走相手を頼まれた時でしたかね、なんか優男のお兄ちゃんが声かけてきたなぁ程度の印象でしたね。でもそっから一気に引き込まれましたね、走り終えた後に直接見ずにイクノの脚の状態を見抜いてた上に本人の意思を尊重したうえで身体を大切にしていくっていう方針が直ぐに見えてました。俺からすれば三冠を目指すだの誰にも出来ない事を目指そうなんて口説き文句は興味なかったですからね、真摯にウマ娘に向き合って一緒に歩もうとしている姿勢に惚れてカノープスに入れましたね」
この時ばかりはランページも真面目にコメントを返していた。たとえ海外でもブらす事のなかったテンションを抑えて真剣に答えている、最後なのだから……とその姿を目に焼き付ける者もいれば故に寂しさを隠しきれずに泣き出してしまうファンもいた。
『南坂トレーナーにとって、一番思い出深いレースというのは何でしょうか』
「私にとって、ですか……そうですね矢張りジャパンカップですね。あの時は合宿中の時から秋華賞ではなくジャパンカップを見据えたメニューを組んでいましたからその全てが発揮されたジャパンカップは一番思い出深いといえばそうかもしれませんね、あの時はまだ13戦でしたか、それでも経験不足なんて声もありましたからそれもあって余計に覚えてますね」
「意地悪な言い方しやがるな南ちゃん、俺にとって一番は―――何だかんだで秋華賞だな、あの段階になってようやく今の俺の走りの原型が完成したって感じだったね。まあその後に色々あってフォームの改造やらとんでもねぇメニューやらをこの優男が組んでくれた結果が今なんですが……ホント無事是名バがカノープスのスローガンってぜってぇ嘘だよあれ」
「でもしなかったじゃないですか、ということは私の管理とランページの素質が良かったという事ですね」
「そういう事になりましょうけど釈然としないよあたしゃ」
普段の調子が少しだけ垣間見えるのは二人の間の会話のみ、トレーナーと担当ウマ娘という垣根を越えて完全に相棒という関係を確立しているのがよくわかる瞬間でもあった。引退式のインタビューがつつがなく、続けられていく中でインタビュアーは何かを決心したような表情になりながらそれを向けた。
『メジロ、ランページさん。引退なさった後の予定をお聞きしてもよろしいでしょうか』
少し、声が震えていた。誰もが気になっていたそれであり、できることならば聞きたくはないと思っていたこと。覆せぬとは分かっているそれを聞くと聞かぬとは全く別のものではなのである。それにランページは笑顔で肩を叩いて労いを向けながら口を開いた。
「前々から公言していたように、俺は次の伝説を作るための手助けをするつもりでいる。その為にファイナルズとレジェンドレースの設立と整備、調整をしようと思ってる。来年の開催を目指したいからな、まあその後は―――実はもう決めてある」
その言葉に皆がどよめいた。ファイナルズとレジェンドレースの設立、それが今のランページの至上の命題であり次の世代が活躍する土台を作るために動くと明言していた。ならばその先は?ドリームトロフィーリーグには進まずに引退を宣言した彼女はこの先どうする、レジェンドレースには出てもいいとは言っていたが……それが遂に明らかになる。
「つっても前々から言ってたように走る舞台を変えるだけ、手助けをするつもりだよ」
『そ、それは具体的には……』
「そうだな……トレセン学園には今サンデーさんが中核になってるアグレッサーチームがあるからその統括チーフって話が来てる―――が、生憎それだけじゃねぇんだよなぁ、これがな」
そういいながらもランページは胸元のポケットからあるものを取り出す、それをまるでコイントスするかのように指で空へと弾いた。小気味良い音を立てながらもランページが頭上でキャッチしながら指で挟みながら見せつけた。
「どうせならもっとだ、俺の走る事はもっともっとある筈だ。この走りを、俺の技術を、俺の魂を教える事は出来る筈だ。アグレッサーの統括チーフ、それは悪くねぇがどうせならもっと踏み込んでもいいと思ってる、俺は―――卒業後には中央トレセンの新人トレーナーをやる予定だぜ」
そこにあったのはトレーナー資格試験を合格し、中央トレセンで働くことを許す事を意味するバッチが輝いていた。そう、ランページはこっそりと試験を受けて一発で合格し、その資格を得ていた。そう、彼女はトレーナーになる。
「言っただろ舞台を変えるだけだって、競技者から指導者って訳だよ。引退して走るのをやめる訳じゃねえ、文字通り担当ウマ娘と共に走るトレーナーって訳だ。スピードシンボリことスーちゃんがトレーナーの資格を持ってることを知った辺りから決めた事だ。引退はする、だけどお前らとすぐにサヨナラバイバイって訳じゃねえよ。という訳だ―――みんなこれからも宜しく頼むな!!」
世界最速にして最強のウマ娘がトレーナーに転身、その言葉に皆が驚いた。それはその引退式を見ていた他のウマ娘も同じだった、ターボにテイオー、ライスにライアン、それにフローラといったラストランを共に走った皆の方を見ながらランページは笑った。自分を求めてくる人々に視線を返しながらもとあるVIPが知り合いの兄妹の横に居ながらも大喜びでその兄に抱き着いていることに苦笑いし、拳を振り上げた。
「
力強く掲げられたその言葉は、次の時代の開幕のゴングの唸りとなった。悲しみで終わる筈の引退式はいつの間にか、次のステージへと向う為の華やかな式典へと早変わりした。大きな歓声が包まれる中でランページは笑い続けていた。伝説のラストランは次の伝説への序曲へとなった。
「アハハハッ凄いなぁランは……凄いって分かってた筈なのに、全然だったんだなぁ……」
「まだ迷惑かけるぜ、南ちゃん」
「幾らでも掛けてください、何せ私はあなたのトレーナーですから―――貴方の強さは私が知っています」
「だなっ!!」
ランページは引退、そしてトレーナーという道を進みながら自分の力を次世代のウマ娘のために使うという選択を取りました。多分、カノープスでサブトレーナーやりながらアグレッサーの統括チーフをやるんでしょうね。
世代的な話をすると、新学期からはドーベルやタイキシャトル、ブライトにフクキタル、パールやスズカといった世代が入学してくる面白いタイミングになります。その翌年にはスぺちゃん世代事黄金世代、そしてオペラオーの覇王世代と、本当にこの辺りの充実感やばいですね。そんな世代との絡みを書きたいなぁと思ったりして……
書かないのかって?……もちろん、書きます!!というかすでに色々と脳裏を巡ってます!!アヤベさんとの絡みが真っ先に浮かびました。