貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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29話

「おめでとうランページさん。見事な走りだったわ」

「やめてくださいお婆様、そう言われると素直に照れちゃいますよ」

「フフッ少しは変わったと思ったけれど、まだまだ称賛には慣れていないようね」

 

重賞レースのデイリー杯を征したランページはその事をお婆様に報告しにメジロ家のお屋敷に参上していた。そこで待っていたのはアサマからの素直な称賛、声の影響もあるだろうが、この人に褒められるというのは何ともくすぐったい。

 

「5戦全勝、連続して重賞を制覇して次はG1に挑戦かと随分と期待されていますね。実際の所は?」

「一応南ちゃんと、トレーナーと阪神ジュベナイルフィリーズに行こうかって考えてます」

「と、なると貴方が目指すのは」

「トリプルティアラ」

 

その言葉に、思わず熱が灯る。その冠を初めて手にしたのはこの家の至宝とも言われたウマ娘だった、その背中に続けと名ウマ娘達がそこに、ティアラ路線へと挑んだ。未だ現れぬ二人目のトリプルティアラ、それを目指すと言われて思わずアサマは嘗てターフを駆けた時の情熱が蘇ってきたようだった。

 

「そうですか。ならば覚悟して挑みなさい、あの道は険しい―――けれど、望む価値がある道です」

「望む所。女王が得るという三つの冠、それを独裁者が手に入れてごらんに入れましょう」

 

頭を下げて、部屋を出ていくランページにアサマは年甲斐もなく身震いをしていた。ランページがその時見せたのは獰猛な肉食獣のような表情、そこにあるのは苦難に燃える挑戦者ではない。既にその先を見据えているのだ、そしてその先を叶える為にこんな所で止まるつもりはないという決意の表れ。言うなれば彼女は未だマイナスの状態、それをゼロへと戻しプラスへと転換させる為にこの勝利は必要不可欠。

 

「それすらも踏み台にする気は満々という事ですか……全く、生意気な孫ですこと」

 

そんな言葉を口遊みながらも紅茶を口する、不思議と今まで飲んだ中でそれは上位に上げられるほどに美味な味わいをしていた。

 

 

「ちぃ~す南ちゃん、届いたってマジ?」

「はい、此方に」

 

トレセン学園に戻って来たランページ、寮へと向かおうとしていた彼女に南坂から連絡がやって来た。それを受けて直ぐに部室に入るとそこには大きめの箱が部室のテーブルの上に置かれていた。

 

「随分と早かったな、こういうのってもうちょい時間かかるとか言ってなかったっけ?」

「はい。ですがそれは細かなリクエストを入れている場合ですね、ランページさんのご要望は言ってしまえばシンプルでしたから」

「飾りっ気ねぇから時間掛からないって事か」

「まあそういう事ですけど……」

 

折角気を使って濁したのに……と言わんばかりに苦々しい顔になってしまう南坂を無視して箱を開けてみる事にした。そこにあったのは―――ランページの勝負服だった。G1の舞台で着る事になる戦装束、これを纏う事で本当の自分となるのだろう、これで走る事で望んだ自分になれるのだろう。

 

「んじゃ早速試着してもいい?」

「はい、それでは外に出てますので終わりましたら呼んでください」

「居てくれてもいいぜ、南ちゃんなら変な気起こさねぇだろうし気にしねぇよ」

「流石にそうはいきませんよ、後それは信頼されて喜んでいいのかよく分かりません」

 

男として意識されてないという事なのだろうか、トレーナーとして全幅の信頼をおいてくれているという事なのか、それともその何方なのだろうかとも思いながらも外に出ていく南坂を見ながらもつまんねぇなと呟きながらも早速着てみる事にした。

 

「んしょっと……久しぶりかもなこういうのも」

 

基本制服だったりライアンとアイネスに選んでもらった服が多く、女性として慣れて来た身としてはこういうのは何処か新鮮に感じられる。尚、偶にスーツを着たりはしていたのだが……どうにもタマ達が心配そうな顔をするので着るのはやめた、主にクリークが半泣きになりながら抱き着いてくるからである。

 

「うし、こんなもんか。南ちゃん終わったぜ~」

 

少し大きめに声を出して南坂を呼ぶ、そして部室へと入って来た南坂は少しだけ驚いたような表情を作りながらも直ぐに笑みを作った。

 

「とてもお似合いですよ、ランページさんにはそちらの方がよくお似合いなのですね」

「まあ元から女っぽいのが如何にも苦手だったからな、こっちの方が馴染むのはある種当然だぜな」

 

真っ黒に焼け焦げた大地に未だ燃える炎を表したようなロングパンツ、雪国に降りしきる白雪のような純白の白シャツ、そしてその上からそれらを全てを包み込む夜のような黒いロングコート。それを纏ったランページは酷く絵になっている、これはファンも増えるだろうなと南坂は内心で想った。

 

「思った以上に気に入ったぜ、妙なアレンジ入れて谷間見えるようにしてるとかしやがったら突き返してスーツでG1走ってやろうと思ってたからな」

 

ケラケラと笑っているが、それを聞いている南坂は本気で安心した。ハッキリ言ってカッコよさこそあるが、可愛げや色気の類は全く感じられないランページの勝負服。勝負服によってはボーイッシュな物は幾らでもあるが、ボディラインが見えたりしたりで女性的な要素が垣間見えるのが大半だが、ランページのそれはロングコートも相まって完全な男性の様相。

 

「なあ南ちゃんよ、これでちょっと走るってなしかい?」

「いえ寧ろ走っていただかないと困りますよ、何か問題や違和感がないかの確認をしないといけませんから」

「確かにな、んじゃ行くか~」

 

そう言いながらもコートのポケットに手を突っ込みながらも歩きだして行く彼女に続くように部室を後にする南坂。が、直ぐに周囲からどよめきの声が漏れ始めた。

 

「えっえっあれ、ランページ先輩よね……!?」

「何あれ超カッコいいんだけど……」

「あれ、もしかして勝負服!?」

「キャアアッ高身長のお姉様に凄いマッチしてる……」

 

「なあ南ちゃん、なんか俺目立ってる?」

「存分に」

「なして?」

 

と普通に困惑している彼女に頬を掻いて誤魔化す。何故なのかと言われたらランページは普通に人気があるからである、トレセン学園で一番身長が高いというのもあるがサッパリとした気風の姉御肌で面倒見もよく、男っぽい言葉の中にも愛嬌を覗かせている事もあって非常に人気がある。ランページに憧れる後輩は多い。

 

「あ~!!ランってば凄いカッコいいの着てる~!!」

「如何よこれ、中々に良いだろ」

「かっくい~!!」

 

とカノープスが練習してるコースへと到着すると直ぐ様に反応したターボがその名の如く迫り、キラキラとした瞳を向けて来た。

 

「ありゃりゃ~こりゃまた随分と男っぽいの着てるね~まあランにはそっちの方が似合うもんね、スーツとか」

「おいおいネイチャそれはもうやめてくれよ」

「凄い、カッコいい~!!いいなぁ勝負服って!!今からデザイン練ろうかな~?!」

「悪くないと思うぜ、まあ俺はパッと決めちまったから説得力ねぇだろうけどな」

 

ニシシ、と笑い笑みを浮かべながらも素直には褒めないネイチャ。勝負服に対する憧れをより一層深めて今から勝負服を考え始めようとするタンホイザとそれぞれが違って反応をしていて実に面白い。其処へイクノが現れる。

 

「どうよイクノ」

「実に素晴らしいですね、貴方らしく、貴方にしか合わないと思える勝負服です」

「これ以上ねぇ褒め言葉をどうも」

 

先日のデイリー杯で競い合ったが、もう既にチームメイトに戻っている為にか言葉には余計な熱はなく純粋な称賛が込められていた。友人達からの言葉を得て、ランページは空を見上げながら南坂に言う。

 

「南ちゃん、阪神ジュベナイル―――勝つぜ」

「はい。期待させて頂きます」

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