貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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304話

「うわぁっ速~い!!」

「いけいけ~!!」

「ちょっいまなんバ身差付いてる!!?」

 

アグレッサーチーム・ネメシス。スカウト待ち、未契約のウマ娘たちが集うこのチームを束ねるのはかのサンデーサイレンス。教導という立場ではあるが自らの持つ技術や精神、肉体面を押し込む。その質は極めて高く、既にその成果はリギルでジェニュインが東条トレーナーに見せつける事で力量の高さを感じさせている。同時にネメシスの地位が高まる中でもう一つ、高めている要因がある。

 

「ぜ、全然追いつけない~!!?」

「なんとぉぉぉ!!?」

「こっから末脚爆発って追いつけねぇええ!!?」

 

「口じゃなくて脚を動かせ!!少しは追いついて見せろぉ!!」

 

様々な声のウマ娘を遥か後方に置いてきぼりにしながらも先頭を疾駆するウマ娘こそがネメシスの統括チーフ、メジロランページ。統括チーフの役割はメニューの構築と教導を担当してもらえる人材の誘致、模擬レースの開催などなど多いが彼女自身が走ってメンバーの調子を確かめる事だってある。その際には最速にして最強の脚を存分に使う。普通ならば絶対に勝てないと望まないかもしれないがネメシスでは逆に捉えられている。

 

―――チーフに追い付く、いや超えることが出来たらその瞬間から自分は間違いなく自分は世界の主役になれる。

 

敵役から主役へ、己が主役へと昇り詰める事を目指す、証明する事こそネメシス。だからこそランページもそれを受けて立つ、自分の座を奪えるものならば奪ってみろ、受けて立ってやる。

 

「チーフが1着!!2着とは―――大差勝ち、なんてどころの話じゃないね……」

「当然の結果と言えば当然の結果だけどこれはエグいわねぇ……」

 

設立されてまだ月日も経たぬうちから負ける訳にはいかない、目標として夢であるものとしての責務をランページは果たし続けている。そんな中で得られたデータも次に活かす。

 

「よし、全員集合!!レースに出てたやつはクールダウンを忘れるな、次は明日の模擬レースに向けての最終調整だ、軽く流す程度にしとけよ。明日の主役は誰になるかはお前ら次第だ、チャンスを不意にするなんてつまらない真似はするな」

「明日のレースに出ない奴はゲートに入れ、俺が相手してやる」

「ボスが相手!?くっそぉっ~明日レースなのが恨めしい~!!」

「ぶつくさ言ってねぇ自分のやるべきことをやれ!」

『YA-HA-!!』

 

教導役、皆からはボスと呼ばれるサンデーの雰囲気に軽く呆れつつもランページは明日の準備とりかかる。アグレッサーチーム主催レースはトレーナー陣からは好評、ベテラントレーナーから即戦力、新人トレーナーからはどんなウマ娘が望ましいのかの傾向などの情報が取れるのでかなり貴重な場となっている。

 

「―――よっ」

「応今日も来たのか」

「ああ、今日もクソ教官がうるせぇのなんの……」

「そりゃ災難だな」

 

腰掛けながらタブレットに繋げたキーボードを叩いていると隣に一人のウマ娘が座り込んだ。真っ黒な黒鹿毛、鋭い目つきは相手に畏怖すら与えるが、余りにも周囲を鑑みない自己完結し気にしない態度は当人の器の大きさを表しているのか、それとも単純にバカにしているのか判断がしにくい。彼女はトレセン内でも問題児扱い、新入生故に担当はいないしチームにも入っていない、なので教官職に就くトレーナーの教導を受ける事になっている筈だが彼女はそれを拒否し、授業も平気でサボったりする。それが彼女との出会いの始まりでもあったわけだが。

 

「あんなくそつまらねぇ事誰がやるかってんだ」

「均一を取って安牌を作るのが教官様の仕事だ、いやなら担当見つけやがれ」

「はんっ誰がこんな新入生の担当をやりたがるかよ、もしもってんならアンタが取ってくれ」

「テメェにその気があるなら取ってやるよ、その内な」

「はん」

 

メジロランページという存在にも全く動じる事もなく、こびる事もなく、寧ろ同格として当たり前だと言わんばかりの態度で接してくる。サンデーのそれに近い彼女の対応は気が楽なところがある。まあ放っておくかと思っておくと―――こちらに迫ってくる影があった。

 

「あっこんなところに」

「Oh!!見つけマシタ~!!」

「相変わらずね、ってあらとんでもない方の隣にいたわね」

 

迫ってきたのは自分の担当であるスズカだった。その両隣には彼女の同期がいた、そして自分の隣で寝っ転がっているウマ娘も彼女の同期。

 

「ランページさん、ご一緒だったんですね」

「ご一緒だったっつうか奴さんが来たって感じだな。ほらっ俺ちゃんってばそこまで拒絶する女じゃないから」

「フフッそうですね。えっと彼女に伝言があるんです、教官が探してて」

「知るか。用があるならテメェが来いって伝えてくれ」

「もうっそんなこと言わないで―――ステイ」

「誰が待つか」

 

そうじゃないわよと困り顔のスズカ。自分とて彼女が誰なのかは知っている、そしてスズカの両隣のウマ娘も……。

 

俗にいう97世代、サイレンススズカが属するこの世代には世界で活躍した偉大な名馬たちがいる。それがこの場に介していると思うと胸が熱くなる。日本馬として史上初の海外G1制覇を達成したシーキングザパール、大雨の中の無敵とも称された最強マイラー・タイキシャトル、そして―――同期の栄枯盛衰を見届けた末のラストランで国産・日本調教馬初となる海外G1勝利を成し遂げたステイゴールド。世界に到達した世代とも言われる世代が集結しているのは感動である。

 

「あっランページさん此処にいるのはみんな私のクラスメイトなんです」

「Oh!!ランページトレーナー、タイキシャトルデース!!」

「フフフッ貴方に会えるなんてやっぱり今日は素敵な日になったわね、シーキングザパールよ!!」

「どうもご丁寧に」

 

史実で日本に海外での初G1勝利をもたらした二人にこうしてあいさつされるのも妙な気分だ、というかその座は自分が取ってしまったのか……と軽くばつが悪そうにするとタイキが大きな声を上げた。

 

「ワタシ、アメリカでBCクラシックでのレース、ファミリーで見まシタ!!それでワタシ、ジャパンに来るコトを決めマシタ!!」

「実は私もランページさんが切っ掛けなのよ、世界で輝く貴方を見て私の夢は明確なヴィジョンとなったと言っても過言ではないわ!!」

 

タイキはBCクラシックで、パールは自分の世界を相手に走った姿を見て、それぞれが自分を見て中央トレセンに来ることを決意してくれたと語る。そういわれるとなんだか照れ臭くなってくるわけなのだが……。

 

「俺は別にアンタに憧れてねぇけどな」

「ステイ?!ドウシテですカ~!?」

「憧れた所で変わる訳でもねぇだろ、俺は俺だ」

「そう言ったところも、なかなかにファビュラスよ貴方は」

「ヘイヘイそりゃどうも」

「ラ、ランページさんすいませんクラスメイトが失礼を……」

「気にすんな。こういう態度の方がこいつらしい」

「ほれ見ろ」

 

ステゴとの出会いは本来授業中の時間なのにサボっている所を見つけた所だった、気分転換で外で仕事をしているとそこにステゴがやってきた。如何やら自分がいた場所が彼女にとってのフェイバリットスポットだったらしい。

 

『そうか、そりゃ悪いことしたな。ンじゃ俺は他に行くわ』

『……あんたも一応トレーナーだろ、授業出ろって言わねぇのか』

『言って聞くタマならな。それに俺はトレーナーだがお前のトレーナーじゃねえ、個人に口だしする程偉くなった覚えもねぇしな』

 

そんなやり取りをしたらなんか気に入られた、というよりも近くにいればメジロランページが見ていると解釈されて柵が減ると思われているだけかもしれないが……。

 

「偶には授業に出た方がいいと思うけど」

「しゃあねぇだろあんな面白くもねぇもんなんかに出ても得にならねぇんだよ」

「それならどんなのなら参加するの?」

「……考えるの面倒だからランページの授業なら出てやるわ」

「それはNice idea!!ワタシも出たいデース!!スズカばっかりズルいでーす!!」

「そ、それは担当だからで……」

 

そんな様子を見つつ、ランページは思う。この辺りの世代は本当に凄い個性が強い面子ばかりだと。

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