チーム設立には決心を決めたランページ、しかし本格的な活動にはある程度の時間を置くことを決めた。当人がまだまだ新人トレーナーの域を出ないのもあるので数年後のデビューを見越したメンバーをスカウトする事をメインにすることを決めてそのことを理事長へと報告した。
『朗報ッ!!君ほどのウマ娘が数年をかけて育てたウマ娘が何れ羽ばたく天下を取る!!素晴らしい事だ、私が許可するじっくりやりたまえ!!』
『いつもの事ですが言質取りましたから』
『その用意周到さは何なのだ!?』
兎も角ゆっくりとやっていく事は決定した訳だが―――同時に考える事も増えた。チームとしての方針や方向性、スカウト、チームの名前諸々……と言ってもランページはそこまで深刻にはとらえずに気楽にやる気満々だった。
「うしスズカ、基礎体力作りでつまらねぇと思うけど我慢な。お前の脚を存分に生かすためのサウナだと思ってくれ」
「はい。何時か最高の水風呂に入りたいと思います」
「その意気だ」
先んじてやる事は担当であるスズカの育成に集中する事、カノープスもダービーを終えたことで一段落。次は宝塚記念という大きなレースを抱えている訳だが、カノープスは基本的に走れるのならばガンガン走らせるという方針のチームだった毎月レースに出る事は当たり前だったので慣れた物。なので平常運転のまま。
「ランページさんは誰をスカウトするとかってもう考えてるんですか?」
「今のところは別に、だな。ただまあデビュー前を取る、みたいなことはおハナさんに倣ってやめておこうとは思ってる」
理想を言うなればエアグルーヴやマヤノやマーベの世代から取りたいとは思っている。まあそう思うとエアグルーヴやマヤーベラスを取れと言われているような気もしなくもないわけだが……
「エアグルーヴさんやドーベルは如何するんです?」
「ぶっちゃけ、あの二人は俺が正式にチーム設立しましたって宣言したらかってに来るような気がする」
「それはそうですね」
「「へっくちゅ!!」」
「風邪かな、のど飴と風邪薬は一応あるけど使う?」
「スズカはこいつはいいなって奴いるかい?」
「わ、私ですか?」
「主観でいいぞ。この子は一緒に走ってて楽しそうだなとか、良く走るなぁとかそんな感じ方でいい」
自分に問いかけられるとは思ってなかったのかスズカは焦ってしまった、だが同時に自分がチームの行く末を決める云々ではなく単純に意見を聞きたいのだと分かって胸を撫で下ろす。
「私がいつも、というかよく一緒にいるのはやっぱりタイキやパールになるのかしら……タイキは元気いっぱいでどんな相手にも絡みに行きますけど私にはランページさんの担当って事でよく話を聞きに来ますしパールも同じみたいな感じです。ぜひ海外の話を聞きたいって」
「あの二人か」
タイキシャトルとシーキングザパール。ある意味で大本命を投げかけてきたと言っても過言ではない、ランページ自身もそれらを考慮していない訳ではないし二人の将来……と言ってしまったらズルいかもしれないがするであろう海外の挑戦に自分の経験云々は力になる筈、そうなると更なる向こう側へと道が開けていくかもしれない……と考えずにはいられないのは既にトレーナーとしての思考が出来上がってる証拠だろう。
「他だと……フクキタルも、いいと思います。この前の授業で私差し切られちゃって、あっ勿論ランページさんに言われたとおりに一気にスタートするんじゃなくて確りと歩数を稼いで加速してました」
基礎が出来上がり切っていないスズカには確り歩数を稼いで加速するように言い聞かせてある。スズカの負担はそこに集中しているのでそこさえ注意さえすれば後は今でも活かす事は出来る、がそんなスズカを差し切れるフクキタルは流石としか言いようがない。
「後は……サニーとヤマトもいいかもしれません」
「サニー?何、美意識持ってたり男装してたりする?」
「ええっと……そういう感じではないかと、私と同じみたいに逃げが得意な子達なんです」
此処で上げた二人は恐らくサニーブライアンとダイタクヤマトなんだろうなぁと直ぐに理解出来た。そして何方も逃げとして有名になった存在だ、やはり同じ脚質をしていると控えやすいという奴なのだろうか……
「ランページさんは逃げウマ娘ですし、そういったこの方が教えやすいんじゃないでしょうか?」
「そういう事も考えての人選か。可愛い奴め新人トレーナーには有り難いぞオレオレ~」
「あっちょっとランページさん、きゅぅ……!」
急に頭を撫でられたことに驚きつつも何だかんだで心地よさそうに身をゆだねて尻尾と耳をピク付かせる。揺れる耳が当たる感触は実にいい、育てるウマ娘は選んでいい、当たり前のことだが何処か頭の外に追いやっていた言葉だったのかもしれない。如何せんネメシスというアグレッサーの統括チーフをやっている影響だろう。基本来る者は拒まないスタンス故に選ぶことはない。
「選ぶ、選定するか……そうだな当たり前のことだ。お前みたいに俺が育ててみたいと思ったウマ娘でチームを組めばいいんだ、なぁ?」
「~♪」
問いかけるが返事は返ってこない、撫でられる感触を完全に楽しんでいる。まるで小動物のような姿に思わず笑いが込み上げてくる、そしてある事を考える。チームの名前、ある意味で一番の難題だが―――チームには星の名前が多くつけられている、ならばそれに沿いながらも少しだけ逸れてやろうじゃないか。
「スズカお前ってお~いスズカちゃ~ん……てい☆彡」
「ぴゃぁっ!?えっえっ!?あっえっと何ですか!?」
いい加減に話を聞いてほしいので尻尾を軽く撫でた、すると面白いぐらいに飛び跳ねて正座しながら向き直ってきた。
「チームの名前も決めた。ポスター作るの手伝ってくれ」
「あっはい分かりました!!」
「後で峠連れてってやるから尻尾触ったことは許してくれな」
「い、いえそ、その……も、もっと触ります?私、あるトレーナーさんに脚を触られたことがあって、だからトレーナーさんって身体を触っていろいろ確かめるのかなぁって……」
「おいスズカそのトレーナー教えろ殴り込むからいや一人しかいなかったわ」
この後、ランページは沖野の下に乗り込んだが沖野は少し走り過ぎていたスズカの脚を心配してからこそ触診をしたことが分かった。尚、突然やったのでランページは許容こそすれど一言掛けてからやれ!!と物理的なツッコミを叩き込んだ。そして走りすぎたスズカにもお説教をした。
―――そして
「ね、ねえこのポスターって!!」
「えっマジ?これマジなのガセじゃないよね!?」
「ア、アタシ先生に聞いて確かめてくる!!」
廊下に張り出されたポスター、そこには月下のゲート前に勝負服を纏って手を差し伸べるランページが描かれていた。
チーム・プレアデス、メンバー募集。
プレアデス。それがランページが決めたチームの名前。共に走ると決めたランページ、それならば星一つだけの名前では意味がない。揃わなければ……そう思ってこの名前にした。暴君ランページが率いるプレアデス、どんなウマ娘が集う事になるのだろうか……。
星ではあるけどちょっと変えて星団プレアデスから取りました。
何故プレアデスかって?……
け、決してちょうどルガーランスの間違った使い方で吹き飛ばされるフェストゥムを思い出したからではない。