貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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309話

「ランページさん、凄い事になりましたね」

「この状況でそんな言葉で済ませられるってスズカちゃん貴方ってハッキリ言ってとんでもないわよ?」

 

チーム・プレアデスの設立を正式に発表しメンバー募集のポスターも張り出した、それでは第一歩を踏み出そうという時のだったのだが……その一歩を踏み出す前にとんでもない事になっていた。一先ず入部希望者には入部希望届を出して貰ったのだが……凄い量が集まってしまった。

 

「ひぃふぅみぃ……ざっと数えて100人超えてね?」

「同級生も多いみたいですけど、それ以上に先輩方も多いような……」

「だよなぁ……リギルとかの入部テストでもこんな人数集まったとか聞いた事ねぇよ」

 

こればっかりは自分のネームバリューのせいだろう、凄い人数来るじゃないかなぁとは覚悟はしていたが実際に目にすると圧倒される。

 

「となると―――やる事は一つだな、選抜レースをやる」

 

何だかんだでこの方法が一番後腐れがない、これだけ大規模になってしまうと相応の説得力が必要になってくる。この段階で落とすことは簡単だろうがそれでは絶対に納得しない面子も現れる、それこそフローラにお話しされる前のエアグルーヴとドーベルのように。ならば納得させる場を用意する、自分の走りを直接判断して篩にかける。

 

「同時に他のトレーナーも誘う、但しあくまで俺のチームへの入部希望者だ。スカウトの最優先権利は俺が持つ、んでスカウトされるか否かでその後を決める。ネメシスの入部希望も確かめながらな」

「あの、それって結局ランページさんのチームに入るって事になるのでは……?」

 

選別と言いながらもこれはかなり優しめだとスズカは感じた。最上位でランページのチーム入り、次点で他のトレーナーからのスカウト、そして最後にはネメシス入りの権利を与えられる。これは本当に篩に掛けていると言えるのだろうかとすら思ってしまうがネメシスは全く甘くはない。

 

「確かにメニューを組んでるのは俺だが教導役はあのサンデーだぜ、ケツを蹴り上げられる扱きに耐えられればの話な」

「そっか……どっちにしろ自分との闘いなんですね」

「そゆこと」

 

甘いといえば甘いかもしれない、だがランページが考えているのは担当を持たぬウマ娘の支援なので問題はない。ネメシス入りも結局のところどうするかも自分次第だ、何時までも自分が助ける訳ではない。

 

「サブトレーナーも探したほうがいいかねぇ……まだ気が早いかな?」

「早い事に越したことはないと思います、遅いよりかはずっと」

「正論だな。つってもいるかな」

 

カノープスの佐々田トレーナーのようにサブトレーナーも考慮しておいた方がいいだろうが、新設チームのトレーナーを誰がやりたがるだろうが。その辺りも自分を餌にすれば釣れるだろうか……。

 

「エアグルーヴとドーベルは此方に来るんですか?」

 

素朴な疑問をスズカは聞いてきた。あの二人は此方に移籍するのだろうかという事だった、チーム間のウマ娘の移籍というのは特段珍しい話ではない。チームトレーナーの方針などが合わなかったりした場合などに移籍は行われる、チームトレーナーの許可さえあれば問題なく移籍は出来る。

 

「その気があるなら、な。こっちを倒しに来るって選択肢も面白いけどな」

「大丈夫です、私が速くなりますから」

 

どや顔で語るスズカ、まだ新入生なのに大した自信だ。仮にも1年先輩のエアグルーヴもいるというのに……最初の担当としての意地だろうか、まあ可愛げもある行動に笑っておく。

 

「取り合えずこっちでも誰が希望だしてるのか確認しないとなっと……」

「あっ手伝います……えっとあっ……」

 

思わずスズカが手を止めた、誰の希望届があったのかと思ったがそこにあった名前はステイゴールドの名前があった。

 

「ほぅステゴからか」

「彼女、こういう事に興味あったんだ……えっと授業は座学なら出てるんです、寝てることも多いですけど指されたら絶対に答えるんです。筆記試験も何時も満点に近い点数ばっかりですし」

「すげぇ優秀だな」

「でも教官の授業だけをサボってるんです」

 

史実でもそうだったがステイゴールドは好き嫌いが極めてはっきりしていた。嫌な事は意地でもしない、それ以外は大人しかったという。どうやらウマ娘でもそれは変わらず、教官からのそれが凄く嫌らしい。

 

「前に俺の授業なら受けるとか言ってたが……だから選抜レースを受けるってか?」

「んもうあの子ったら……私の方から注意しましょうか?」

「した所で聞き入れるような奴じゃねぇよ、入りたいっていうならば選抜レースは受けて貰うだけよ。それで合格すりゃ引き受ける、そうでなきゃネメシスで預かる。どっちにしろあいつにとっては得しかねぇんだよ」

 

自分の為にしか走らない、ステイゴールドはそう言われていた。そんな彼女にランページは共感が感じられる、故に来る気があるなら受け入れるつもりはある。

 

「さてと、チェック続けるか……」

「はい」

 

そのままチェックを続けていく中で選抜レースの開催が決定された。前以て他のトレーナーもスカウトに参加する事やネメシスへの加入権利がある事も通知したうえで行う事になった。一部トレーナーからはお零れに預かれというのかという苦情が出たが

 

「嫌だったらさっさと自分でスカウトすりゃいいだけだし有望ウマ娘が取られても知らねぇぞ」

 

と真顔で返しておいた。その程度の煽りなんて煽りにも入らない、自分を煽りたければ南坂にやらせるのだなと突き付けておいた。そして選抜レース、当日には80名近い希望者が集った。

 

「あ~これからチーム・プレアデスの主催の選抜レースを始める。此処に来た以上、お前たちは余計な事を考えずに自分の全てを出し切る事だけを考えるように。此処に来たという事は夢を駆ける為に来たはずだ、その為に全力を尽くせ、それでは事前に配った番号で出走メンバーを呼ぶぞ」

 

その言葉に張り切るウマ娘たちの姿を見るが、その中に退屈そうに欠伸をしている小柄な一人を見る。その姿にランページは軽く笑って運営に集中する事にした。そこで見られたのは将来有望な新入生の潜在能力、デビューへと向けて個性が出始めた走り、そしてデビュー前の個性が築かれてそれをどう生かすかが肝。見ていて飽きない光景だった。

 

そして―――

 

 

「チームトレーナーのメジロランページって知ってるか、プレアデスへようこそ。なんも実績もないチームがこのプレアデス、だからこその楽しみもある。目指すものはそれぞれで決めて良い、チームなんてバラバラでいい、バラバラが故の美しさもある。合わせるな、自分だけの強みを活かせ、伸ばせ、それが俺達だ―――」

 

そしてランページはチームメンバーの名前を読んだ。

 

「サイレンススズカ」

「はい」

「サニーブライアン」

「はい!!」

「タイキシャトル」

「YES!!」

「メジロドーベル」

「はっはいっ!!」

「エアグルーヴ」

「はいっ!!」

「―――ステイゴールド」

「……あいよ」

 

「今日から俺たちがチーム・プレアデスだ!!」

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