貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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クラシッククラス―――ティアラ路線
31話


新年、即ち新しい年。文字通りの意味だがそこに込められる意味や想いは異なるのである。ランページやイクノからしたらクラシッククラスへと入り、これから文字通りの激戦が待ち構えている。ネイチャやターボからすれば待ち侘び続けて来たデビューの年になるので気合もより一層に入る、今年の出来次第で来年は決まると言っても過言ではない。

 

「やっほ~あけおめことよろ~」

「あけおめ~ラン!!」

「おいっす~」

「それネイチャさんの挨拶なんですけどね~」

「堅い事言うなよ」

 

そんな新年を迎えたカノープス、今年の活躍を祈願する為に参拝を行う為に集合をした。

 

「にしても良かったのラン、メジロ家で新年パーティやるんじゃなかったの?」

「柄じゃねえよんなの、各界の著名人が来る新年パーティなんて息が詰まるわ。お婆様からもこっちには出なくて良いと言われたしな」

 

実際にはメジロ家への恩があるので出席をしようと思っていたのだが、アサマが此方ではなくてチームの方に顔を出しなさいと言ってくれたのである。その言葉に甘える形でこうしてカノープスの集まりにやって来たのである。

 

「それにしても、本当にランってばそっちの格好が似合うよね。流石おっぱいの付いたイケメンですわ~」

 

ニヤニヤしながらも此方を見てくるネイチャ。明るいブラウンのパンツに合わせたジャケット、その中には白いニットを着込んでいる。そして首元には青いマフラー、ブルーのストールを羽織っているランページ。程良いリラックスさと上品さを醸し出すファッションだが、見た目が良いからはやたらイケメンファッションに映るらしい。

 

「ぁぁん?まだそれ言うかテメェ、よし商店街の皆さまにお前の練習中の写真ばら撒いてやる」

「写真立てに入れて店先に飾られるからマジで勘弁してください」

 

即座に謝罪するネイチャとケラケラ嗤うラン、何だかんだで互いを弄り合える良い関係だったりするのである。

 

「それでは皆さん、神社に行きましょうか。出店も出ているでしょうから甘酒を楽しんだりしましょう」

「わ~い!!ターボニンジン焼きが良い!!」

「ゲン担ぎにG1ニンジン焼きも良いかもしれませんね」

「んじゃまあ行くとしますかね~」

 

今年のこれからの事や紅白歌合戦の感想、色々な事を話しながらも到着した神社。夜中だというのに神社は多くの人で混雑していた、多くの人が参拝に訪れている。その中にはウマ娘の姿もちらほらとあって自分達と同じような目的であるというのが見えた。

 

「お~やっぱり人多いんだね」

「はぐれたりすんなよ~、ターボ出店は後でじっくり回りゃ良いから先に参拝だ」

「「は~い」」

 

タンホイザとターボを連れて歩いていくランページだが、途中で二人が出店に気を取られて其方をジッと見ていたりしているのに気づいたのか、溜息混じりにしょうがないな……と言いながらも財布を出した。

 

「ほれ、まずは甘酒買ってこい。全員分な」

「やった~ランってば分かってる!!行くぞ~マチタン~!!」

「お~!!」

 

そう言いながらも駆け出して行く二人に転んだりすんなよ~と声を掛けると任っかせろ~!!という返事が返って来る。若干だが不安に感じている自分にネイチャとイクノ、そして南坂が何処か暖かな視線を送って来ていた。

 

「何よそんな目で」

「いやさ、なんか二人のお姉さんいやお母さんみたいだったからつい」

「とても面倒見がいい感じでした」

「はい。ランさんの良さが出ていました」

「よせやい、あの二人が幼いだけだろ」

「「買って来たよ~!!」」

 

そんなやり取りをやっていると甘酒が来たのでそれを飲みながらも漸く参拝箱に辿り着いた、それぞれはお金を出しながらも手を合わせた。ランページが願うのは当然、今年一年の活躍祈願……ではなく

 

「(俺の報復が成就しますように……)」

 

本来の目的の成就祈願であった。神社でそういう願いをしていいのかは謎ではあるが、遠回しではあるがトリプルティアラの獲得を願っていると言えなくもない。そんな事をしているとタンホイザの顔に本坪鈴が落ちて来て直撃したのであった。

 

「ぶべぇっ!!う"ぇぇぇえええん!!!」

「わぁぁっ大丈夫か!?」

「えっ何で落ちてくんの!?何お願いしたの!?」

「兎に角、誰かティッシュ持ってますか!?」

「ああもう新年早々なんだよこれ!?」

 

取り敢えず、ティッシュで鼻血を拭わせながらも脇に退きながらもタンホイザの処置をする。其処まで酷い物ではなかったが、新年からこれは縁起が悪い……とすっかりタンホイザは落ち込んでしまった。

 

「うぅ……新年早々これって……」

「ま、まあまあ……ほら、新年からいきなりいい方向に登っていくって事だよ、多分……」

「そうですよ、悪い事の後には良い事があると言いますし」

「そうだぞマチタン!!何事もポジティブシンキング?だぞ!!」

「合ってますから自信を持ってくださいターボさん」

 

兎に角彼女を励まそうとするカノープスの面々、そんな彼女を見かねたのかランページは神社の売店で売っていた何かを購入するとそれに何かを詰める。そしてタンホイザの頭を少し乱暴に撫でながらもそれを差し出した。

 

「ほれっこれやるから元気出せ」

「元気出せって言われても……御守り?」

 

そこにあったのは安全祈願と必勝祈願の二つの御守りと小さな袋だった、首を傾げていると中身を開けてみろと言われたので開けてみると―――そこにはお金が入っていた。

 

「えっ!?」

「お年玉だ、出店で好きなもん買って来い」

「えっでもでも……」

「良いから良いから、チームメイトが不景気そうな顔しているとこっちまで不景気になる。一人の不幸が幸せになるとみんな幸せになるんだよ」

 

少々乱暴な言い方をしているが、優しさに溢れている手付きと笑顔にタンホイザは嬉しくなってきた。そして嬉しさから一筋の涙を流したが、それを直ぐに拭って立ち上がった。

 

「うん分かった!!何時までもうじうじじゃ駄目だよね、えいえいむん!!ターボ、このお金で色々食べよ!!」

「えっ良いの!?」

「おう行ってこい行って来い、ついでにターボ達にもお年玉やるから」

「やった~!!」

 

そう言いながらもターボだけではなくネイチャやイクノにもお年玉を渡すとネイチャは酷く驚いた。

 

「えっアタシにも!?」

「私も、とは……受け取れません」

「いや二人にはターボとタンホイザの面倒を見て貰う為の手間賃。あの二人だとなんかしそうだから見張っててくれ」

「あ~厄介事押し付けですかそうですか、まあネイチャさんは義理堅いですからこの位ならお安い御用~」

「成程、では折角ですからターボさん達と楽しむ事にします」

「応そうしろそうしろ、俺は適当に過ごすから」

 

二人はそのままターボとタンホイザを追いかけていく、それを手を振って見送ったランページ。それに隣の南坂が少しだけ申し訳なさそうな表情をするのであった。

 

「すいません、私がすべき事だったのに」

「気にすんなよこの位。それに金の使い道に困ってた所だ」

 

レースの賞金はトレセン学園の学費などを出してくれているメジロ家に渡そうとしたのだが、自分の為に使うのが一番メジロ家の為になるとお婆様から完全拒絶を受けてしまった。なのでこういう事などに使うのが恐らく最適解と思っている。

 

「南ちゃんは何お願いしたんだい?」

「皆さんが怪我無くトゥインクルシリーズで走れるようにと」

「かっ~無事是名バを目指すトレーナーらしいな」

 

南坂らしいお願いだと思った、そして自分が何を願ったのかと言おうとしたのだが彼の口からそれは止められてしまった。その表情からは分かっていますと、と言わんばかりの物が浮かび上がっていた。

 

「―――知ってるみたいだな」

「ええ、これでも貴方のトレーナーですから」

「その先の事も?」

「全て」

「流石」

「それ程でも」

 

短かな言葉のやり取りだけでも、お互いが何を持っているかを完全に察知出来た。南坂は自分の報復の事を知っている、如何やって知ったのかは敢えて聞かない。それ以上に聞きたい事があるからだ。

 

「止めるかい」

「いえ、当然の権利だと思います。必要なら言ってください、お手伝いします」

「そうかい、どんな手伝いをしてくれるのかな?」

「ちょっとお耳を拝借しても?」

 

そう言われて一歩、近づく。そこに南坂が小声でどのような協力が出来るのかを教えてくれた。それは普段の彼とは思えないほどの内容だったので、本気で彼の素性が気になって来たランページは呆れたような表情で彼を見る、肝心の彼は微笑みを絶やさなかった。

 

「お綺麗な面してどうしてそんな事が言えるのかね。アンタの底が知れねぇな」

「恐れ入ります」

「いや褒めてねぇよ、呆れてんだ」

 

本当にこのトレーナーの正体は何なのか分からなくなってきた。この世界でもバラクラバを付けてライブジャックを決行したりするのだろうか……と言うか自分もそれに混ざるのだろうか……と色々と思っていると前から見覚えのある顔がやって来た。

 

「よっ南坂、あけおめ」

「あけましておめでとうございます沖野さん、今年もよろしくお願いします」

「相変わらず堅いね~フランクで良いんだよトレーナー仲間なんだし」

 

それは沖野だった、如何やら彼自身も参拝にやって来たらしいがランページとしては彼が連れているウマ娘の方が気になった。

 

「マックイーン、お前さんメジロ家のパーティは?」

「お婆様にチームの方を優先しなさいと言われたんです、パーティの方は此方で対応するからと……」

「ほぉ~ん……」

 

一先ず新年を挨拶をしたのだが、直後にマックイーンの背後から一人のウマ娘が飛び出て来た。しなやかなジャンプで姿を見せたウマ娘は人懐っこい笑みを浮かべながらも好奇心旺盛と言いたげに此方を見つめて来た。

 

「ねえねえ、君がマックイーンの言ってたランページ?」

「応、独裁者ランページとは俺の事よ」

「テイオー、すいませんランページさん。此方私が所属するスピカのチームメイトなんですの」

「トウカイテイオーだよ!!夢は会長みたいな無敗の三冠ウマ娘になる事だよ!」

 

元気いっぱいに自己紹介をしてくれるが、そんな事してくれなくても知っているとも。奇跡のダービー馬、地の果てまで駆けていく馬、空を駆ける豪脚、様々な呼び名を持った屈指の名馬、トウカイテイオー。様々な苦難に苛まれながらも、それに懸命に抗い続け奇跡とも言えるレースを見せた天才。

 

それが今、ウマ娘として目の前にいる事に興奮を覚えずにはいられなかったがそれを抑えながらも返事をする。

 

「知ってるとは思うがランページだ。三冠か、奇遇だな俺はトリプルティアラを狙ってる」

「そうなんだ!!それじゃあ何時かレースで勝負しようね、無敗の三冠ウマ娘とトリプルティアラとして!!」

「ハッもう俺が負けるって思ってるのか、良い根性してるなお前。良いだろう、その挑戦受けて立ってやるよ」

「もうテイオー……すいませんランページさん」

「気にすんな元気な奴でいいじゃねえか、いいチームメイトできたなマックイーン」

「ええ、それは確かですわ」

 

この世界ではどうなるのか、不思議と不安もあったがそれ以上にウマ娘として帝王と勝負したいという気持ちが強かった。その時が来るのを、ランページは心から待つ。そしてその時が来たら最高の走りで応えるのだと。




これで今年最後……ですかね。様々な事があった1年ですが、来年も皆様宜しくお願いします!!余裕があれば、夜にも出しますが、また来年もアルト姫を宜しくお願いします!!
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