プレアデスに加わったタイキシャトル、最強マイラーとも言われたその実力は新入生にも拘らず既に発揮され始めている。アメリカ生まれというのもあって体躯もよく身体も丈夫、プレアデスの中ではステゴを抜いて既に一番の身体と言ってもいいだろう。
「ランページさ~んハウディ~!!!」
「お~うタイキ~ハウディ」
元気いっぱいな彼女は自分を見かけると所構わずに抱き着いてくる、アメリカ生まれの美女と言えばと思い浮かべるようなナイスバディのウマ娘がタックルかと思うようなスピードとパワーで突っ込んでくる。普通のトレーナーなら確実に吹き飛ばされて床に転がっている事だろうがランページもウマ娘、そして基礎体力とパワーで負けることなどないので平然と抱き留める。これに喜んだのは他でもないタイキ、受け止めてくれると分かるとより一層激しく抱き着いて来るようになった。
「ランページさんは何をやってるんですか?」
チーム・プレアデスが設立されたことでチームの部室も用意されることになった。そこは今の部室に移る前にカノープスが使っていた部室、新しく建てると時間もかかるので再利用させて貰う事にした。そんな部室でランページがパソコンを叩いているとタイキが後ろから抱き着きながらのぞき込んでくる、後頭部の感触にご馳走様と念じておく。
「合宿に向けてのあれこれだよ、合宿所の確保とか色々あってな」
「Oh……大変デース……何か私に出来る事、ありませんか?」
「変な心配なんてしなくていいんだよ、トレーナーのとしての仕事なんだ気にするな」
こういう風に気を回してもらえるだけでも嬉しさがある、自分も南坂にこういう事を言ったりしたがこんな心境だったのだろうか……。
「んじゃタイキにある重大な任務を任せよう」
「MISSON!?何でも言ってくださーい!!」
「では遠慮なく……合宿ではとある重要なイベントを執り行う予定だ、だが俺はそのイベントはそこまでやったことがない。故に君にはその補佐を頼みたい」
「YES!!お任せくださーい、でもそのイベントとは?」
「それは―――バーベキューだ」
その言葉を聞いた途端、タイキのしっぽが大きく揺れながら真っすぐ上へと伸びた。
「バーベキュー……So really?」
「そのつもりだ、慣れてるかと思ったが違った?」
「イィィィィエエエエエスッッッ!!!やりますやりま~す!!合宿でバーベキューパーティーでーす!!アメリカンビーフも沢山用意しますね!!」
「如何やら目論見は正しかったらしいな、こっちは海鮮系を用意するから」
「Roger!!パーティーパーティーデェエエエエス!!!」
そのまま上機嫌で外へと飛び出していくタイキ、賑やかな好きなタイキにはこういう事を任せてしまった方がいい方に向かうだろう。兎も角此方も此方でやる事はやらなければ……と作業を続けているとスズカがサニーとドーベルを伴ってやってきた。
「あ、あのランページさん。なんだかタイキは凄い大きな声でパーティーって叫んでたんですけど如何したんですか?」
「もしかして、プレアデス結成記念パーティとかやるんですか!?」
「あ~いや、合宿でバーベキューやるから副幹事を頼んだんだよ」
「そういう事だったのね……まあタイキらしいといえばらしいわね」
「というか、ランページさんとお話ししてたのに外に……?プレアデス初めての定例会なのに……」
この後、エアグルーヴが面倒そうにしているステゴとニコニコのタイキを連れて部室へとやってきた。
「全員いるな、それじゃあ第一回チーム・プレアデスの定例会を始める。定例会つっても堅苦しい事をするわけじゃねえ、今後の方針を話し合ったり茶飲んで菓子つまみながらこれからの事についてお話しましょ程度の認識で構わない。次回からは俺が茶菓子は用意するから期待してくれていいぜ」
「だったら期待出来そうだな、何ならメジロ家御用達のモンでも用意してもらおうじゃねえか」
「元よりそのつもりだ、期待してなステゴ」
相変わらずランページに対して尊敬のかけらもない態度にエアグルーヴの視線は鋭いが本人はどこ吹く風、そんな姿が世間からの風聞や評判に一切屈する事もなく自らを貫き通し続けていたランページに重なって僅かに不快になるがそれを諫めて、自分だけでも確りしなければ……と姿勢を正す。
「プレアデスは別にチームとして掲げる目標は特にない、G1勝利も三冠達成も一切目指さない。前にも言ったが目標はお前さんらで決めて良い、俺はそれに合わせてメニューを組むからな。だがその前に言っておく―――仮に俺のチームで無敗の三冠やらを目指すなら覚悟しとけ、相応に相応しいもんを用意するからな」
これまでとは違った言葉に一同が息をのむ、これにはステゴもそちらへと視線を向けた。
「基本的にチームっていうのはチーム同士のウマ娘の同レースへの出走を避けるが、俺はそれをする気はない。トライアルは配慮はするが、距離適性や目指す所を考えればガンガンとお前たちを戦わせる考えだ。お前たちはチームメイトであると同時にライバルであるって事を理解しとけ」
これはカノープスの南坂から継承した考え方でもある。南坂もランページとイクノを避けるのではなくどんどんと戦わせていった、それによって経験を積ませつつ互いの長所を理解させながらも自らの走りにも組み込んでいく為。
「だが仲間が競い合うライバルである事は素晴らしい財産だ、何故ならば全力で戦う事で互いに高め合える。それで敗北を喫したとしてもそれで得られる事も多い……イクノを見てみろ、あいつなんて俺とガチでやりあった末に安田記念を三連覇だ」
そう言われると圧倒的な説得力があった。ランページは競い続けたことで高められた力で無敗、イクノは敗北の経験を次に活かし続けた末に今の活躍がある。
「つっても、現状だとエアエアは関係ねぇけどな。スズカたちがシニアに上がってからの話になるか」
「お気楽でよかったな、先輩」
「私をバカにするのも大概にしろよ……?」
「まあ路線によって異なるだろうが……スズカ、サニー、タイキ、ドーベル、ステゴ辺りは凄い事になる。今から覚悟しとけよ?」
同世代で固まっている5人。全員が全く同じ路線を行くわけではない、ドーベルはティアラ志望だしサニーやステゴはクラシック、タイキはマイルとそれなりにばらけてはいるがそれでも激突するのは目に見えている。スズカがどんな風に進むかでも大きく変わってくる。
「さてとそれじゃあ定例会はこの辺りにするか、あくまで方針の発表だしな」
「ランページさん、ネメシスの方は……」
「大丈夫だよ。メニューは作ってあるし大概の指導はサンデーさんが引き受けるし顔を出してない訳じゃねえしな、時たまネメシスとの模擬レースもセッティングする予定だからそのつもりで」
プレアデスが歩く道は最初から過酷なものであると宣言される、だがそれらを前にしても彼女たちは狼狽える事もなく、寧ろ立ち向かう意思を見せた。それは偉大な先人であるランページに倣っているのかそれとも、それを越える為なのか……。