貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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320話

プレアデスの合宿は極めて順調に終了した。途中、マルゼンスキーも合流して一段と豪勢になった合宿は最終的にはマルゼンスキーが海外ウマ娘とレースで対決するという大イベントで締めくくられた。それに大いに刺激を受けた面々は更なる高みを目指して学園に戻ってからもトレーニングに励む。その中には―――

 

「トレーナー、俺にもシンザン鉄を使わせろ」

「生言ってんじゃねえよ、テメェにはまだ早い―――と言いたいところだが、このアンクルをクリアしたら2倍は考えてもいいぜ」

「その言葉、忘れんじゃねえぞ!!」

 

ステゴもいた。合宿中にエルグッツ達に揉んでもらった事で世界の壁の厚さ、それを越えてみたいいや砕いてみたいという欲が生まれたのかそれを目指すモチベーションが発生。既に世界を目指し始めた彼女にとってランページのシンザン鉄は最重要課題として捉えられた、故に今はそのシンザン鉄を使う許可を得る為にエアグルーヴも驚く程に練習に熱を入れてる、まあ不真面目さは相変わらずで喧嘩はしている。

 

「よっパーマー、グッドウッドカップ制覇おめっとさん。トレーナーとラブラブでうらやましいねぇ」

「や、やめてってば……」

 

久方ぶりに会うパーマーは何処か逞しくなっているように見えた、海外から戻ってきたパーマーはメジロ家の邸宅に戻る事を考えたのだが既に報道陣が詰めかけているという情報を貰ったのでランページの自宅の方に避難させて貰っていた。

 

「あんなに熱烈に抱き合ってた癖に何言ってんだよ、何だっけトレーナ―と一緒ならどこまでも!!だっけなぁ?」

「ぅぅぅぅっ勘弁してよぉ……」

 

顔を真っ赤にさせながらもクッションに顔をうずめるパーマー、あの時は初G1制覇の喜びでハイになっていたので普段やらないような大胆な事もしてしまっただけであってパーマーからすれば世界中に抱き合った姿や腰に手を回されたところが広まったなんてもう考えたくもなかった。

 

「それだけお前と絆が強いって事だろ、羨ましいよ」

「ラ、ランさんには南坂さんがいるじゃない」

「いや南ちゃんと俺は戦友的なあれだからお前のとは違うんだよなぁ……」

 

だが、パーマーと山田トレーナーは違う。互いが互いを尊敬しあって支え合っている、そしてその思いは極めて強く純粋だ。それぞれが持つ強さへのリスペクトが絆の強さへと直結している。

 

「トレーナーと一緒にどこまで持っていうのは嘘じゃないんだろ?」

「……うん」

「ならそれを貫けよ、お前らしく」

 

羞恥に顔を染めながらもパーマーは確りと頷いた。

 

「次走は決めてるのか、天皇賞(秋)とか?」

「……メルボルンカップ」

「―――えっマジ?」

 

思わず聞き返すほどの衝撃があった。メルボルンカップと言えばオーストラリアでもっとも有名なレース、日本で言う所の有記念に相当する。毎年この競走の開催日はメルボルンカップ・デーとして祝日となり国の動きを止めるレースとも言われている程にオーストラリアの国民的な行事となっている。長距離レースの最高峰の一角に数えられるG1レースだ。

 

「アタシ、決めたの。確かにアタシはメジロのウマ娘だけどそれに縛られたくなんてないし自由に走りたい。トレーナーとどこまでも行きたい、だから今度も爆逃げするって決めたの」

 

その言葉は何処か決意に満ちていた、メジロパーマーだと胸を張って名乗れると言いながらもそれに囚われるつもりは毛頭もなく唯々走り抜ける事を選択していた。もしかしたらこのままパーマーは日本から飛び出して行ってしまうのかなとさえ思えた―――が、それはそれでいいのかもしれない。

 

「そうか、んじゃ何処までも行っちまえよ。メジロパーマーらしくさ」

「分かってるよ、アタシらしく……爆逃げするのみ」

 

クッションから上げられた顔には決意が現れていた、メジロパーマーとして自信を掴み取った、ならば次は唯のパーマーとして、トレーナーのウマ娘として駆け抜ける事を決めた顔。それを見たランページは笑った。

 

「ああそうだお婆様からの伝言があるんだ」

「えっお婆様から!?」

「トレーナーとお幸せに、だってさ」

「ちょっはッえっ!?いやいやいやお婆様勘違いしてない!!?アタシとトレーナーは別にそういう関係じゃ……!!」

「お互いに腰に手回して笑顔でポーズ取って撮影応じてるから説得力0だぞ」

 

パーマーは必死に否定しようとしているが、ネットではパーマーとトレーナーの絆の強さに祝福の嵐。一部ではもう完全なカップル扱いであり、ニュースではメジロ四天王、メジロパーマーを支え続けたトレーナーと紹介されていたりともう色んな意味で後戻り出来ない所まで来ている気がする。

 

「んじゃトレーナーの事何とも思ってない訳?海外G1を取った貴重なトレーナーとして担当希望ウマ娘が次々と来るぞ」

「それはいやっトレーナーは私のトレーナー!!」

「ほらっ素直になれたじゃないか」

 

思わず口を抑えるが既に時既に遅し、ランページはわざとらしくニヤつきながら扉を開けてみるとそこにはパーマーのトレーナーである山田トレーナーが頬を赤くしながら気まずそうに立っていた。それを見てパーマーは顔を更に赤くする。

 

「ラララララッランさん!!?」

「めんご」

「めんごじゃないでしょぉぉぉ!!!?」

「んじゃ俺は買い出しに行ってくるから、4時間ぐらいしたら帰ってくるから若いお二人にお任せしますね~」

「「え"っ!?」」

 

逃げウマ娘の面目躍如と言わんばかりに飛び出すとそのままインプレッサに乗り込んで発進させた、既に助手席に座っていた人を横目に見ながらも適当に走らせる。

 

「こんな感じで良いんですかね、相当に雑でしたけど」

「この位で良いんですよ。パーマーだけではなく、皆にはメジロ家というものを必要以上に背負うことなく生きてほしいですから……さあっスーちゃんが待ってますからシンボリ家に向かってください」

「仰せに通りにお婆様」

 

助手席に乗っているアサマは穏やかに笑っていた。パーマーが海外G1を取ってくれた事はこれの上無く嬉しいがあそこまで自分の事を思ってくれて信頼出来るパートナーと巡り合えた事が酷く嬉しく思える。

 

「フフフッ親戚がまた、増えるわね」

「おめでたい事ですね」

 

 

「どどどどーすんの、どーすんのトレーナー……」

「……取り合えず、TV付ける?」

 

つけた結果、自分たちのインタビューを取り上げていた番組が丁度やっていたので二人は顔を真っ赤にさせたが気づけば肩を預け合ってその時間を享受していた。

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