貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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321話

「何、何もしなかった訳?バスタオルとか新品だったのに……ヘタレか己ら」

「常識的に考えてくれない!?家族の家で出来る訳ないでしょ!!?」

「そうかセッティングが悪かったのか、んじゃ今度は別の場所を準備しとくから」

『結構です!!』

 

御婆様と共にシンボリ家に遊びに行っていった間、結局パーマーと山田トレーナーは一線を越えるという事はしなかったらしい。逆に常識を諭されてしまったのは不服だが、する気はあったらしいが二人ともその辺りの認識が古いというか清らかなのか、卒業までは待とうとなったとの事。まあ学生とある種教職の立場としては正しいか……と納得する一方で

 

「私の頃はもっとガツガツしてたのよ、貴方もそうすれば良かったのに」

「お婆様何言ってるか分かってます!!?」

「メジロ家の人生ステークス一番人気、メジロパーマー最終直線で失速っと……」

「何メモってるの!?」

 

まあ兎も角、トレーナーとウマ娘との仲が良いのはよい事である。そしてパーマーにはこれだけは絶対に伝えなければならないだろう。

 

「ヘリオスも喜んでたらしいぞ、真夜中なのに大声上げちまったってさ」

「そっか、ヘリオスもそっか、喜んでくれたんだ、そっかそっか……!!」

 

パーマーにとっての太陽こと大親友のヘリオス、彼女も当然のごとくパーマーの勝利を喜んだ。だがそれだけでは収まらなかった、その現場をゼファーとアイネスが見ていたらしいのだが……勝利を確信した時に大声を上げたが、直後に静まり返り、大粒の涙を流していたとの事。

 

『本当に良かったパーマァァァ……ウチの、ウチの親友が遂に、勝ったよぉぉぉっ……!!これでパーマーが凄いってみんな分かってくれたぁ……』

 

普段のヘリオスとは思えないようなこの状況に二人も呆気に取られていた、いや正確に言えばそんなヘリオスをヘリオスがご執心なお嬢ことダイイチルビーが慰めていたからだった。

 

『これでもう、パーマーだって凄いって皆……』

『ご立派な走りでした。あれであのような記事を書く者などいなくなるでしょう、いたとしても、相手にするものなどいません。あの輝きは、正しく至上の物なのですから』

 

涙を流すヘリオスの背中をさすりながらもパーマーを称賛するルビー、その言葉を聞いてヘリオスは更に泣いてしまった。嬉しさを感動が、入り乱れた涙は何処か輝いていたと二人は言っていた。

 

「ヘリオス……アタシ、ちょっとヘリオスの所行ってくる!!」

「応行ってこい」

 

この後、パーマーは自分のトレーナーとヘリオスとそしてヘリオスのトレーナーと一緒にパーティーを開いた。そこには泣いていたヘリオスの姿はなく、いつもの通りの元気いっぱいなヘリオスとその姿を見て一緒にはしゃぐパーマーの姿があったと二人のトレーナーから聞いたランであった。

 

 

そんなこんなもありながらも合宿は終わりを告げたわけだが残暑も厳しい。ウマ娘といえど夏には強くはない、なので熱中症対策やらもしっかりと準備もしているがランページは練習メニューにプールを積極的に取り入れた。これならば暑い時でも練習のモチベーションは落ちにくいから、勿論それだけではなくプールならではの練習も取り入れている。

 

「んじゃエアエアにはこれを付けて貰う」

「これって……浮き輪、ですか?」

「浮き輪を付けたままで出来るだけ走るようにして歩いて貰う、抵抗がありまくるからキツいぞ。ンで皆はまずプールの中でスクワットだ」

 

エアグルーヴには自分が海でやっていたのと似たメニューを課す一方でスズカたちにはスクワットを命ずる、皆はちょうど暑い日だったので冷たいプールの中なので嬉しげだが……プール調教は生易しい部類ではない。

 

「スクワットだ。後、確りと潜ってやる事」

「も、潜るですか?」

「そう、確りと膝を曲げてプールから飛び出るような感じでだ。これが中々利くんだ、それじゃ―――開始!!」

 

その指示に驚きつつも全員がスクワットを開始し、その近くを通るようにエアグルーヴが歩みを進めていく。が浮き輪は想像以上に抵抗があった、浮き輪には水の抵抗を諸に受ける様に板などが追加されているうえに近くではスクワットで発生した波が浮き輪を煽ってくる。

 

「これは、なかなかにっ……!!」

 

それでもただ一人だけ違うメニューを受けているという自覚があるからか、エアグルーヴは普段以上に真剣にそれに臨んでいた。そんな彼女に対して試練にもなる波を作り出しているスクワット組。

 

「79!!」『79!!』

「80!!」『80!!』

 

既に80を越え始めている、プールの中でのスクワットという事で浮き上がる際には浮力もあって楽だろうと踏んでいたであろうドーベルとサニー辺りはかなりつらそうな顔をしている。

 

「水の中だと絶えず抵抗が発生する、故に絶えず筋肉を使い続ける。陸上のメニューと比べて効果は二倍だが労力はそれ以上とも言われる」

「86!!」「86!!」『86……!!』

 

流石に差が生まれ始めてきたころ合い、まとめ役として真っ先に潜っていたスズカと史実でもプール調教で強くなったタイキが並び立つようにいいペースで続ける中でサニーとドーベルが遅れ始めてきた。呼吸できるのは水面から顔を出した一瞬だけ、そんな状態でのスクワットは本当にキツい。

 

「やってますね」

「おおっ南ちゃんじゃねえか、何活きのいい若い子でもナンパしに来たのかい?」

「貴方のような方がいたのならばそれも悪くもありませんが、現状は模擬レース開催で十分集まりますから」

「真面目に答えなくてもいいんだぜ」

 

プールに顔を出したのはカノープスの面々だった、何というか不思議と懐かしさを覚えてしまった。

 

「水中スクワットですか、流石ですね。あれは下半身の筋肉をしなやか且つ柔らかな物にします。怪我を防止するという意味でも有効なトレーニングです」

「流石ランだね、うちのトレーナー直伝のメニューを実践中って訳だ」

「まあね。んで皆もプールか」

「そうなんです先輩、チケット先輩の特訓に付き合おうと思いまして」

 

ドラランが言う中でプールに飛び込んだ音が聞こえてきた、そちらに目を向けてみると既にプールに入っているチケットの姿があった。その瞳は鋭く力が入っていた、カノープス時代では中々お目に掛かれなかった瞳に思わず口笛を吹く。

 

「良い目してるなぁ」

「チケットさん、ライスと同じメニューをずっとしてるの。ライス用のだから辛いと思うのに、弱音一つ吐かないの」

「仕上がってるって事だな、次走は?菊花賞には優先出走権は取ってるだろ」

「ええ、仕上がりを確認する意味で神戸新聞杯にするつもりです」

 

最後の一冠の菊花賞、タイシンが皐月、チケットがダービーを取っているこの状況で二人のどちらかが二冠を達成するのか、それともハヤヒデがリベンジを果たすのか。一トレーナーとしても気になる内容だ。その前にはライス、イクノ、ターボが激突するオールカマーもある。これからも目が離せないレースばかりだ。

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