貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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326話

「ねえねえっ来年入学したら是非、私のトレーナーになってくださりません!?」

「プレアデスに入りたければいつでもどうぞ、生憎まだ実績もない新興チームだけどな」

「何を言うのかしら、貴方が作ったチームというだけで十二分な実績よ!!そして、そこに一流のキングという実績も加わるのだから無問題よ!!」

 

未だに鳴りまくってる携帯を完全スルーしているキング、お母様ことグッバイヘイローに自分がトレーナー候補だという事を送ったせいだろうがそのせいで、娘であるキングは仕事が忙しいを理由に断ったくせに鬼電しまくる母に幻滅気味だった。ランページ的にはその母の気持ちというのも分からなくはない、ある種自分がエアグルーヴとドーベルに向けたそれと似たものだろう。

 

「超一流の貴方の下で走りの技術を学べる、プレアデスは素晴らしいチームね。貴方の走る姿だけでも途方もない財産よ、他のトレーナー方にとっては凄い存在感でしょうね―――でもその程度で腐るのならこのキングのトレーナーには相応しくないわね!!」

「お~お~言う事言う事、そういうの嫌いじゃないけどな」

 

高飛車ではあるもののその言葉は的を射ている、来年彼女がプレアデスに入る気があるのであるならば入れても悪くないだろう。どんなウマ娘であってもステゴよりかは扱いやすいだろうしサンデーよりかは楽である筈*1だ……いつかプレアデスは気性難ウマ娘の駆け込み寺扱いされないだろうか……。

 

「ふふん、今日の事は絶対に自慢できるわ」

「そりゃようござんした、あんまりからかい過ぎてやるなよ?」

「それはお母様に言ってほしいわ、うっとうしいわねぇ……」

 

未だに鳴り続けている着信に好い加減に嫌気がさしてきてしまった、かといって電源を切るのもあれだし……と思っていると背後から迫ってきたウマ娘が思いっきりランページの背中を叩いた。

 

「おい何やってんだ、折角の祭りで湿気た面しやがって」

「家族ってのは、一歩間違えば面倒くせぇって思っただけだよ」

「んなもん分かり切った事じゃねえか」

 

ランページの肩に腕を置きながらも出店で買ってきたと思われるりんご飴を噛み砕く、キングは一瞬それに怯んだが直ぐに顔を変えた。

 

「サ、サ……サンデーサイレンスさん!!?」

「応よ。ご存じサンデーサイレンス様……ってあん?」

 

矢張りというべきか、やっぱりサンデーサイレンスだったかと思ったがその先のリアクションはランが思った以上に意外な物だった。彼女が子供好きなのは分かっていたのでキングに対してもそれを発揮すると思っていたが、怪訝そうな顔と声を出しながらジロリとキングの顔を見た。そして腕を組みながら言う。

 

「お前、なるほどなそういう事か分かったぜ」

「何、知ってんの?」

「まあ知らねぇ間柄でもねえな、お~お~あいつみたいな面してやがんな」

「いひゃいひゃいれふ~!!」

「ハハハッ悪い悪い、ほれっりんご飴やるよ」

 

史実の方ではサンデーサイレンスとグッバイヘイローは同じ父、ヘイローを持っていた筈だからウマ娘の方でも関係性としても近いのかもしれない。キングの頬を引っ張り事を謝りながらもりんご飴を与えている姿は、甥っ子姪っ子に悪戯をするのが好きな親族のようにも見える。

 

「という訳」

「ンだよ下らねぇことしてやがんなぁ……別に悪意を以て目指してる訳でもあるめぇし、応援してやりゃいいのに」

「親心は複雑って奴なんだろ、まだ子供持った事ねぇから知らねぇけどさ」

 

事情を説明するとサンデーは深い深いため息をつきながらも膝の上に乗せたキングの頭を撫でている、キングは何でこうなっているのかを理解できてなさそうではあるが……そんな中続けられた鬼電に気づいたサンデーはキングのポケットから携帯をとる。

 

「あっ」

「おい」

「任せとけ」

 

そう言いながらサンデーは膝の上に乗ったキングをランページの上に置き直しながら通話ボタンを押した。

 

『キングっ貴方何時まで出ないつもりだったの!!?』

 

聞こえてくる母の声にキングは思わず身体を強張らせた、子供にとって親のそのような声は恐怖の対象、如何に強がって隠しきる事なんて出来はしない。が、それを聞きながらも彼女は笑っていた、まるで地獄の悪魔のような表情を浮かべながら笑っている。

 

「ヒヒヒッ……ヒヒヒヒッ……随分と、面白くねぇ女になったなぁええっ?」

『っ……!?その声、まさか……!?』

「久しぶりだなクソ女、最愛の娘を俺の相棒に取られた気分は如何だバカ」

 

キングからすればあの母を罵るような相手を初めてみたが故の驚き、ランページからすれば本当に相手の神経を逆なでする言い方をするなぁ……という意味での呆れがにじみ出た。

 

『何も分からない貴方に何かを言われる筋合いはないわね』

「応ねえな、だから一言だけ言ってやる―――俺の家族みてぇな事だけはすんじゃねえぞ」

『誰が―――!!』

 

最後まで聞くこともなくサンデーは通話を切った。徐に取り出したハーブシガーを吸いこみながら、キングに携帯を返す。

 

「これであいつにも多少なりとも伝わっただろ、少しはマシになるだろうよ」

「え、ええっと……?」

「言われた側からすりゃとんでも劇薬だなおい」

「言われるような子育てする方が悪い」

 

同じような人生を送ってきたランページからすればその言葉に反論する術を持たない。サンデーの事情を知っているならばそちらの方が利く事だろう。

 

「さてと、感謝祭巡ろうとしようじゃねえか」

「へいへい……どうせならエルグッツ辺りも呼んで回るか、海外勢勢ぞろいで回るのも一興だろう」

「そりゃいいな、キングよぉ海外レースのあれこれ―――聞きたい?」

「ぜ、是非!!」

 

よ~し話してやろう!!と先程の空気を吹き飛ばすような明るさを見せながらもキングの手を引いて歩きだすサンデー、それに肩を竦めながらも追いつくとキングの手を繋いで三人で感謝祭へと改めて繰り出すのであった。

 

「まあ何かあったら言えや、そこのランページが何とかしてくれるぜ」

「いや俺かよ!?アンタがやれよ」

「他人の家庭に首突っ込むなんて面倒な事なんて二度とやらねぇよ」

「俺ならいいのかよ……」

「俺より権力あるだろ」

「ぐぬぅ……」

*1
史実のキングヘイローは不屈どころか何事も投げ出す問題児だった。雨、砂、馬群が嫌い。夏は暑いから苦手、嫌になったらレースをやめるといった具合にかなりの気性難で問題児だった。




なんか、書いててアイシールドのヒル魔がサンデーにインストールされたかもしれない……。
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