「っつう事があってな~ゴアの奴マジで面倒くせぇったらねぇんだよ」
「それ、日本に来るときも何かあったんじゃねえのか?」
「そりゃあった、だけど脚で黙らせた」
「流石アメリカのレジェンドウマ娘……!!」
キングと共に回っていく感謝祭、その途中途中で語られていくサンデーの現役時代のあれこれ。正しく波乱万丈の人生でトレーナーとの二人三脚とセクレタリアト御大への感謝で綴られるそれにキングはもちろんランページも聞き入るほどの物だった。
「あいつもあいつで中々に良い走りはしてたぜ、嫌でも目に入ったからな」
「そ、それは当然よ。何せこのキングのお母様、何だもの……」
母へと充てられた言葉にキングは何処か複雑そうだった、一方では尊敬し誇れる母への喜びとそんな母は自分の事を一切認めてくれない事への不満と怒り。その二つが入り乱れて素直に顔出せないといった感じだ。
「G1を7勝だっけか、会長に並ぶレベルって言われたらとんでもねぇな」
「その上を行くやつが言うと嫌味になってねぇか?」
「知らん」
だがグッバイヘイローが伝説級の名牝である事は間違いはない。そんな血を受け継いだキングヘイローも注目を集めるのは間違いないだろう。
「ンでお前はどんなウマ娘になりてぇんだ?」
「わ、私!?」
「ああ、こんだけ俺の事を語らせたんだ好い加減にテメェことを語っても悪かぁねぇだろ」
そんな問いを投げかけられたキングは戸惑うように視線を彷徨わせた、そして誤魔化すようにジュースを飲むが何かを観念したかのように語りだした。
「……実は、まだ決まってないんです。お母様みたいなウマ娘になりたいってずっと思ってた、お母様の活躍に憧れて、心から尊敬していたのにあの人は突然それを否定して諦めろって言った。だからそれに反発してるだけなのかもしれないし、認めて貰えればそれだけで、満足な気もする……」
キングヘイローのオリジンは母であるグッバイヘイロー。そんな母に認められてたいというのが彼女の根幹、母を認めさせてやりたい。だがどうすればいいのか分からないしどうすれば自分が満足するのかもまだまだ分からない。
「どんなに頑張ってもお母様は認めてくれないかもしれない、頑固だし石頭だし……」
「だろうな」
「だったら認めさせりゃいいだけだろ、簡単な事だ」
呆気からんと言ってのけるランページに目を白黒させるキングに呆れ顔のサンデー、またこいつは何を言い出すんだか……とため息をつきながらも順序だてる様に、諭すように述べる。
「いいか、グッバイヘイローはG17勝だ。日本で言えばシンボリルドルフ級の偉業をやったウマ娘だ、しかもあいつは多分こいつがレースに進むこと自体いい顔してねぇぞ。理由は見当つくが譲る気はねぇだろうよ」
「だがキングはお母さんに認めてほしいんだろ、これが私です、貴方の娘であるキングヘイローですって」
「そ、それはもちろん……」
「だったらやればいい、手段なんて幾らでもある」
キングは本気で驚いていた、あの誰しも認めるあの母を認めさせる手段なんて幾らでもあると。一体どんな手段なのか、是非知りたかった。
「そ、それはどんな手段なんでしょうか!?」
「思いつくことは思いつくけどさ、ぶっちゃけクソきついしクソ大変、だが―――達成すれば一流なんてどころじゃない、俺さえ超えたウマ娘になれる」
「―――っ」
世界最速にして最強、独裁暴君のメジロランページを越えたウマ娘になれる。その言葉の持つ魅力はとても大きかった、そしてそれにサンデーも興味を持ったようだった。一体何をさせるつもりなのかと、二人からの視線を受けて目で聞きたい?と聞くと直ぐに勿論と帰って来たので発表する事にする。
「全距離のG1レースを制覇する」
「ぜ、全距離……?」
「お前……またとんでもねぇ事言いだしやがったな?」
自分でもキチガイ染みた事を言っている事は分かる、が自分を越えるウマ娘を育てたいとトレーナー業をやっている身としては考えなかったわけではない。現実的ではないのでチームとして全距離G1制覇という目標に下げてはいたが……ある意味でこの目標はプレアデスすら超える目標とも言える、がキングヘイローならば無茶な話ではないと思っている。
「間違いなく俺を越えて歴史にその名が刻まれることになるな、流石にそこまでこなされたら俺も勝てねぇな。つうか長距離の時点で俺は無理」
キングヘイローは史実でも菊花賞にも出て5着に入っているし長距離にも対応は出来ない事はないのだ。そしてアプリのキングは全距離適性をAにする事が容易い数少ないウマ娘だった。そこから考えても無茶な話ではない、ダートにさえ舵を切らなければ多分何とかなるじゃないかなと思う。
「―――私、やるわ」
「おいおいおい本気にしちまったじゃねぇかテメェどうすんだよ」
「いいじゃねえか子供の時は夢を見るもんだぜ?」
「だからって限度があるっつってんだよ」
ランとサンデーが話す中でキングの中には確固たる決意が生まれていた。全距離G1制覇、確かに途方もない目標で異常な夢だ、だがどうしようもなくそんな目標に心が躍ってしょうがない。走ってみたい、全てのG1の舞台で。どんな言葉を掛けられてもいい、走り抜けてみたい、母のように胸を張れるウマ娘になる為にはその位の事をしなければしょうがない―――それに
「私はキング!!誰よりも強く、輝かしく、憧れるような一流のウマ娘になるのよ!!その位の目標の方が余程素晴らしいわ!!やっぱり、私は入学したらあなたの下で学びたいわランページさん、いえこのキングにこれだけの夢を見たんですからその責任を取るのは当然よね?」
「おっなんか元気になったな。その気があるならプレアデスに顔を出しな、鍛えてやるから」
「ええっ是非そうさせて貰うわ!!」
この人とならば絶対に自分は輝ける、一流を越えたその先の先にまできっと走り抜けられるはずだから!!!
「おっいたいた~お~いランページ、感謝祭回るの手伝ってくれよ」
「私達、日本語は話せるけどまだ読むのは難しいのよ~」
「アプリの翻訳も限界あるしねぇ……漢字が全く分からない……」
そんなこんなをしていると、アルメコアたちが自分たちを見つけて此方へとやって来た。海外ウマ娘の三人に向けてキングは挨拶をしながらも宣言した。
「私はキング、キングヘイロー!!母を越えて一流のウマ娘になるものよ!!」
「ほほう?いい顔してるじゃねえか、なんだ青田買いって奴か」
「何処で覚えたんだよンな言葉」
「一流、一流。とてもいいわね、その一流が世界に通じるものである事を応援してるわ」
「それなら、世界の話をしてその糧にするといいわよ!!」
キングはその言葉を聞いて笑っていた、そして心に決めた。家に帰り、母が帰った時に宣言した。
「私はお母様が何と言おうとレースから逃げたりはしないわ、私は走るわ。そして―――キングヘイローとして歴史に名を刻むわ!!」
「キング……貴方」
母が自分の決定に何か言おうとすることは読めていた、だからこそ直ぐに自分の部屋に戻ってランページから貰った資料を読む事にする。今から自分の夢へと向けた戦いは始まっているのだから。そうしようとするキングの背中を見つめる母の顔は何処か寂しそうでありながら嬉しそうだった。