貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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329話

「ギュンギュンのバビュ~ン!!」

 

プレアデスの新メンバーとして加入が決定したマヤことマヤノトップガン。そのトレーナーを引き受ける事は決めたがその走り自体は把握していなかったので早速走りを見せて貰う事にした。元々親交があるので多少なりとも知っていたつもりだったが彼女のそれはずっとずっとキレがあった。

 

「速いですね……ピッタリと内ラチにギリギリのレコードラインを保持しているし体重移動も上手で足捌きも上手い」

「これでデビュー前とは思えないです」

 

スズカの意見に同調するようにエアグルーヴも驚きの声を上げてしまった、それほどまでにマヤの走りは素晴らしいものだった。レコードラインを確保する事で生まれる恐怖を完全に掌握しているかのような飛ぶような走りと飛ぶ為の足捌きもデビュー前では考えられないほどに高水準、それをマジマジと見せつけられるランページは改めて彼女が天才肌だったことを実感した。

 

「これでデビュー前って……天才って奴、何ですかねぇ……」

「だろうな。要領が半端なくいいうえに勘も冴えてるしセンスも飛び抜けてる、強いて言うならば……小柄な事位だろうな」

 

マヤで悪い点というか惜しい点を敢えて、強いて言うならばその体格の小ささだろうか。歩幅が小さくピッチ走法がメインになる、だがスタミナの使い方も既に出来ているので小柄な見た目には似合わぬほどに持久力があるので長距離レースも苦も無くこなす事だろう。

 

「あんなんでも先輩か……面倒くせぇな」

「ターボ相手でも態度変えない奴が何か言ってらぁ、まあ言いたい気持ちは分からなくはないけどな」

 

一先ずマヤの走りは見た、データは取ることが出来たが……どう生かすべきか悩む。彼女の脚質は先行だがその気にさえなれば逃げだろうが差しも追い込みも難なくこなしてしまう事だろう。自分の戦術を仕込もうと思えば仕込めるが、他の方向性に持っていくのもいい。じっくり悩みたいところだが来年デビューが迫る彼女にそれほど悠長なことをしている暇はない。

 

「ねえねえどうだったランページさん、マヤの走り!!」

 

走り終わって駆け寄ってくるマヤ、愛嬌のある笑顔と仕草、小さな身体も相まって小動物的な愛らしさを纏いつつも何処か期待するようなそれは保護欲を掻き立てる。が、ランページはそんなものに惹かれるような存在ではないので少しだけ乱暴にマヤの頭をなでる。

 

「豪語するだけあって中々の走りだなぁおい、こりゃG1も十二分に狙えるな。どういう路線でお前さんは行きたい」

「うわぁぁ~ランページさん強いよ~。うんしょっと、えっとね、マヤは特に三冠とかトリプルティアラには特段興味はないかな。マヤはキラキラしたいの」

 

自分の撫でまわしから抜け出しつつもどうしたいかを伝える、マヤはほとんどのウマ娘が夢見るそれらには興味がない訳ではないがそれ自体にはあまり魅力は感じないとの事。寧ろそれを達成したウマ娘が纏う輝き、活躍に興味があるとの事。

 

「だからね、マヤはランページさんみたいにすっごくキラキラしたいの!!でも、だからってティアラに進みたいって訳でもないの」

「成程ねぇ……自分らしくキラキラしたいって事ね、相分かった」

「えっ分かったんですか?」

「私もなんとなく、分かりましたーヨ?」

「ちなみに俺もだ」

「えっ私だけ……?」

 

チームメンバーが話し合う中でランページは思わず空へと目を向けた、マヤノトップガンというその名前につられたようだった。

 

「なぁっマヤ、キラキラなウマ娘になりたいって言ったよな。自分だけのキラキラって奴、纏いたくないか?」

「自分だけのキラキラ!?それって何々、教えて~!!」

 

ウマ娘としても大人の女性としてもランページという存在はマヤにとっては一種の完成形に近い、大人の余裕を纏いながらも確かな実力にとってその輝きを、煌きを纏い続けてきた彼女が言うキラキラ、自分だけのキラキラを纏えると聞いてしまえば思わず尋ねてみたくなる。小さな子供が大人に強請るような光景だとプレアデスが思う中でランページはマヤの頭を撫でながら、始めた。

 

「走っているうちに自分の走りに魅入られた連中が口にする、あいつは凄い、あいつは普通じゃない、それが次第に一つに収束していくんだ」

「それが、キラキラなの?」

「その一つ、かもな。トップガン、君の名はエースとも言い換えられる。エースの条件、分かるかい?」

「えっと……あっ凄いキラキラしてる人!!」

 

正解だ、マヤの頭をなでながらも続ける。

 

「強さを求める奴、プライドに生きる奴、戦況を見極める奴。大きく分けるとこの三つに分けられる、君は一体どんなエースになるのかな」

 

真っすぐと射貫くような視線が注がれる、それを受けたマヤはこれから逃げてはいけないと直感した。逃げたらもう自分はこのチームにはいられない、逃げてはいけない、確りと受け止めなければならない。そして反撃の言葉を込めてそれを放つ。

 

「そのどれでもない、マヤはマヤらしいエースになるよ!!キラキラのエース!!」

「―――面白いなその答えは、ならその答えを俺に見せてくれ。その為にもこれから君は走り切れ、それだけだ」

「I copy!!」

 

マヤにとっての規定、走り切れ。それは練習だろうとレースだろうと変わらぬ不文律、それを守っていこうと思う。走り切れ、極めてシンプルで分かりやすいものだが……それが如何に難しいのかは分かる。そしてそれを成し遂げた目の前の煌きがどれほど偉大な星なのかも。自分はその星の連なりの一つに並ぶことになる。そのことを、今一度強く意識する。

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