貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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あけましておめでとうございます!!今年もよろしくお願いします。


33話

「ハァハァハァ……」

「ちょっ大丈夫ラン?」

「これが、大丈夫、そうに、見えるのか……ネチャネチャ」

「ネイチャ!!」

 

一月も半ばを過ぎようとしている頃、坂路トレーニングを漸く終えたランページは崩れ落ちるかのように倒れこんでしまった。

 

「坂路ってそんなにキツかったんだ……デビュー後に取り入れるって言ってたけどこりゃ覚悟する必要あるかも……」

「シンザン鉄を使うなら覚悟しとけよ、マジできつい……」

「えっでもランって慣れてる筈じゃ―――」

「これ、新品なんだよ」

 

そう言いながらもシンザン鉄をシューズから外すのだが、その際に大きな音を立てながらも地面に落ちたそれを見て言葉を失うネイチャ。音からして以前着けていた物よりも重い物だというのが察せてしまった。

 

「どんだけ重いのよそれ」

「今までが普通の蹄鉄の4倍だったけど今は5倍だ」

「うわぁ……」

 

既に超重量蹄鉄に慣れていたランページですら音を上げる程にキツいシンザン坂路に顔を歪めるネイチャ、だがそれでも走れている事に驚くべきか悩んだ。

 

「そこまでやるぅ……?」

「まあやらなくて負けるよりもやって負けた方が後腐れ無いだろ?やれる事を全力でやって負けた方が後悔なんて残らないのさ」

「そこは分からなくもない、かな?」

「だろ。人事尽くして天命を待つって奴だ」

 

そう言いながらも走り込みを続けているイクノへと視線を向けるのであった、彼女は彼女で普通のシンザン鉄を漸く導入したばかりなので慣らしを兼ねての走り込みだが、中々に走りにくそうにしており一歩一歩を踏みしめるように脚を上げている。

 

「流石のイクノも苦戦してるな、俺も最初は大変だったからなぁ」

「にしても大丈夫な訳、イクノもシンザン鉄で強くなって」

 

ネイチャとしては同じチームとはいえ、レースとなったら問答無用で競い合う敵になる。その敵がどんどん強くなる様を見ている訳だ、普通は同じチームならばレースの被りを避けるが南坂からは寧ろ被らせていくと宣言を受けている。なのでこれからも、自分もそうだがカノープス同士の激突は目に見えているのだ。

 

「良いじゃねえか、南ちゃん言ってたじゃねえか仲間が競い合えるライバルなのは素敵な事だって。それに俺達は学園最強を目指すんだ、その為には互いが互いを潰しあう事を恐れてたらダメだろ」

「まあ、そりゃ……」

「それに、実際の舞台で一緒に仲間と走るって事はそれぞれが客観的に自分の走りを見て貰える。これは凄い長所だろ?」

 

ハッとする。練習の中では出ないものが本番では爆発するなんて事は良くある話だ、そしてそれを一緒に走る仲間が体験していたらそれを感想として聞く事が出来て次に繋げる事だって出来る。レースを通してチーム全体で強くなる、それが今のカノープスなのである。

 

「今年デビューのナイスネイチャ、お前さんだって最高のライバルが近くに居るんだ。うかうかしてられねぇぜ」

「それってテイオーの事?」

「ああ、あいつとんでもねぇバケモンだぞ」

 

先達の意見として放った言葉に素直にネイチャは驚いた、学年でもテイオーの凄まじさは話題になっていたが……ハッキリ言ってネイチャからすればランページだって相当な化物だと思うが当人がバケモン認定をするのだからテイオーの素質と言うのはそれ程の物なのだろうことなのだろう。

 

「この前に南ちゃんが選抜レースを見てたのを後ろから見たけどよ、マジであれ可笑しいぞ。何だあれ」

「うっわそんなに?」

「そんなに。ありゃ多分、無敗の二冠は確実だな」

「うへぇぇ……」

 

史実を知っているからではない、実際のテイオーの走りと言うのはそこまでのポテンシャルを感じさせるほどの物だった。俗に言うテイオーステップ、それを可能にするまでの柔軟な関節が生み出す異常なバネ。本当に同年代でなくて良かったと安堵したくなる、その代わりにはマックイーンが同期にいるのだが……。

 

「んじゃアタシ勝ち目なくない?」

「んな事ない、お前さんだって十分過ぎる位凄い逸材だ。大丈夫、デビューまで俺とイクノと走り込みまくれば自然と力付くから」

「アハハハッそれは勘弁したいかな~って」

「よし追加でターボも付けてやる」

「なんでキツくなった!?」

 

しかし、ネイチャとしては願っても無い事。既にデビューしてG1で勝利もしているランページとそれに負けない位に実績を出し続けているイクノの協力は実に有難い。それに

 

「チームメイトが頑張ってるのアタシだけ頑張らないってのもあれだしね、よ~しアタシもいっちょやったりますか!!」

「その意気だネイチャ、んじゃ早速やるか。イクノにターボ~、模擬レースやるから混ざってくれ~」

「分かりました、少しだけ休憩貰えますか?」

「15分で良いか?」

「十分です」

 

走り終わって一呼吸を入れるイクノ、そして傍にはストップウォッチを構えていたターボが居たが話を聞いて飛んできた。

 

「ねえねえねえねえラン聞いて聞いて聞いて!!ターボね、昨日の授業で2000m走ったんだけど1着で逃げ切ったんだぞ!」

「おっマジか!?お前、今までマイルは逃げ切れたけど中距離はキツいって言ってたよな」

「うん!!でもイクノとランに追い付こうと走り込んでたらなんとか2000は行けるようになったの!!」

 

褒めて褒めて!と言わんばかりにうずうずしているターボの頭を撫でてやる、ターボが自分に対抗心を燃やして努力を重ねていたのは知っていたが……2000も逃げ切れるようになったのは驚きだった。

 

「このまま長距離も逃げ切れるようになる!!」

「もしかしてアンタも三冠狙ってるのターボ」

「勿論!菊花賞だって有だって逃げ切ってみせるよ!」

 

その表情に嘘はなく、本気だった。常にトップで居続けたままゴールする、それを最も好むのがターボ。ならばそのまま行ける所まで行ってやろう、あのターボでさえも此処までの気持ちを固めて頑張ろうと決めているんだ、自分が弱音を吐いている訳にも行かないかと何処か溜息のようなもので自分の中の邪魔物を吐き出すと立ち上がった。

 

「それじゃあネイチャさんだって頑張っちゃおうかな。テイオーといい勝負できるようにはならないとデビューしてもキツそうだし」

「それじゃあ皆で走ろ!!えっと……マチタンタイム計って貰ってもいい~!?」

「うん任せて~!!」

 

想いはあれど、皆が目指す道は一つに繋がっている。皆で強くなる、カノープスで強くなる。

 

「行くよ~!!位置について、よ~い……ドン!!!」




ターボ&ネイチャ、強化中。

「妥当テイオー!!よし、頑張るぞ~!!」
「ターボ、それ間違ってんぞ。勝つのはこっちの打倒だ」
「あれそうなの!?」
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