『本日はG1レース、秋の天皇賞が行われます。ですが今年は一味も二味も違います、何せ面子がこれまで以上に豪華なのです!!』
遂に訪れた天皇賞(秋)、マックイーンをはじめとして超実力派ウマ娘たちが集うのは当然のことだが今年は例年以上に粒ぞろい。願わくばこの中にランページもいてほしかったというファンも多い一方で一体誰があの無敗の代役を果たすのか、それとも主役となるのかと楽しみにしている。そんな中にそれを見守る側としてランページがいた―――
「実況は私赤坂。そして、解説にはこの方をお迎えしております!!」
「おはこんハロチャオ~!!貴方の心にワールドレコード、独裁暴君、生涯無敗!!なランページだぜい!!皆の者善行積んでたか~?でおなじみのメジロランページでお送りいたします」
「もはやその伝説を知らぬものなどいない日本が世界に誇れるウマ娘、凱旋門にBCクラシックを制覇したあのメジロランページさんをお迎えしております!!ランページさん、本日は宜しくお願いいたします!!ぶっちゃけ、私これまでの人生で味わったことがないぐらいには緊張と興奮を隠せておりません!?」
「落ち着きましょうか」
「凄い落ち着きました」
但し、解説という立場ではあるが。普通に観戦しようと思っていたのだが、天皇賞の解説を頼まれていたモンスニーが如何しても外す事が出来ない用事が出来てしまったのでその代役としてランページがやって来た。
「ええっとランページさんから見た今年の天皇賞は如何でしょうか、矢張りカノープスのメンバーについては一番お詳しいと思うのですが」
「そうですね、元々のチームメンバーもいますし今も仲良くしていますから分かってますね。ですが今年はそれだけでは済ませられないほどのメンバーですからね、月並みの誰が勝っても可笑しくないという言葉がまさしく当てはまってしまう程には充実してます」
「それでは、まだお時間もありますのでお聞きしても宜しいでしょうか?」
解説としての中身を振ってくれた、というよりも世界最速にして最強としての意見を聞いてみたくてしょうがないといった様子の赤坂に肩を竦めつつも応えた。
「かなり入り乱れたレースになるでしょうね、安田三連覇という偉業を引っさげたイクノにトリプルティアラのターボ、ダービーウマ娘のネイチャに天皇賞制覇ウマ娘のライス、何時G1を取ったとしても可笑しくもないタンホイザとカノープスだけを見て充実しているのが分かります。更に此処にブルボンにテイオーも加わる訳ですからねぇ……いやぁ……現役にこんなん出走表見てたら絶対ため息吐いてましたよ」
「あ、貴方ほどのウマ娘でも、ですか」
「まあそれでも出る事は出たでしょうね、南ちゃんに上手い事私の心をコロコロ~と転がされて、というか挑発されて私が乗ってハイ出走。全くあの優男どこの孔明だ……」
赤坂は思わず苦笑い。頭の中で南坂が孔明の格好をして口元を隠しながらランページを動かしている姿がどうしようもなく似合っていたからだ、宛らランページは美髯公と褒められていた関羽だろうか。
「と言っても、他にも有力なウマ娘は居ます。全員がこのレースを取りに来ている、レースは何が起きるか分からない。偶然が必殺の時を齎すかもしれない、その偶然を練習と熱意がひっくり返すかもしれない……偶然を狙って起こすものがいるかもしれない」
「偶然を、狙ってですか?」
「そういうものですよ―――そういうことが出来る奴は勝負の世界には一定数、いるものです」
その言葉に、多くの者が生つばを飲み込んでしまった。世界を知る者の言葉、その価値は言わず物がな。いや、寧ろ偶然を狙って起こしたのは彼女自身であるのかもしれない……。
「そして今回注目するのは―――俺が現役時代なら一番戦いたくない相手ですね」
「そ、それは一体!!」
「それは」
「それは!?」
「おっとお時間が来たようです、出走ウマ娘が地下バ道から姿を見せます。おっと一番手は爆速エンジンのツインターボ、ドッカンターボで今日も大逃げを狙っていくことでしょうか赤坂さんはどうお思いで?」
「そうですね、彼女の魅力はそこに集中していますね。誰もがその走りに魅せられて大盛り上がりです、それが人気にも表れています―――って私が解説してる!?」
すり替わったというか奪取した感じだが直ぐにランページはそれを赤坂に返した。実際問題、今回のレースでランページが戦いたくないと思うのはほぼ全員ともいえる。イクノもそうだが彼女たちは自分の全てを知っていると言っても過言ではないし対策も簡単、故に実力と精神力の勝負に持ち込まれれば自分にも絶対の勝率なんてものは存在はしない。
「ヤマニンゼファー、安田記念ではあのイクノディクタスを相手にして7mmという大接戦を演じきっての2着。本日はテイオーに続いて4番人気となっております。私の隣にいるメジロランページと争い続けた貴婦人を敗北寸前にまで追い込んだ風が勝利を呼び込めるのか!?」
史実での勝者、ヤマニンゼファーが雪辱を果たすのかそれとも―――そう思っている時の彼女は現れた。貴族の気品を感じさせる黒コートを羽織りながら、髪を靡かせながら歩みを進めるその姿にはメジロの風格を感じさせる。
「本日の一番人気、メジロマックイーンの登場です!!宝塚記念ではトウカイテイオーやイクノディクタス、ライスシャワーを踏み越えての一着をもぎ取ったメジロの名優、メジロ家の誇りとも言うべき天皇賞の盾を獲れるのか!!」
興奮気味に語る赤坂の隣でランページはじっくりとマックイーンの身体を見た。矢張り、下半身の仕上がりが以前よりもずっと凄い事になっている。宝塚記念からの夏、それを越えて更に仕上がっている。全体的に筋力が増しているためかスタイルも良くなっているように見えるしあれから得られる推進力は極めて大きい事だろう。
「天皇賞秋の陣、集い集った優駿一行、目指すは一つ秋の盾。栄光目指して駆け抜ける、その姿は天駆ける如く、瞬きすら許されず、見届けるが誉れなり。なんてね、ちょっと吟じて見ました」
「素晴らしい語りで何だか私の仕事が奪われていくようで怖いですが、間もなくゲートイン。秋の天皇賞、間もなくスタートです!!」