貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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337話

秋のG1はある意味で特別な意味を持ち始めてきている。それはメジロランページがそれらにほぼ全てに出走して勝利を飾ったからと言ってもいい。そんなG1レースの一つ、エリザベス女王杯の開催が迫ってきた。だが今年のエリザベス女王杯は一味違う、参戦を表明した海外ウマ娘がいたからだ。

 

しかもそれはシルバーストーン。ジャパンカップではテイオーとターボと伝説となった約2センチを激戦を繰り広げ、アイリッシュチャンピオンステークスではランページと競い合い続けた世界の強豪の一人である。そんな彼女が殴り込みを掛けて来た、まさかのジャパンカップではなくエリザベス女王杯を選んだことにURAも驚きを隠せなかった。何故ならばもはやジャパンカップ以外の国際競争というお題目は最早有名無実化していた。

 

「そんな国際競争が漸く意味を成すな、他で言ったらチャンピオンズカップ位でしか使われてなかったもんな」

 

思わずそんな言葉を口にすると隣にいた南坂が同意の意を込めて頷いた。久しぶりに二人でパソコンでデータを纏めている、シルバーストーンに関するデータを一応目に通しておきたいと言われたので自分がそれを纏めている所である―――が彼女の場合は特段特別な戦法などは用意したとしても機能するとは思えない。

 

「走り、フィジカル、戦術、様々な物が似通ってて言っちまえば俺と同じタイプ。だから対策を立てると言っても基本的に俺対策がそのまま最善手になる」

「やはりそうですか……となるとターボさんもイクノさんもそのまま下手な戦術を与えるよりもそのままの方がいいという事ですね」

 

自分自身で自分の対策を語るのもあれだが、ランページの正攻法は真っ向からの実力勝負が最も勝率が高い。下手にペースを崩させようと近くに付こうとしてもそもそもが大逃げなのでそれによって体力が大幅に削られる、下手に重圧(デバフ)を掛けようとしてもそれを逆に利用される。最後の直線までは可能な限り体力を残しつつ好位置を狙い、ラストで全力を出し切る。BCクラシックでレディとダイナが取った作戦こそが最適解。

 

「それに倣うとするならば―――」

「「いつもどおりが一番」」

 

思わず口から出た言葉は全く同じ。ターボはターボで自慢のドッカンターボで競り合える、イクノは自分と戦い続けた経験と実績、そしてそれらに裏付けされた実力を発揮すればいい勝負が出来る事は確実なのだから。

 

「シルバーはシルバーで結局のところ自分の全力を出すだけだろうが……こっちもそれをやればいいだけの事さ。ターボも、イクノもな」

「ええそうですね、となるとやはり一番なのは―――」

「ジャパンカップだな。誰が出るんだ?」

「ライスさんにタンホイザさん、ネイチャさん、そしてチケットさんですね」

「なんというか、中週3ってキツい部類って聞いたんですけどそのローテで出るウマ娘増えてね?」

「はい。大体貴方の影響ですね」

 

それを言われたら何も言えなくなる、それどころか自分の場合は中週1だった訳だし……。

 

「まあエルの方はまあまだ何とかなるんじゃねえの、まだやりやすいし」

「ですね。彼女の方が御し易くはあります」

 

そのような話を話し合いをしているとランページのスマホにニュースが入ってきた、ちょうど出していたそれに浮かんでそれに目をやると思わず、ランページは微笑みを隠しきれなくなって立ち上がってしまった。

 

「フフフッそうか、そうか!!」

 

そのままパソコンでの作業をいったん中止しながら改めて通知されたニュースを大きくしてみた。それを南坂も見るのだが……思わず一緒に笑ってしまったのだ。確かにこれは大きな喜びのニュース、嬉しさが込み上げて致し方ない。そこにあったのは―――

 

「そうか、やったなっ……お前は立派なウマ娘だよ!!」

「本当にご立派です」

 

 

 

『さあ最終コーナーを回った、先頭はメジロパーマー!!だが後方からも迫ってくるぞ、ブロカントクロックが差し返した!!ブロカントクロック先頭、メジロパーマー厳しいか、先頭が今完全にブロカントクロックに入れ替わったいや、此処で伸びて来たぞメジロパーマー!!メジロパーマーがまた伸びて来た、ブロカントクロックとの争いは終わらない!!さあ何方が先頭に立つのか、ブロカントクロックかメジロパーマーか、メジロパーマーだ!!メジロパーマーが差し返した!!身体半分前に出た!!このまま行けるか行けるのか!!?ブロカントクロックも最後の一伸びに掛けて来た!!メジロパーマー、メジロパーマーがそのままゴールイン!!!メルボルンカップを制したのはメジロパーマー!!メジロの大逃げウマ娘がまたやりました、これで海外G1を2連勝!!なんと強いレースをしたのか、メジロパーマーその名を世界に轟かせました!!!』

 

『メルボルンカップを制したのは日本の大逃げウマ娘、メジロパーマー!!!』

 

パーマーが決意した海外第二戦、オーストラリアの国をも認める国民的な一大レースたるメルボルンカップ。世界最高峰の長距離レースの一角、このレースを制する事はステイヤーとしてはこの上ない栄誉となりえる。いやパーマーにとってはそんな栄誉なんてどうでもいいかもしれない……彼女にとってこのレースは、自分のトレーナーと決めた最高のゴールになった事だろう。

 

「これでもう、グッドウッドカップ制覇はフロックなんて言われる心配はねぇな」

「相手は紛れもなく強豪ぞろい、これでフロックなんて言ったら言った側の方が叩かれますからね」

 

メジロ四天王に相応しくない、なんて言われていたパーマーはライアンやマックイーンですら成し得なかったことを実現した。海外G1二連勝、寧ろパーマーこそメジロ四天王の筆頭という者も出てくるかもしれない。

 

「南ちゃん」

「はい」

「なんか、ターボの海外挑戦も期待したくなってきたわ俺」

「奇遇ですね。私もです、ではランページさんに帯同をお願いしましょうかね」

「南ちゃんが上ちゃんの手伝いしてくれるならな」

 

笑いながらもニュースで一面を飾っているパーマーへと目を向ける。山田トレーナーにお姫様抱っこされながらも大粒の涙を流しながらも心から笑っている写真。この上なく、幸せそうで此方も嬉しくなってきた。




メジロツクヨミ。

メジロランページ初の初仔―――双子の姉弟の弟に当たる。父はメジロライアン。
名前の由来は馬体が艶のある黒鹿毛だったので、アマテラスに合わせてツクヨミにした。

アマテラスと同じく新馬戦から順調に勝ち上がるが、朝日杯フューチュリティステークスにて7着となる。この敗北が相当にショックだったのか食欲不振に陥り体重が15キロ以上も落ちてしまう。そこで放牧に出し母であるランページと共に過ごさせ心機一転を図る。そして休養明けの弥生賞ではプラス27キロで出走。4番人気となるが、此処で怒涛の走りを見せ初重賞を獲得し、そのままの勢いで三冠を達成してしまう。名前に合わせて月光天の異名をとった。

鞍上の猛 裕加(たけ ゆたか)騎手は、プライドが高く負けたら今度こそが勝とうと躍起になり、負かした相手を睨み付ける負けず嫌いと評した。出遅れ癖があるが、それは当人が周りの馬を観察してどんな相手が見ているからとの事。
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