貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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338話

「おめっとさんパーマー。海外G1二連勝とはなぁ……俺以外だとレディ位だな肩を並べられるのは」

『い、いやぁなんというか、逃げ切っちゃった』

 

繋がったパーマーとの通話、まだオーストラリアにいるパーマーは言葉にも嬉しさが乗っており喜びを抑えきれないのが半分、そして恥ずかしさが半分と言わんばかりだった。

 

「これである意味メジロ四天王中だとお前が飛び抜けた事になったな、名だたる長距離レースを制するなんてメジロ家の誉れだな。お婆様も喜んでたぜ」

『ア、アハハハッ……うん、凄い喜んでくれてた』

 

 

『パーマー……貴方は本当に本当に……自慢の孫です……漸く貴方も胸を張れますね』

『お婆様……はいアタシ……アタシ、メジロパーマーです……!!』

 

メルボルンカップ制覇後に飛んできたアサマからの連絡で漸くパーマーはメジロのウマ娘として確りと胸を張ることが出来た事を報告した。名実ともに、だ。そんなパーマーは早く帰国したいらしいのだが、休養と取材が殺到してしまってそれどころではないとの事。それもそのはずだ、オーストラリア最大のレースと言っても過言ではないメルボルンカップを制したのだから。オーストラリア国内から取材のアポでパンクしそうになるほど。

 

『だけど不思議なのが全部アタシを褒めてくれてるんだよ、なんていうかこういう言い方悪いけどBCクラシックで勝ったランページさんみたいに我が国のウマ娘を破った!!みたいな言われ方全然しないの』

「あ~成程な」

 

思い浮かぶのは大統領に対してどうして笑ってられるのかと叫んだ一人のファン、正しい反応だとも思うがオーストラリアではそんな気運は一切ない。寧ろ我が国の精鋭を破った勇敢なチャレンジャーにしてチャンピオン!!としてパーマーを称える雰囲気が凄まじく強いのである。

 

「そりゃ良かったじゃねぇか、俺の時なんてやばかったんだぜ?取材に一切応じなかったのもあるだろうけどな」

 

ランページとしては何故そうなっているのかに心当たりがあった、自分である。メジロランページと同じメジロ家の一人であるパーマー、此処で妙な事をすれば一瞬でランページの耳に入る事に繋がりかねない。そうなるとあの絶大な影響力を誇るウマ娘からオーストラリアという国に大きく関わる一大事に発展するかもしれない、それならば下手に貶めるような印象を与えるようにもスポーツマンシップに則って彼女の勝利を称える方向性に舵を切ったのだろう。

 

「まあお前はある程度はサービスしてやった方がいいだろうな」

『そのつもりだよ。トレーナーが何処何処の取材を何時受けますっていうのを選定してくれてる』

「そうか、んじゃ世界最強のウマ娘からの取材のアドバイスだ」

 

これは真剣に聞かなければ!!とパーマーはメモするから少し待ってと断ってからメモとペンを構えた。

 

「下手に慌てたりはすんなよ、記者連中の良いエサだ。知り合いの記者連中ならいいんだけどオーストラリアじゃそれは難しいだろうからな……ああそれと一番気を付けるのがある」

『な、何!?』

「お姫様抱っこは絶対突っ込まれるからバカみたいに取り乱すなよ」

『……や、やっぱり?』

「たりめぇだろ」

 

嬉しさと感激の余りトレーナーに抱き着いてしまったパーマー、それを受けて山田トレーナーも色々といっぱいいっぱいになってしまってパーマーを抱き上げるとそのままコースを軽く走るというウイニングランをやってしまった。担当ウマ娘の勝利を全身で表現するその姿に山田トレーナーのその行動は担当に対して最高の表現だと言われる一方でこの二人ってやっぱり……という邪推をする者も多い。

 

「感極まりました、というのは分かるが抱っこされてそれを受け入れてお前からも抱き着いてたからなぁ……絶対に追及は来ると思っていいと思うぞ」

『ちゃ、ちゃんとコメント出来るかなぁ……』

「いっそのこと開き直って付き合ってますって言うとか」

『出来る訳ないでしょランさんじゃあるまいし!?』

「俺の事なんだと思ってやがんだテメェ!!」

 

そんな言い合いを軽く挟みつつも、パーマーは必死に取材の対策を考えるのだが……まあこればっかりはトレーナーとも協議が必要なのでその辺りは努力して貰う事にする。

 

「まあ兎に角ちゃんと取材とかやる気あるなら気を付けるこった」

『う、うん何とか頑張る……』

「それと最後に」

『えっ何?』

「トレーナー逃がすなよ」

『えっ!!?ちょっとランページさんそれってまさか』

 

とだけ言い残しておいて通話をブチ切っておく。まあパーマーがトレーナーを手放すとは思えないしトレーナーも彼女の下を離れるとは思えないのだが……まさかあれだけネタにされていたメジロ家にされるを推奨する側に回る事になるとは思いもしなかった。まあベストパートナーだろうし問題は無いだろう。

 

「あっいた~!!」

 

大きく扉開けられた、そこにはターボがイクノを連れていた。二人は勝負服を着ていたので一体何事かと思ったが、その理由は直ぐに分かった。

 

「エリザベス女王杯の対策の為に協力をお願いできませんでしょうか」

「勝負服着用って事はより実践に近づけるって認識でいいのか?」

「うん!トレーナーがね、他にもいろいろ声をかけてメンバーを集めたの!!模擬レースだけどホントのレースみたい!!」

 

興奮気味のターボの代わりにイクノが説明を代行する。もちろんランページが務めるのはシルバーストーン役ではあるが、下手に徹する事はなくいつも通りに逃げてほしいとの事。そして他のメンバーは豪華だった。ネイチャにヘリオスにアイネス、他にもタマやオグリ、クリークとイナリにも声をかけたらしい。

 

「よくもまあンな面子集められたな……」

「ランページが参加するならぜひ参加させて貰うと乗り気だったそうですよ」

「おい待て初耳って南ちゃんあの野郎俺が断らないって分かって上で事後承諾にしやがったなぁ……?」

「あ~でもランは大丈夫だろうなぁってターボも思ってたよ」

「私も」

 

カノープスの皆にはどうやら自分が断る訳がないという事が分かっていたらしい、この辺りは流石と言わざるを得ない……だがまあ世話になった先輩方も走るのならば自分も走らない訳にはいかないのだ。早速勝負服を引っ張り出して着替えて二人と共に南坂が待つコースへと乗り込んだ。

 

「よぉっ南ちゃん、事後承諾たぁやってくれるねぇ」

「貴方なら喜んで参加してくれると思いまして」

「やれやれ……」

「おや、負けるのが怖いですか」

「やってやろうじゃねえか、南ちゃんこの野郎」




メジロタイクーン 牡馬

メジロランページの2年目の産駒。父は七冠馬シンボリルドルフ。
名前の由来は暴君と皇帝の子なので大物になって欲しいという願いから。

新馬戦は芝で勝てず、3戦目でダートに切り替えた事で勝利。三歳はクラシック三冠は三冠でもアメリカのクラシック三冠に挑戦。ケンタッキーダービーでは二着だが、プリークネスステークス、ベルモントステークスを制しアメリカクラシック二冠を達成。帰国後はチャンピオンズカップに出走し優勝するなどランページのダートの適性を色濃く受け継いだと言わんばかりにダートでは正しく敵なしの強さを誇る。が、その一方で母に倣ったのか芝のG2に挑戦し勝利、芝でも走れたのでは?という疑惑を持たれた。その強さとは裏腹に愛嬌のある表情と仕草から砂の大君として愛された。

主戦を務めた園部 裕雄(おかべ ゆきお)騎手は普段はのんびり屋で何を考えているのか分からないけど、レースになると人が変わる仕事人と評していた。
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