エリザベス女王杯に向けての模擬レースと称してドリームトロフィーリーグ並の出走ウマ娘が集合したり、それを聞いたルドルフが
「どうして呼んでくれなかったんだ」
と若干圧を掛けながら迫ってきたり、ラモーヌから
「へぇっそう、呼んでくれなかったのね……そうなの……」
と憂いを帯びた何処か興味なさげだが寂しげな顔をされたりとランページは別の意味で苦労を重ねていた。これに関しては事後承諾だったので自分は本当に無関係だったのだが……なお、シービーは面白そうな気配を感じたと勝手に来た。結果としてURAが卒倒しそうな模擬レースが組まれ、それがランページのチャンネルで生配信されるという一大暴挙がなされてURAが泡を吹きそうになったりしつつ時間は過ぎて遂にエリザベス女王杯当日を迎える事となった。
『本日のメインレース、G1、エリザベス女王杯!!そのレースを見る為に此処京都レースには13万人を超える大観衆が集まっております!!それもそのはず、今年のエリザベス女王杯は一味違うのです!!そう、今年のエリザベス女王杯には海外からのチャレンジャーがやってきております!!しかもそのウマ娘はあのメジロランページと真正面から競い合った優駿!!その優駿を迎え撃つは日本のトリプルティアラと鉄の貴婦人!!!一体どんなレースになるのでしょうか!!』
これまで名を連ねた事がない海外のウマ娘の出走、それだけでも世間を騒がすニュースだというのにそのウマ娘はアイリッシュチャンピオンステークスにてランページと競い合った。ランページ以外で勝てるのかという疑問が浮かぶがそれよりも早く浮かぶものがある、いったいどんなレースが見れるのかと。どんな戦いをしてくれるのかとを楽しみにしていた。
「ねぇねぇ~肩車して~?」
「フフフッそうね、そうしないと見ないわね。ほらっこれでどうかしら?」
それは誰もが同じだ、此処に居る全てが。観客の中には子連れもいる、手を繋いでいた子供が周りの大人で見えないからと肩車をしてあげた。一気に高くなり開ける視界に喜びの声が聞こえてくる。それを周囲の大人たちは微笑ましいなぁと思いながらも出走を待つ―――
「ねえねえ、誰が勝つと思う?」
「さあ、あなたはどう思う?」
「ん~っとね……マヤはまだ分かんないかな」
肩車をされたのはマヤノトップガン、そして肩車をしているのはメジロランページ。勿論変装はしている、故か二人は完全に親子と見られている。少し前に売店でニンジンジュースを買った時も売店のおばちゃんにお母さんと一緒でいいねと言われてしまった。ランページ的には本当のご両親に申し訳ない気がしなくもない。
「むっ~マヤは子供じゃないのに」
「そんな風に可愛くむくれているうちには子供よ」
「じゃあどうすれば大人なの?」
「さあね、でも大人になると子供に戻りたいって思うものよ。大人になりたいのと同じ感じね、だから今は子供を楽しみなさい」
「う~ん分かったような分からないような……あっターボさんたち出てきた!!」
そんな話をしていると出走ウマ娘が地下バ道から次々と姿を現し始めて来た。先程の話なんて頭から抜けてしまったのかマヤは応援を始めてしまった。何故マヤと一緒なのかと言われれば、プレアデスはカノープスと一緒に応援に来たのだがランページは変装して遠巻きに見なければいけない。そこで変装の一環としてチームの誰かと一緒に行動するという事になった。じゃんけんでその相手を決めた結果、マヤとなった訳である。
実際、小柄なマヤと大柄なランページの組み合わせは親子にしか見えない為、変装としてはかなり優れていた。マヤは子ども扱いな事は不服だがランの為になっているならばと渋々受け入れている。
『8枠18番、トリプルティアラのツインターボが堂々と入場です!!本日は3番人気、何時もの大逃げで真っ向勝負を挑むのか期待が膨らみます!!おっと続くのは2番人気、5枠10番の鉄の貴婦人ことイクノディクタスです!!チームカノープスの重鎮と言ってもいいウマ娘の登場です、安田記念3連覇偉業は伊達ではない事を海外ウマ娘に示せるのか!!?』
続くように登場するイクノ、それだけにあらず。今年のティアラ路線を盛り上げたベガとホクトベガも出走する。ティアラ路線の最終戦と言っても過言ではないエリザベス女王杯、それに名乗りを上げるのは全員精鋭だ。そしてそんなところに殴り込みを掛けた銀色の彗星がその姿を現した。
『さあ遂に来たぞ!!その圧倒的な走りは最早ウマ娘の息を越えてモータースポーツを連想させる程の速度と力強さ、かの暴君と競り合った事もある海外の強豪、G1ウマ娘!!銀色の彗星、シルバーストーンの入場です!!本日はツインターボ、イクノディクタスを抑えての一番人気となっております!!』
『此処で観客席の一角からのシルバーコールが響いております!!どうやら彼女のご両親が所属しているF1チームの皆さんが応援のために駆けつけているとの事です、これは強敵だ。心強い応援を受けてアウェーと感じる事は一切ないでしょう。最高の走りをしてくれることでしょう!!』
シルバーのご両親とその仲間たちも応援のために駆けつけている、シルバーに聞いた限りでは日本で行われるF1レースに出るために来日したから応援にも来れたと言っていたが……凄い熱量だ、これがモータースポーツの応援なのか。
「シルバーさんの応援凄~い!!マヤもあんな応援された~い!!」
「それなら頑張って練習して、貴方の魅力を高めて皆をメロメロにしないとね。強い走りはそれだけ惹かれるのよ」
「うんマヤ頑張っちゃう!!」
シルバーには感謝しなければ、マヤのモチベーション管理には気を配っているつもりだがこれで普段の練習にも更に身が入る事だろう。そんな事を知らぬと言わんばかりにゲートインしていく彼女を見送る。
『さあ間もなくゲートイン、日の丸とユニオンジャックに見守られ、淀のターフでエリザベス女王杯を掲げるのは誰だ!!安田記念三連覇の鉄の貴婦人イクノディクタスか!!それとも爆速ターボのトリプルティアラツインターボか!!それとも銀色の彗星、シルバーストーンか!!今―――スタートしました!!』
国際競争が、今始まる。
メジロフォード 牡馬
メジロランページの3年目の産駒。父は名優メジロマックイーン。
名前の由来はハリソン・フォードから。
俳優の名前とは裏腹に、酷く臆病で寂しがりな性格で兎に角馬群を嫌う。そこで母と同じく大逃げ策を採用した結果、見事に勝利を挙げる。菊花賞ではハナで敗れるか、当時のコースレコード更新間近のタイムであった。そしてメジロの悲願とも言うべき天皇賞(春)、此処でも大逃げを打ち、遂に念願の初G1を達成する。大逃げは大博打のイメージが強いが、大逃げをしてからは必ず掲示板に入る為、馬券的な意味でも安定の大逃げ屋とファンからは親しまれていた。
騎手は逃げの仲楯こと、