貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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34話

「なぁ~南ちゃん、やっぱふけちゃダメ?」

「駄目ですよ」

「ちぇ~……わぁったわぁったよ。もう言わねぇから勘弁してくれ」

 

その日、ランページと南坂の姿はURAのビルの中にあった。整えられたパーティ会場と言わんばかりの豪華な内装の中にある壇上、そして其処へと向けられる無数のカメラと記者。見るだけで嫌になるような光景がそこにある、この日、ランページはURAから最優秀ジュニア級ウマ娘に選出されたのでその表彰式に出席していた。

 

「こんなのに出席する位だったら練習してぇもんだよ」

「そう言わずに、これも名誉な事ですよ」

「トリプルティアラ取ったら嫌でも同じような物をまた受けるんだぜ、それで十分だ」

 

余程此処に来たくなかったのか、ランページは先程から愚痴ばかりを零している。だが嫌々ながらも来ているのはその事の意味を確りと理解しており、報復の一助になる事とメジロ家の顔を立てる為。そうでなければ完全に無視している。

 

「矢張りスーツなんですね」

「何だい、南ちゃんは俺のドレスでも見たかったのかい?」

「よくお似合いだと思いまして」

「よせやい、照れるじゃねえか」

 

このような場なので一応正装で来たのだが、矢張りと言うべきかランページはスーツでやって来た。確りとネクタイまで締めている姿は妙に様になっている、これだからネイチャに揶揄われるのだろうと内心で想っていると準備が整ったのか司会がマイクを取った。

 

『それではジュニア部門の表彰を始めたいと思います。ジュニア部門にて最優秀ウマ娘に選ばれましたのは6戦6勝、無敗のジュニア王者の名に相応しい活躍を致しましたチーム・カノープス所属、ランページさんです!!』

 

その言葉と共にトレーナーと一緒に壇上へと上がる。同時に焚かれる大量のフラッシュ、しかし表情を崩してはいけないと言われたので我慢する。この時ばかりはウマ娘の身体能力の高さが恨めしい、人間の時よりもずっとフラッシュが眩しい気がする。

 

『それでは、ランページさんに今後の目標をお聞きしたいと思います。これからはどのような路線に進まれるのでしょうか』

 

向けられた質問、同時に記者たちの視線だけではなくテレビのカメラまでもが此方に向けられる。これをあれらも見ているのだろうか……そう思うと此処で恨み節の一つでもぶっぱなしたくはなるのだが、それをすると南坂だけではなくメジロ家にも多大な迷惑を掛ける事にも繋がるのでグッと抑える。

 

「そうですね、私は友人ととある約束をしておりますのでその約束の達成へと目指して突き進むつもりです」

『そのお約束についてお聞きしてもよろしいでしょうか?』

「トリプルティアラ、それを私は獲ります」

 

自信満々な表情のまま、それを言い放つと矢張り……と言わんばかりの声とおおっ……と言う声が漏れて来た。

 

「史上二人目のトリプルティアラ、独裁者って言われてますしそれを獲るのも一興でしょう」

 

そう言いながらウィンクをすると記者から確かに、と少しばかり笑う声が聞こえて来た。冠を全て取ったものこそが名乗れる称号、確かに独裁者と呼ばれている彼女にもそのティアラは似合う筈だ。

 

『成程、それではトリプルティアラを目指すランページさんを称えまして新しい勝負服を授与させて頂きます』

 

職員が持ってきたそれを受け取りながらも思わず、ボソッと一言言ってしまった。

 

「まだ一回しか勝負服使ってないのに新しいのか……どっち着ればいいんだろ」

「好きな方で良いと思いますよ」

「そう言われたら絶対一回着た方ばっかり着ない?ンで結局新しいのが箪笥の奥で埋もれるの」

 

そんなトレーナーとのやり取りに、また笑いが起きた。確かにそうだな、と同調する意見や自分だったら新しいのに……と言った言葉も漏れている。そしてランページのこれからの活躍を祈って大きな拍手が盛大に送られるのであった。頭を下げてそれに感謝を捧げ、彼女の表彰式は終了した。

 

「あ~……肩凝った、ウマ娘なのに猫被ってネコ娘だぜこりゃ」

「お疲れ様です」

 

表彰式も終わった後、取材の申し込みなどもあったのだがそれらを振り切ってランページは南坂の車に乗ってトレセン学園への帰路についていた。

 

「部室ではパーティの準備が出来ているそうですよ」

「そっか、んじゃ早く帰ろうぜ」

 

そう言いながらも貰った新しい勝負服を後部座席に投げる彼女に思わず南坂は苦笑してしまった。二つ目の勝負服と言うのはウマ娘にとっては栄誉、URAから表彰された事の証明にも繋がるのにこの雑な扱いに彼女らしさを感じる。その理由は一つ。

 

「誰だよあのデザイン考えたの」

 

新しい勝負服は所謂ドレス系、しかもウエスト周りは確りと見える上に胸が強調されるようなデザインになっているのでランページは絶対に着ない事を決意した。

 

「これってさURAに直接苦情入れたら変えてくれんの?」

「さ、流石にどうなんでしょうか。新しい勝負服に文句を付けるという話を聞いた事がないので……」

「んじゃ俺が第一号になるわ」

「それは勘弁してほしいのですが……」

「んじゃ着ない方針で」

 

URAから如何して新しいのを着ないのかと言われても絶対に着ない、着て欲しかったらデザイン変更しろと突き返す事を決めてしまったランページに南坂は困った表情を作るしか出来なかった。

 

「南ちゃん、今回の一件見ると思う?」

「少なくとも耳には入るかと。ジュニア王者であり、今代のスターになるやもしれぬ存在です」

「ならいいけどよ」

 

もしかしたらこの段階で接触があるかもしれないとランページは考えている、URAの表彰はTVでも大々的に放送されるので何処かしらで知っても可笑しくはない。そしてそれを知って近づいてくるかもしれない。

 

「もしそうだとしたら、如何します?」

「どうもしねぇよ、予定を前倒しにするだけよ」

「ですね」

 

仮に来たとしてもやる事は同じ、拒絶して突き返して後悔させるだけ。

 

「何かお力になれる事があれば言って下さいね、これでも結構凄いんですよ私」

「んじゃさ、南ちゃんってマジで何者な訳?」

「私ですか―――貴方のトレーナーです」

「敵わねぇなこりゃ」

 

そんな会話をしながらも、車はトレセン学園へと向けて走っていく。そしてランページと南坂はカノープスの面々とパーティをして楽しむのだろう、それを力に変えて今年も走るのだ。自らの目的を果たす為に、そして―――

 

「あのランページさん、少し宜しいでしょうか?」

「どったのたづなさん」

「実は……貴方のご家族を名乗る方からお電話が入ったんです、理事長が直接対応して下さってますが如何します?」

 

その時が来たらしい。

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