貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

340 / 634
340話

『今―――スタートしました!!おっとツインターボだけではないシルバーストーンとイクノディクタスが一気に飛びだしていくぅ!!素晴らしいスタートを切ったのはツインターボシルバーストーンイクノディクタス!!一気に4バ身は付けたでしょうか、先頭はご存じ大逃げツインターボ、銀色の彗星シルバーストーン!イクノディクタスは少し抑えて二人の後ろに控えました!!』

 

矢張りというべきかターボとシルバーが一気に先頭に出たが、イクノもそれに合わせたかのようなペースで駆けだしていく。普通に考えれば逃げのペース、だがこの程度ではイクノは崩れたりはしない。何せ自分の大逃げと競い続けた怪物だ、そういう意味ではフローラもそれと同じなのだが……何故か彼女の事は考えたくはない。なんか寒気もするので。

 

『第一コーナーから二コーナーへと向かいます、先頭はツインターボとほぼ真横にシルバーストーン!!早くも一騎討ちの様相を呈してまいりましたが後方には怖い怖い貴婦人も控えている、そしてその後ろにはケイソウマン、彼女のペースも速いですが前の三人が如何せん早すぎるせいか彼女の逃げも遅く感じられます!!そして後方には今年のティアラを盛り上げたベガとホクトベガが並んでおります。火花を散らしているかのようにも見えますが、トップ三人は4番手とは8バ身は離れているでしょうか!?これがあの暴君と競り合った者たちのペースか、普通の逃げとは数歩先を行くペースです!!』

 

普通に考えれば破滅的な逃げだ、破滅する筈のペースと走りをしているのに全く破滅しないという一見矛盾した光景。新規ファンは驚き、往年のファンは見慣れた光景に興奮を禁じ得ない。

 

「う~ん、凄い全然分からないや。誰が勝っても可笑しくない」

 

肩の上のマヤがそんなことを呟いた。ターボが勝っても可笑しくないしシルバー、イクノ、いや他の誰かが勝っても可笑しくない。大逃げのレースというのはそれだけ荒れる―――筈なのだが自分辺りの大逃げからその定説も崩れ始めているしランページはどうなるか楽しみな視線を送り続ける。

 

「……気負ってるわね」

「?」

「他の子達、特にベガとホクトベガはね。シニア初挑戦ていうのもあるだろうけど色んな初めてが重なってハイになってる」

「あっ本当だ、ペースが速くなってきてる」

 

今年のティアラ路線の盛り上げた二人のライバル、ベガとホクトベガ。揚々とエリザベス女王杯に乗り込んできた二人な訳だが……そこには参戦したシルバーストーンの影響もあって今年は更に盛り上がった雰囲気があった。それに飲まれている節があるのかペースが不安定気味だ、まあ初めてのシニア級レースが大逃げ展開で焦るのは分かるしこれは同情する。

 

「いい脚してるけど、中盤でちょっと使い過ぎね……だけどこれは来年あたりから化けるわね」

「マヤも分かっちゃった♪」

「フフッいい子ね」

 

『さあ先頭はいまだにツインターボとシルバーストーンが争っております、そしてその後ろにピッタリとイクノディクタスがおりますがそこから後方等は10バ身近くの差がついております!!これがランページと戦った世代の強さと申すべくでしょうか!!先頭集団は既に坂の頂上を越えて下りに走り始めましたが、此処でイクノディクタスが最ウチを付きながら加速していく!!』

 

唯一ランページと同じく10倍を扱えるが故のパワーを以て下り坂で加速するイクノ、大逃げの二人に比べて彼女の脚にはまだまだ余力がある。言い方は悪いがランページと比べたら二人の走りはまだまだマージンを残せる、そういった意味では有り難いのだが……イクノは一切油断していない。ターボの強さは知っているしシルバーがランページと争ったウマ娘だから。

 

「やるなぁッ!!」

「そっちこそ!!」

 

最前線の最前線、先頭で真っ向からの殴り合いに等しい勝負をし続ける二人。だがその表情には苦しさというものは清々しさすら感じさせる笑みを浮かべながら二人はコーナリングを行う。イクノのそれには及ばないが二人もウチを付いている。間もなく最後の直線、イクノもそこで仕掛けるであろうポイントが迫る中でターボは高揚感に満ち溢れている自分の身体に目を向けた。

 

「(溜まってる、溜められてる!!うん、これなら大丈夫、やっと上手く出来るようになってきてる!!)」

 

既にシニアのベテランとも言える立場にもなってきたターボ、そんな彼女は漸くこの領域に立つことが出来たという自覚があった。やっとわかったのだ、自分のドッカンターボの溜め方が、最高のタイミング直前の保持と解放の感覚が。ターボはランページにも言われた事だが技術を感覚として捉えて行使する、そして漸くここまでの経験を積んで最大の武器であるドッカンターボの扱い方をマスターできた。

 

「(この風、このG、この身体の内が冷えていく感じなのにメラメラと闘志が滾る感じ、これこそがレースよ、アドレナリンが沸騰してきた!!)」

 

シルバーは日本に来て良かったと感謝の念を欠かさなかった。自分の完成には長い日本滞在は欠かせなかったと言ってもいいだろう、そしてこのレースで自分はある種の覚悟のようなものが固まったと言ってもいい。その為にももう直ぐ、全力で行くだけ。

 

「(ターボの脚捌きが鋭い、やっぱりドッカンターボを完全にマスターしている……ですが此方の脚は十分に溜まっているんですよ、さあ行きますよターボ!!)」

 

焦りなど微塵もない、これも自分の予定通りスケジュール管理は完璧だと言わんばかりに落ち着き払う。ランページとの大逃げで鍛えられたと言ってもいい状況処理能力、それが判断する絶好の勝負所―――後方からも坂を使って迫る音が聞こえてくる。それらもターボもシルバーを振り切る為にそれを今、解放する。

 

「「「勝負だぁ!!!」」」

 

『さあ三強が直線に入った、全員が今横並びになったとここで全員が最後の力の猛スパートだ!!ツインターボのドッカンターボが火を噴くぞ、鉄の貴婦人の怒涛の追い上げが始まった。銀色の彗星がその名のように駆け抜けていく!!!ベガも上がってくるがホクトベガも競り合う!だがこれは間に合うのか!!?ツインターボが急加速だ、完全にアクセルベタ踏み状態だがそれは自分も同じだと言わんばかりとシルバーストーンも上がっていく!!しかし末脚勝負ならば負けないとイクノディクタスも行く!!エリザベス女王杯凄い勝負になったぞっ大逃げをし続けた三強が、一切譲らない譲らない!!!我の前を走れらせぬと全員が行くぞ行くぞ行くぞ行くぞ!!!ホクトベガ、ベガも猛然と追い上げて来る、ノースフライトも迫ってくる、後5バ身を詰められるか!!?だが三強は譲らない、これは如何だどうなんだ!!?いやここで僅かに前に出たのは―――

 

 

ツインターボだ!!ツインターボが前に出た!!先頭に出たのはツインターボ!!そのまま、そのままそのままゴールイン!!!!やったぞ韋駄天ツインターボ!!エリザベス女王杯を制したのはトリプルティアラのツインターボ!!2着にはハナ差で、ハナ差でイクノディクタス!!!3着にシルバーストーン!!海外のウマ娘に日本勢が大健闘です!!!』

 

 

「いっいやったぁぁぁぁぁぁぃ……げほげっほ……」

「認めざるを得ませんね……流石ターボ」

「ク、クッソぉぉぉぉっ……あと少しだったのにぃぃっっ……」

 

日本の意地を見せてくれたのはトリプルティアラのツインターボ、イクノも食らいつき続けたが僅かに及ばなかった。今回ばかりはターボが完全にドッカンターボをマスターした強さが出た結果となった。だが銀色の彗星の輝きが曇る訳でもない。海外のウマ娘の強さが日本に刻まれた瞬間でもあった。




メジロキャップ 牡馬

メジロランページの4年目の産駒。父は葦毛の怪物オグリキャップ。
名前の由来は父オグリキャップのような葦毛であったから。

母とは正反対に後方からのロングスパートで一気に抜き去る競馬で新馬戦から順調に勝ち上がりが、マイルでは絶対に勝てないと言われる程瞬発力がない。その反面中長距離では無類の強さを発揮するというある意味でメジロらしい資質を持っている。加えて母と父の遺伝故か芝ダートも関係なく走れる事が出来るが、初G1がフェブラリーステークスだった事を踏まえると本質的にはダート馬だと思われる。グレイステイヤーの愛称で親しまれた。

鞍上は横谷 則博(よこや のりひろ)騎手。兎に角ズブく、疲れている事にも気づいていないんじゃないか?という位にはスタミナお化けだったとの事。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。