間もなく来週に控えたジャパンカップ。エリザベス女王杯に続き、海外ウマ娘が参戦するがこちらは余り珍しさはない。ジャパンカップと言えば日本対海外のウマ娘の激突でもある。そして今年は8人ものウマ娘が海外から挑戦しにやってくるのだ、その中には凱旋門制覇ウマ娘でもありランページと競い合ったエルグッツの名前もあった。強豪犇めく合うジャパンカップとなった訳なのだが―――
「ちんたら走るなっ!!気合入れて走らねぇと何時までもネメシス卒業出来ねぇぞ!!」
『はいっ!!』
「落とすな落とすな維持だ維持!!」
今日も今日とて他のチームに比べて怒声が飛び交うチーム・ネメシス。ボスたるサンデーサイレンスは声を張り上げ気を引き締め直し、チーフたるランページが的確な指示を飛ばして行動に詳細な物を持たしていく。ネメシスの存在は矢張り大きく、停滞気味であったウマ娘達に大きな刺激となっていた。
「ンで大井の最終予選はそんなに良かったのか?」
「ええ、結局大井トレセンメンバーばっかりでしたけど一般出身の子も代表になってましたよ」
「そりゃいいな、お前の計画通りってか?」
「さあね……それはまだまだこれからっすよ」
後はファイナルズを問題なく決行するのみとなった訳だが……レジェンドレースの方も色々とあって大変なのである。元々レジェンドレースは伝説ウマ娘に出走依頼を出す予定ではあったのだが……本当に伝説級ウマ娘が名乗りをあげられて想像以上の充実を見せている。そしてレジェンドレースの予選に大井から出場して出走権を獲得したイナリを筆頭に、オグリは笠松から出走を決めている。
「やれやれ、ジャパンカップもちけぇってのに」
『久しぶりに北原の前で走れたんだ、それでその日は一緒にご飯を食べて色んなことを話せたんだ』
『そりゃ良かったじゃないかい、こっちも親方とか集まれてねぇ……いやぁ仲良い皆と飯食うと美味いよな!!』
『ああっ本当においしかった……』
オグリもオグリで久しぶりに笠松に帰った事で旧友たちと会ったり恩師と出会ったりと充実した日々を送る事が出来たという。しかしこうなると大変なのが最終的に集まるであろう面子だ、レジェンドレースも基本的にファイナルズと形式は同じで距離別に分かれているのだが……中距離辺りが地獄絵図になるのでは……?と考えずにはいられなかった。
「俺もレジェンドレースに出たかったな」
「勘弁してくださいよ、これでも今年の開催するだけでも精いっぱいだったんだしアンタまで対応させるとなるとそれこそ海外ウマ娘の受け入れを前提にしないといけないから余計に面倒になる。国内に限定してるからこそこれだけ自由にやれてるんすよ、つうかアンタが参加出来る=海外のレジェンドまで来るって事じゃないですか……最早URAの権威が失墜しますよ」
「させときゃいいだろ、ンでテメェが次の頭だ」
「ザケんなそこまで面倒な事なんて御免だ」
ファイナルズですらURAの権威云々問題で面倒な事になりそうなのを先手先手を打つことで回避しつつ自分のネームバリューとシンボリとメジロの協力でごり押ししたような物。サンデーサイレンスの参加を認めてしまえば海外で活躍していたウマ娘の参加を容認する事にもつながるので、それこそエルグッツやらシルバーストーンやらシュタールアルメコアがレジェンドレースに雪崩れ込んで来る事になる。もうそうなったら手に負えない、ジャパンワールドカップとして新G1を発足させた方が本当に楽だ。
「チェッ……」
「まあそう言わないで下さいよ、代わりと言っては何ですけどこの後に催し物を準備してますから」
「催し~?」
「ええ―――疑似ジャパンカップをね」
「ラーンページさぁぁんっ!!」
「しつけぇうぜぇ気持ちわりぃっ何!?」
最早定番となりつつあるフローラのランページに対する発作、視界に捉えた途端に抱き着こうと動くのだがそれに合わせてランページは足蹴にしようとしたのだが、フローラはそれをランページの身体を一切傷つける事も圧を駆ける事もない程に柔らかな動きで回避すると再度抱き着かんと飛び掛かってくる。それに対して限界まで姿勢を下げて回避するが、直ぐにバックステップを踏んで捉えた!と確信したフローラの顔面にランページのアイアンクローが炸裂した。
「何下らねぇ事してくれてんだテメェはぁぁぁ!!!」
「あと少しだったのにぃぃぃぃぃ!!!??いやそれどころじゃないレベルで痛ててててっ!!!!?」
「つうかなんだ今の、特撮の殺陣かなんかか」
ウマ娘の身体能力があるからこそできるような動きの連続、というか引退しているランページは兎も角一応まだ現役である筈のフローラはそんな動きをしていいのだろうか……。
「ったくこんなんなら声掛けるんじゃなかったか?」
「言ってくれますね~……これでもG1ではないけど海外重賞ウマ娘なのに」
「それを言ったら俺は凱旋門とBCクラシックウマ娘だバカ」
そう、フローラは現在海外挑戦を行っているのである。と言っても本格的なG1挑戦は来年からと定めているらしく、今年はG2を中心に出走をしていた。結果として6つの海外重賞レースに出走し3つを制している。この手応えに来年は凱旋門へ挑戦も検討していると東条トレーナーが言っていた気がする。
「テメェとのヨーロッパ遠征なんてごめんだからな、一人で行きやがれ」
「何でですかぁ!!?私とランページさんで凱旋門制覇したら日本としても誇らしいじゃないですかぁ~!!」
「生憎俺は愛国心なんてない不心得者なんでな」
これが仮にも天皇皇后両陛下とも顔を合わせた者の放つ言葉で良いのだろうか、これで色々と言われたらさっさと日本脱出してアイルランド辺りにでも嫁げばいいかと雑に考えているのかもしれない。
「それで私を呼んでくださった理由って?」
「今度のジャパンカップ対策だよ、お前だって出るんだろ、予行練習がてら参加してけ」
「おおっやった~ランページさんに頼られた~!!!」
「頼ってねぇ」
そんな二人を見ながらもサンデーはまるで自分の為に催し物を考えたと言わんばかりだったくせに、その実は自分を大いに利用する気満々だったランページにこいつと言いたげな顔をする。だがそれでいい、自分を利用するぐらいに不敵な奴でないと自分の相棒なんて務まらないのだから―――と思っていると次々とウマ娘が集ってきた、のだが
「今度は確りと呼んでくれて嬉しいよ」
「フフッ上出来よランページ」
「前回も楽しかったけど今回も楽しそうだね~」
集まってきたのはルドルフにラモーヌ、シービー。
「あっ会長だ~!!ランの言ってたこと本当だったんだ~!!!」
「ラ、ラモーヌお姉様もいらっしゃるのですね……光栄の極みですわ」
「いやはや、ランにジャパンカップの特訓だって言われたけどさ……何この面子」
「気分が高揚しますね、此処までの相手と戦えるとは」
「頑張ったらライス、お姉様に褒めてもらえるかな……?」
「うっ~なんだか身体が震えてきちゃった!!む、武者震いだねきっと!!!」
「高揚を確認、アドレナリンの分泌によるものだと推測」
テイオーにマックイーン、ネイチャ、イクノ、ライス、タンホイザ、ブルボンと次々と集まってくる。それらに共通しているのはジャパンカップに出走するウマ娘であるという事だろうか。
「という訳で、今回のジャパンカップ想定の模擬レースを始めます、そして今回はサンデーさんにも参加して貰います」
「ハッこりゃ潰し甲斐のある面子ばっかり揃えたな、良いだろう全員潰してやるぜ」
「―――簡単にはさせないぜ?」
唐突にそんな声が聞こえて来た、一人のウマ娘が此方にやって来た。コートの裏地に金の龍があるその勝負服に思わずシービーとルドルフが笑った。確かにジャパンカップと言えば彼女を呼ばないと。
「急に呼んですいませんエースさん」
「気にすんなよ、あたしもかの名高きサンデーサイレンスと走ってみたかったんだ……ジャパンカップを制した日本のエースとしてな」
「面白れぇ」
日本ウマ娘としてジャパンカップ初制覇を成し遂げたカツラギエース。そんな彼女は海外のレジェンドと言えるサンデーサイレンスと戦えることに高揚を隠しきれていない様子だった。
「今回は誘ってくれて感謝するよランページ、以前のサンデーさんのリベンジだけではなくエースとの再戦までできるとは……」
「今日はなんだか最高の日になると思ってたけど、その通りだったね~」
「いいわよランページ、以前の事はこれで許してあげる」
「それはどうも……改めてスゲェ事になったな」
メジロロード 牡馬
メジロランページの5年目の産駒。父は不屈の帝王トウカイテイオー。
名前の由来はルドルフからテイオー、高貴且つ新しい道を開拓してほしいという願いから。
父と母から受け継いだのか極めて運動能力が高く、トウカイテイオーと同じ柵越えをやってしまう。勢いをつけるの走り幅飛びではなく立ち幅跳びのように飛び越える姿とランページにテイオーステップを見せる姿で関係者はとんでもない馬になる事を確信。その予感は的中し、新馬戦からレコードタイムを叩き出すと無敗のまま駆け上がっていくが、何と渡欧しイギリスクラシック戦線に殴り込みを掛ける、そしてそのまま三冠を奪取してしまう。ランページ産駒の中でも最高傑作だという者が最も多く、メジロの公爵と呼ばれている。
鞍上はトウカイテイオーにも乗っていた