貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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344話

ジャパンカップ想定という名のレジェンドレースが行われたりと相変わらず賑やかなランページの周囲、そんな賑やか且つ色んな意味で壊れているウマ娘をトレーナーに持つプレアデスは自分たちのデビューに向けて準備を進めているのであった。

 

「ねぇねぇランページさん、本当にあれってそんなに効果あるの~?」

「その結果の産物が見たいっていうなら目の前にいるし安田記念三連覇という偉業やった貴婦人に引き合わせようか?」

 

隣で小休止しているマヤがそんな言葉をぶつけて来たので自分は何を当たり前な事を聞くんだと言わんばかりの言葉を返していく。マヤが言っているのは当然シンザン鉄の事だろう。普通に考えれば前時代的且つ身体を苛めるようなトレーニング方法でしかない、前トレーナーもこんな方法は提案はしなかったしダメなトレーニングの例の一つとして挙げたほどだ。

 

「賢明だな。その意見は正しい」

「それじゃあランページさんの指導って間違ってるって事ならない?」

「ならないならない、俺はその辺りの使い方を分かってるから」

「どういう事?」

 

チームに入ったばかりのマヤには改めてシンザン鉄を運用する意味について解説をしておく。シンザン鉄は身体を鍛える為ではなく、怪我をしない為の身体の使い方を身体に覚え込ませるための物であるという事、精神面の鍛錬にもなるのもあるがそれは何方かと言えば副次的な効果に過ぎないのだ。

 

「正しい身体の使い方さえすればシンザン鉄で走るのは簡単だ、まあその為にもそれなりの脚力とかはいるけどな」

「そうなんだぁ~……でもプレアデスだと全然使わせてないよね?」

「基礎的な部分をやってる最中だからね、自分の力がついてきているという自信が付いてきた辺りに使うのが効果的」

 

プレアデスでも使っているのは今のところステゴだけ、彼女だけは肉体のレベルが他よりもずっと高いので怪我をしない為の方法を早いうちに仕込んでおくことにした。それでも入門編の2倍ではある。

 

「ぐっ……こんのぉっ……!!」

「無闇に力任せで走ろうとすんじゃねえよ、全身を使って走るんだ。下手に走るとケガするだけだ」

「それが簡単に、出来たら、苦労しねぇっつの!!」

「それを望んだのはお前さんだ、恨むならメニューをさっさとこなしてしまった自分自身だ」

「そがっ!!やってやる、やってやるよちくしょう!!!」

 

シンザン鉄を使わせろと言ってきたのだから要望に応えた、寧ろ感謝してほしい所だ。まあ嫌味やらを抜きにしてもステゴならば問題は無いだろう、しばらくはあれるだろうがその矛先が自分へと向けられるのは問題ない。それもトレーナーの仕事の一つだし給料の内だろう。

 

「スズカ、あんまり無茶すんなよ!!それはまだ投入する段階じゃねえんだぞ!!」

「分かってます、でも感覚が少しずつ分かって来てるんです……あと一回だけお願いします!!」

「三回までは許可してやる、だが限界は絶対に超えるな」

「有難う御座います!!」

 

嬉しそうな顔をしながらもスズカは再びコーナー前の直線へと入っていく。その隣にはドーベルとエアグルーヴが並んでいる、共に駆け出していく中でスズカは二人に強い圧を受ける。まるで内ラチに擦りつけられるかのような圧を受けながらも残った約30㎝のラチギリギリを疾走する中でスズカの脚捌きは少しずつ変わっていっている。

 

「無理に、流れに逆らわずに、芝を読むっ……!!」

 

スズカの足が滑る、だがそれは不意に足を滑らせている訳ではない。滑った筈なのに確りと蹄鉄は芝をグリップし続けている、そのまま次の一歩を踏み出して内ラチギリギリを疾駆する。が、その途中でスズカはそれをストップして普通の脚捌きに変えた。そのままコーナーを抜けると不満げな顔をした。

 

「やっぱりまだまだ無理……あのままだと多分バランスを崩しちゃう」

「いやいやいやでも凄かったよ、というか内ラチに強すぎない?」

「ああ、ランページさんとは違うがお前は何であそこまで強くなれるんだ。私たちも少しは詰められるようになったと思うんだが」

「荷重移動の練習をしてるからよ、でもまだまだ……デビューまでに完成させられるかしら……今夜もお願いしてみようかな」

 

何やらとんでもない事にトライしようとしているスズカ、だがランページは把握済み。だから無茶だけはするなと止めている。そう思っているとタイキに連れられたサニーがやって来た。

 

「ただいまデース!!」

「応お帰り、如何だった結果は」

「……はぁっネメシスに勝利への道は遠いなぁ……」

 

最近よくやっているプレアデスとの練習レース、こちらとしては実践レース形式で経験を積めるしネメシスとしては交流会且つ自分へのアピールなどなどの意味もあるので意欲的に取り組んでくれている。そしてサニーは課題である幻惑逃げで勝利する事を目指しているのだが中々に難しいようだ。

 

「と言っても、お前さんはまだ中等部の1年だ。焦る必要はないだろう」

「まあそれは分かってるんですけど、同じ1年相手だと如何しても勝ちたいなぁって思えちゃって」

「向上心があって結構、タイキは如何だった?」

「私は勝ちました!!」

「相方がこんな感じなんで」

 

サニーに着いていく形で頻繁にネメシスにも顔を出しているタイキの方は快勝だった模様。同学年にも勝っている一方で2年ともいい勝負をするのでサンデーからも指名を受けているのは聞いている、この辺りは申し訳ないがウマ娘としてのスペックの差としか言いようがないかもしれない。

 

「まあ気長にやっていこう、別に俺だって今年中に勝てと言ってる訳じゃねえし勝ったからって次に進ませるわけじゃないから」

「えっそうなんですか!?」

「今は基礎段階だ、基礎を確り固められてから次に進むんだよ」

「焦ってたのかなぁ~……よし、タイキ走れる?」

「No problem!!」

 

最初こそ落ち込んでいたが直ぐに元気になって再び走りだしていくサニーとそれに続いていくタイキ、この二人は中々に相性がいいと思う。そんな様子を見つつもランページは身体を伸ばし始めた。

 

「さぁてと……そろそろ俺も走るか、マヤヤ調子見てやるよ」

「えっランページさんと走っていいの!?」

「俺もレジェンドレースに向けてある程度は走らないといけないからな」

「そういえばマヤ、思ったんだけどランページさんってどっち走ってどの距離なの?」

 

シンプルに思われたのは芝なのかダートなのか、そして距離。まあ何方でも構わないのだが、距離としては中距離想定。ダートなのか芝なのかはまだ未定だ。自分としては何方で走っても悪くはないと思っている。

 

「さてな、走りで確かめてみるか?」

「わ~いやるやる~!!」

 

エリザベス女王杯が終わってからもマヤとはこういう距離感が続いてる、姉と妹と言われれば良いかもしれないがトレーナー陣からは母と娘にしか見えないと言われて複雑な気分になっている。

 

「そんな老けてっかなぁ……」

「?」

 

ランページが複雑な気分を抱いているのは決してそれだけではない。無意識的ではあるが、それに気づいているのである―――

 

「……ママみを感じさせるランページさん……あっ鼻血が」

 

どこぞのウマ娘からのラブコールに。




メジロブルボン 牝馬

メジロランページの6年目の産駒。父は坂路の申し子ミホノブルボン。
名前の由来は父、ミホノブルボンから。

兎に角頑丈な事が取柄で販路を数本やっても元気にそうにするので調教師がどれだけやらせていいのか分からないと困る程に頑丈だった。その一方でライバルに恵まれすぎているせいか、中々G1勝利に恵まれなかった。故にシルバーコレクターと言われ続けたが、ラストランとなった高松宮記念で見事にG1制覇を果たした。彼女を一言で言えば二代目イクノディクタス、渾名は不屈のサイボーグ。

鞍上はミホノブルボンに騎乗していた小嶋 真弘(こじま さだひろ)騎手。好奇心旺盛だが、大人しいな性格だったと述べている。
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