貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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348話

「今日は宜しって如何したのなんかふらふらしてるけど!!?」

「いえ……ただ、この世の真理を垣間見れたんです……ありがたやありがたや……」

「えっ何これ、マックイーンこれって係員さんにいった方がいいの?」

 

間もなくゲートインという所、前年度覇者としてフローラに挨拶をしようとしたテイオーは妙にふらふらしているというか、浮遊感が生まれているフローラの事が心配になってきた。何かあったのだろうかと不安になる中でイクノが優しくテイオーの肩を叩く。

 

「心配なさらずとも大丈夫です、多分ランページさんが手を振ってくれたとかそんなのでハイになってるだけだと思います」

「えっハイってこういう状態だっけ。どっちかと言ったらヘヴン状態って言われた方が納得するんだけどボク」

「あ~まあフローラってこういう状態に良くなるらしいもんね、ランが愚痴ってたよ」

 

不安になる一方でネイチャがやれやれと言わんばかりに肩を竦めながら肯定した。

 

「なんていうだろうね、オブラートに言えばフローラってランの一番のファンでライバルな訳でファン的な気持ちがよく爆発するんだって。それでラン的にはうざったいっていうのが真っ先に出るからあしらってるんだって。テイオーが会長さんにあしらわれるみたいなもんだよ」

「えっボクって他の人からこんな感じに見られてるの……?」

「流石にこれほどではないけど同類だと思う」

「……マックイーン、礼儀作法って教えて貰える?」

「お望みならお教えしますが……淑女口調のテイオー、違和感が凄いですわ」

「どういう事なのさぁぁ!!?」

 

何処かほんわかとしつつ和やかな雰囲気に包まれている日本勢に海外勢は何処か理解出来なさそうな顔をしていた。海外ではチームを組んで一人を勝たせる戦術はある、本当の意味でチームの為の勝利を目指す考え方。今回ジャパンカップにはカノープスから多くのウマ娘が来ている、それを狙っての事―――だと思ったのだが余りにも空気が緩いのである。

 

「でも、ターボさんエリザベス女王杯であんなに走ったのに大丈夫なの?」

「モーマンタイ!!トレーナーのお墨付き貰ってるから大丈夫、ランにお願いしてメジロの療養所使わせて貰ったの!!それと……注射、打って貰ったの……」

「そこまでしたんですの!?ツインターボさん、尊敬しますわ」

「師匠注射打ったの!?」

「ターボ凄いじゃん!」

「先輩そこまでしてこのレースに、感動だぁぁぁぁ!!」

 

本来ターボは疲労から出れる訳がないのだが、メジロの療養所活用で疲労を抜いていたターボだがそれでも間に合いそうになかったのでトレーナーが条件を出した。それは使用許可も確りと出ている疲労回復効果のあるビタミン注射である。が、ウマ娘というのはたとえ成人していたとしても注射を酷く嫌がる、理性ではなく本能的な忌避感が強く、幾ら疲労回復の為とは言え注射を打つなんて絶対に嫌だと首を横に振る。子供のウマ娘の予防接種会場は修羅場になるのもこのため。

 

「多分それさぁトレーナーさんなりに出走を諦めて貰おうとしてたんじゃない?エリザベス女王杯からジャパンカップなんてそれこそイクノやラン位じゃないと成立しないローテなんだからさ」

「ターボもそう聞いた、でもターボ出たかったから……頑張って受けた」

 

そこまでしてレースに出たいならばしょうがないと南坂もため息交じりに認めて、療養所の皆さんにも疲労回復のフルコースをお願いした結果としてターボは出走許可を出せるレベルにまで回復したのであった。

 

「ジャパンカップを取ってG1連勝するぞ~!!」

「おっと師匠、ボクの連覇は譲らないよ!!」

「私も勝利を譲る気はありませんわ、メジロ四天王の名に懸けて」

「おっとそう言う事言われちゃったらアタシだってカノープスのダービーウマ娘として引き下がれないねぇ」

「それはあたしも同じです!!うおおおおっ今年のダービーウマ娘の力を見せるぞぉぉ!!!」

「ライスも、お姉様の前で負けたくない!」

「私だって今日こそ初のG1勝利掲げちゃうんだから!!」

「私もです。ランページさんと同じ舞台を制してみせましょう」

 

だが、先程までの空気が一変した。和やかなのは見た目だけだ、そこには全員が勝利を唯目指している冷たく鋭い空気があった。結託している者などいない、それぞれが勝利をリスペクトして対戦相手全員と真剣に向き合って勝とうとしている姿が見て取れた。誰かを勝たせる気概はなく全員が等しく―――勝利を渇望している。

 

「……」

「エルグッツ、どうした」

 

それを見つめていたエルグッツにオルタが声をかけた。

 

「私は二度、この国に来た。ハッキリ言ってこの国のレースは未成熟なところがある、相手に何かをするんじゃなくて自分を伸ばす方向性が強い。正々堂々って言えば聞こえはいいかもしれないけどそれは恐れもあるって思うの」

「それは日本人の気風と言えるだろうな」

 

元々オルタナティブセブンはシンボリ家のウマ娘だった。そんな彼女からすればエルグッツの指摘は理解に難くはない、日本はウマ娘のレースに何処か神聖視しているというか正々堂々、スポーツマンシップに満ちるべきだという考え方がある。故にデバフはマイナーでしかない、そんな考えが海外戦線での戦いを辛くしている要因の一つとも言われている―――が

 

「だけど未成熟である筈なのに、それこそがこの国の強み何だって事が良かったわ。あの人が強かったのもこういう事なのかしらね」

「否定しませんよ」

 

自分の言葉に答えたのはいつの間にかトリップから帰ってきたフローラだった。

 

「私たちはそんなレースを愛している、そんなレースが世界の頂点を取ったのも事実。私もあの人の強さに惚れた、そして私はあの人の前に貴方に勝つ、凱旋門ウマ娘の貴方にね」

「―――いい度胸ね、海外G1に進めていない貴方が私に勝てると思ってるの?」

「勝つわ、それがレースでしょ」

 

短く、それだけを伝えてフローラは緩んでいた顔を正して前を向いた。そんな姿を見送ったオルタはその背中に影を見た、あの影は―――メジロランページと同じものを纏っていた。このレースは何が起きるのか全く分からない、気を抜く事は出来ない……全力で行かなければ。

 

「このレースは私にとっても重要な意味がある、エルグッツ貴方だろうと私は蹴散らしていくつもりだ」

「やれやれこれじゃあ私が日和見みたいじゃない……いいわ、この国に見せてやろうじゃない。凱旋門ウマ娘の実力ってものを」




メジロストレート 牡馬

メジロランページの9年目の産駒。父はサクラバクシンオー。
名前の由来は驀進、直進からの連想。

最強スプリンターたるサクラバクシンオーの子故か優れた瞬発力を持ちながらも母から頑丈さを受け継いだためかスタミナもある高速ステイヤー―――ではあるのだが、短距離から長距離まで走るスピードとスタミナがある。高松宮記念を取っていることからスプリンターと思われるが、ダイヤモンドステークスも制している、その為メジロの中でも最も適正距離が分からない競走馬となった。

鞍上は児島 布戸氏(こじま ふとし)騎手。気性が荒い方だと思われているが、少し神経質なだけでさみしがり屋とコメントしている。
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