貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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活動報告に新しいお知らせを掲載いたしました。

ご興味があるから下記のURLからどうぞ。

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=305557&uid=11127


352話

「はい用意出来ましたよ、すいません遅くなっちまって」

「気にしてへんで、この大喰らいの腹が大人しくせなんだせいで逆に急かしたみたいでごめんな」

「寧ろ謝るのはこっちっすよ、プレアデスの練習に付き合った貰った上にサンデーさんがちょっかい掛けたせいなんですから。姉さんもごめんなさいね」

「気にしないでください。寧ろ久しぶりに頼られて嬉しかったですから♪」

「ま、まだ、ダメか……!?」

「あっすいません、どうぞ」

「いただきます!!」

 

待てから解放された腹ペコの大型犬のごとく、食事に一気に齧り付いた。齧り付いたのは目の前に置かれていた肉の塊、普通なら分けるべきなのだが空腹の為かそのまま行ったのだが―――歯を立てた瞬間にホロリと肉は溶けるように裂けて口の中に納まった。その柔らかさに驚愕しつつも肉から染み出す脂の甘さと濃厚なタレと肉の旨味、そして食欲を掻き立てるフライにされていたニンニクのチップが口の中で混ざり合う。その味に思わず、天を仰ぎながら旨い、と一言だけ呟くと我慢出来ないと丼で出されていた米をかっ込んだ。

 

「ふふぁい!!ふぁ、ふぁんふぇふぉふふぃいんだ!!」

「いきなりがっつきすぎやオグリ!?というかいきなりやりすぎや、ウチも狙っとったんやぞそれ!?」

「こっちに切り分けたのあるんで」

「ってあるんかい!!でもいただくでぇ!!」

「いただきぃ!!かぁっ~なんてうまいんだい、こりゃ米を我慢なんて出来ねぇ!!」

「ってぇ今度はお前かイナリぃ!!」

「まあまあ、まだありますからゆっくり食べましょ。オグリさんもちゃんと噛んでくださいね」

「わふぁっふぇる!!」

「口の中のモンちゃんと飲み込んでからしゃべらんかい!!」

 

ランページの自宅で行われている食事会、参加者はお世話になっている先輩方であるオグリ、タマ、クリーク、イナリの4人。自分のチームも含めて色々と助けて貰えたのでそのお礼なども含めて夕食をご馳走するになったのだが……サンデーが煽ったせいで突発的に発生したレジェンドレース(仮)のせいで時間がかなりズレこんでしまった。故にオグリなどはずっとお腹を鳴らしていた、繋ぎとしてニンジンの野菜スティックを出したが全て平らげられた上に全然足りなかったと来たものだから困ったものである。

 

「しっかし随分と用意したもんだね、下拵えだけでも大変だったんじゃないかい?」

「如何って事ねぇっすよ、偶にスズカとか泊まりに来てますし誰かの為にメシ作るのは慣れたもんです」

 

まあ今回はオグリの事もあったので大変だった面もある、主に買い出しが大変だった。商店街と親しくしていた影響か、買った品物は配達して貰えたのは思わぬ幸運だったと言わざるを得ない。

 

「此処に居る全員がレジェンドレースの中距離に出走する……漸くマジで走れるなぁランページィ」

 

獰猛な肉食獣のような表情を作りながらも漸く手に入れた角煮を食べるタマ、シングレ顔だったのに角煮を口に入れるとウマッ!!?とプリティ顔になった。変化の激しい事だ。思えば、タマとはトレセン学園の編入試験の時から親交があった。ある意味でトレセン学園では一番古株な付き合いがある。

 

「そうですね、練習とかではガンガンやってましたけどマジは初めてですね」

「ドリームトロフィーリーグに来ると思っとったのに、引退からのトレーナー、そうしてファイナルズにレジェンド開設」

「本当に凄い事ですよね~」

「あのマルゼンスキーやカツラギエースさんと走れるなんて、ウマ娘として滾らない話はないよなぁ!!」

「まっふぁはふふぁ」

「「ちゃんと噛めよ……」」

 

彼女らからすればレジェンドレースは本当に楽しみでしかない、別にルドルフ達との戦いが心が躍らないという訳ではない。だが世代的に離れていたり既に完全に引退してしまってガチのレースで戦えないレジェンドは数多く夢物語でしかなかったそれと本気でぶつかり合えるなんて心からの喜びが沸き上がるのである。

 

「俺は結構気が重いっすよ、永世三強とかに加えて皇帝まで来るからなぁ……」

「ハァッ!?皇帝ってルドルフの奴、ドリームトロフィーリーグに出るんちゃうんか!?」

 

思わずタマが大声を上げてしまった、確かにレジェンドレースに出たいと言っていたのは知っている。だが自分までそちらに行ってしまうと本格的にURAの立つ瀬がなくなるという事で自重した。その代わりにサンデーとのレースをよくセッティングしているとも言えるのだが……。

 

「あ~その皇帝じゃねぇっす」

「(ごっくん……)では、どの皇帝なんだ?」

「TTGの世代でダービーウマ娘って誰か分かります?」

「トウショウボーイさんにテンポイントさん、グリーングラスさんの世代のダービーウマ娘となると確か……」

「ああっそうか、あの人かい!!」

 

TTGの三強世代、だがその馬を加えてTTGCと呼ぶこともある。その名もクライムカイザー。TTGの三強世代に果敢に挑んだ皇帝、ダービーでは鞍上の加賀 武見騎手がトウショウボーイは馬体を併せられると怯むという弱点を見抜き、トウショウボーイの進路を塞ぐような斜行ギリギリの移動攻撃を行って体勢を崩させた事でダービー勝利を勝ち取った。この強引な騎乗故か、クライムカイザーは一部ファンから犯罪皇帝*1と呼ばれてヒール扱いを受けてしまう訳だが、そんな扱いを受けながらも安定した戦績と人気を誇った皇帝だった。

 

「そっちの皇帝だったのか」

「犯罪皇帝なんて酷い名前つけられちゃぁいるが、あの人の移動攻撃はマジで見事なもんだよ。資料で見た時は目を丸くしたもんさ」

「ええ、あれほどまでに好位置を維持したり奪取する技術は見た事がありません」

「トレーナーが言っとったなぁ……ルールに準拠して反則でなければそれは戦術として正しい形、作戦は相手に苦手を押し付けるものだから当然って」

「俺もあれが卑怯だとは思いませんよ。寧ろ、相手に適した戦法を使う強敵だと思いました」

 

ウマ娘のクライムカイザーもダービーウマ娘となった際にバッシングを受けたのだが、彼女とそのトレーナーは強かった。

 

『誉め言葉として受け取っておこう。何を言われた所でこの勝利は揺るがない、ルールを確りと守ったし運営側もそれを認めた。作戦とは如何に相手の苦手を押し付けるかだ、それを非難するという事はスポーツにおける全ての作戦を非難するという事だ、理解してるか?』

『本当に強者であるならばどんな障害があったとしても跳ね除けるか、それでも勝つだろう。今回は間違いなく俺のカイザーが彼女らを上回っただけ、ただそれだけの事だ』

 

余りにも堂々とした二人にバッシングは起こらなかった、それどころか肝心のトウショウボーイがあれは向こうの作戦勝ちである事を認めた上で弱点を突いてくれた事への感謝を述べた事で世間は何も言えなくなっていった。

 

「登極皇帝までも来るってのかい……こりゃますます楽しみになってくるねぇ!!」

「上等やないか、オグリクリークイナリ!!明日からガチで鍛えるで、絶対にレジェンドレースで勝ったるで!!」

「フフフッ皆で競った時を思い出しますね」

「ああっ私も負けるつもりはない……!!

 

和やかな食事会はいつの間にかレジェンドレースに向けての決起集会のようなことになっていった。と言っても結局用意した食事は全て平らげられた訳だが……。

*1
クライムカイザーのクライムは上り詰める(Climb)であって犯罪(Crime)ではない。




メジロクリスタル 牡馬

メジロランページの13年目の産駒。父は漆黒の帝王シンボリクリスエス。
名前の由来は艶のある黒い馬体からクリスタルにした。

良くも悪くも両親の素質を受け継いでおり、晩成型の競走馬だった。皐月ダービーでは3着と善戦こそすれどあと一歩足りない印象だった。父であるクリスエスもそうだったためか、秋まで待って見る事にした結果―――菊花賞ではなんと9馬身差で勝利、有馬では同着の2着と長距離での才能が開花。その後、メルボルンカップを制覇するなどメジロの馬としてこれ以上才覚を持った結晶ステイヤーとして名を馳せる。

鞍上は園部 裕雄騎手。気高くありながらも親しみ易さのある、一緒にいて和む馬だった。そしてルドルフに負けない位に良い馬だったと彼を誉めていた。
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