チャンピオンズカップを制したのはアメイジングダイナ、あれだけの海外勢を相手に堂々な勝利を見せた。これについては海外勢も素直に負けを認めるしかなく、彼女の勝利を祝福したのであった。勿論ランページもそれは同じだった。
「おめでとさんダイナ、よっくもまあこいつら相手に勝ったもんだな」
「なんかいまだに信じられませんよ、あたしが勝ったんだって……なんか夢でも見てるみたいな」
「信じられない、じゃあこうしようか。皆さん、このダイナは余りにも偉大な勝利に実感が持てないそうです、あんな嬉しそうな声出したくせに!!」
「ちょっ!!?」
「というわけで、此処でいっちょ盛大なダイナコールと行きましょう!!3、2、1はいっ!!」
音頭を取るかのように、あっという間にその場の空気を掌握してみせたランページは再び盛大なダイナコールを巻き起こした。そのダイナコールには共に走ったライバルたちも参加していた。悔しい事は悔しいが、祝うべきを祝えないで何が競争ウマ娘か、と言わんばかりの正々堂々な心持のままダイナコールを捧げる。それに次第に破顔していったダイナは高らかに叫んだ。
「うおおおおおおっ!!!私は来年、もう一度海外に行く!!そして、今度も勝ってみせる!!私だって、もう立派なG1ウマ娘なんだ!!日本を代表するようなダートウマ娘になってやるぅぅぅ!!!」
決意表明、挑戦宣言に会場から莫大なエールが沸き上がった。それに続くようにレディが
「私とてその気持ちは同じ!!そして宣言しましょう、来年のBCクラシックで今度こそ私は栄冠を手に入れて見せる!!!私こそがメジロランページのダートライバルだという事を証明してみせます!!!」
それに釣られるように
「いい度胸じゃねえかこの野郎!!いいか、今回は負けたが次は負けねぇぞっ!!ぜってぇに来い、来なかったらただじゃ置かねぇからな!!!」
アルメコアが叫んだ。実際彼女は自らの切り札を進化してみせた。その進化も急激な物だった故に調整が足りなかった、万全な状態にまで持っていくことが出来たら間違いなく世界最高峰の一角になる事だろう。そんな彼女たちの叫びを見ながらも自分の道を考えるもの、只管に笑顔な者、素直に勝利を祝いながら自分の事を思う者……様々な者がいる中でチャンピオンズカップは、文字通りの王者を決定して終幕となった。
「ランページさん、私、迷ってイマス!!」
「いきなり何ね藪からスティックに」
プレアデスの練習中、タイキが突然そんな事を言い出してきた。人生相談かと思ったのだが、タイキの場合はなんというか意外と軽そうな物だと思っていたが
「私、ダートも走ってみたいデース!!」
如何やら芝かダート云々という事だった。
「まあまだデビュー前な訳だし、そういう練習メニューを組むのもありだがどったのよ」
「私、チャンピオンズカップ見ました。感動しました!!」
「あ~そういう事か」
タイキには芝だけではなくダートにも高い適正がある。史実でもダートを走ったりもしていたし、何だったら重賞も勝っていたりする。が今回ばかりは何方かと言えばチャンピオンズカップに触発されたと言ってもいい部類の物だった。
「お前さんはダートの適性もあるからな、そっちも伸ばす方向で行くか。俺みたいな二刀流って事になるけど」
「YES!!ダブルソードスタイル、COOL!!」
「んじゃまあ分かった、そういう方向性でメニュー組んでやるよ」
「有難う御座います~!!」
そう言って勢い良く抱き着いてくるタイキ、喜びを表す仕草として最近は凄い勢いで抱き着いてくるようになってきた。うむっ役得だ。と思っていると足に誰かが抱き着いてきた。そちらを見てみるとマヤだった。
「なんかタイキちゃんが抱き着いてるからマヤも抱き着いてみた~♪」
「Oh!!マヤ先輩も、レッツ・ハグ☆」
「レッツ・ハグ~♪」
「うわっは~俺ってば大人気ね~」
なんというか、前の母親役の影響もあってか抱き着かれると落ち着くようになってきてしまった。母性が少しずつ発現してきたという事なのだろうか……まあそれはそれでこの先結婚した時に役立つだろうなと思っていると何やらジト目のスズカにエアグルーヴ、そしてドーベルが此方を見ている。
「どったの三人、お前らも来る?」
「そ、そうじゃないです!?」
「メニューを終えたので次の指示を聞こうと思ったんですが……その、お邪魔でしたか?」
「何痴情の縺れ目撃しましたみてぇな事言ってんだ、ただのスキンシップだスキンシップ」
「でもそれがフローラさんだったら……」
「殴って蹴ってドラム缶に詰めて海に流す」
「「「容赦がない……」」」
そもそもフローラが抱き着こうとする時点で自分は抵抗する、自分とあれの関係はそれでいいと思っている。取り合えず三人の視線が痛いので二人には好い加減にさせないと、二人の頭をやさしく叩く。その時のランページの顔はまるで慈悲深い母のようなものだったので思わず三人は見惚れた。
「ほらっ二人とも、練習再開」
「「は~い♪」」
仲良しは二人は同時に離れながらも手を上げて応えた。返事は良いのだからと思いながらも頭を撫でながらメニューを伝えておく。そして三人にもそれを行おうとするのだが上水流が駆け寄ってきた。
「ランページ、電話来たよ」
「電話って部室の固定の奴?」
「ビックリしたよ……だってあのメジロ家のお婆様だよ、心臓止まるかと思ったよ」
「御婆様!?」
その言葉に一番強く反応したのはドーベルだった。お婆様が一体何の用事なのだろうか、自分は何かマズい事をしたのだろうかと……顔を青くするがランページは軽く頭を撫でて落ち着かせながらも言う。
「って事は用は俺だな、悪いな取って貰って。折り返せばいいか?」
「いや保留にしてあるから部室ので話せるよ」
「分かった、んじゃ上ちゃん悪いけど此処少し任せるぜ」
「分かった」
最近はランページのやり方にも大分適応出来てきている上水流トレーナー、新人トレーナーとは思えない程に肝も据わり始めてランページをよく思わない先輩トレーナーから腰巾着扱いされたが
「彼女の腰巾着ですか、それじゃあ先輩はそれ以下ですね。腰巾着にこんな事するんですから、おっとすいません。小生は世界最速最強のお供の仕事がありますので」
とサラリと受け流した上に煽り返せるぐらいにはなり始めている。沖野や東条からはランページみたいになったな、と少し苦い顔をされる。
「ドーベルのお婆様、メジロアサマさんか。ランページさんに何の用があるのだろうか」
「さあ……お婆様とお姉様は特に仲がいいし何をしても可笑しくはないと思うんだけど……」
「遅くなりました」
『いいえ、携帯にかけても良かったのですが一応ね』
「ええっそれで?」
『会場の確保やらは終わりました、その他の準備はOKですから安心なさい』
「すいませんなんか世話掛けちゃって……」
『可愛い孫の為ですもの、この位させて頂戴な―――それじゃあ頑張ってね、URAファイナルズ&レジェンドレース記念パーティ』
繁殖牝馬引退後のメジロランページ。
繁殖牝馬引退後は離乳した当歳馬たちの群れを率いるリードホースを務める事になる。他にも育児放棄を受けてしまった子供たちの母親代わりも務め、時折、子供たちを連れて走る姿を見せており、走り方を教えるような様子からランページ教室と言われるようになる。
休みなく子供を産み続けたとは思えぬ程に身体が確りしており、見学に来た人達からは驚かれる。偶に自分の身体を鍛え直すかのような走りをするので見学時にそれを見れたら幸せになれるとも言われる。