貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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370話

「おはこんハロチャオ~!!貴方の記憶にワールドレコード、独裁暴君、無敗のティアラ!!Running in the turf!! Running in the dirt!!なランページだぜい!!皆の者~善行積んでたか~?こんな感じだったっけ?」

「うわぁっ凄い凄い、あの時と一緒だぁ……サ、サインもお願いします!!」

「喜んで、ファンサービスは私のモットーですから」

 

リクエストされた挨拶をするとサイン色紙を出された、それに喜んでサインをする。有名人の矜持として何時サインを求められても良い様にサインペンは常備している、まあ外に出る時は基本変装するので求められる機会も限られるのがランページなのだが……サインを書きながらも此方を憧れの視線を向けてくるウマ娘について思いを巡らせる。まさかこんなタイミングで邂逅するなんて思いもしなかった。

 

「これでいいかな。ついでだ、一緒に記念撮影でもしようか」

「是非お願いします!!あ、あのウマッターのイカよろしく~ポーズでお願いします!!」

「渋い所ついて来るわね貴方」

 

まさか初挑戦後の奴から引っ張って来られるとは思いもしなかった、このウマ娘、ライトハローかなり出来る!!と思うが当たり前だった。

 

ライトハロー。アプリのシナリオ「つなげ、照らせ、ひかれ。私たちのグランドライブ」にオリジナルウマ娘として登場した現役ではない引退済みの社会人ウマ娘。シナリオの中核的な役割を務めて、ウマ娘には欠かせない要素であるライブを大きく押し出したシナリオに関係した―――が、如何やら今の彼女はその時よりも若いらしく現在大学生との事。そして自分の大ファンらしい。

 

「んんっ!!!ライトハロー、満足したかね」

「す、すいません秋川理事長、私テンション上がってもうどうしたら分かんなくなっちゃって一ファンとしている事しか出来なくなってて……!!」

「まあだとしたら俺は俺で望まれる対応を取るだけなんだけどね、ンでサインと写真欲しくて態々理事長に頼んで、って訳でもないんでしょ。俺としてはまあ気分転換にはなったから良いけど」

「い、いえさすがにそんな事は!!」

 

そうである事も願っていた、流石にこれだけの為に時間を取るというのはランページ的には許容出来ない。と言っても裏でまた愚痴を増やすだけでしかないのだが……それをファンの前で漏らすほど自分は野暮ではない。ライトハローはソファに座り直しながら深呼吸をして気持ちを落ち着ける。

 

「え、えっとその……メジロランページさんは世界各国を回ってレースに出てその全てに勝ってきましたよね」

「まあね。生涯無敗は伊達ではないって訳」

「それは同時に世界各国のウマ娘とも交流を深め、各国のウイニングライブにも触れる機会があったという事でもありますよね?」

「そりゃまあね、ドバイじゃそれぞれの特色を出して歌って踊ったりした結果、首長陛下が突撃して大騒ぎになったからな。その時の配信だってアーカイブに残してあるはずだぜ」

「はい何度も何度も見直してます」

 

その言い方からしても如何やら現在進行形で見直し続けているという事になる、ランページの配信はそういった意味でも極めて貴重な情報源にもなっていたりするのである。

 

「実は、私は……グランドライブ、というものを企画してるんです」

「グランドライブ?」

「私の方から説明しよう!!」

 

説明ッ!!いつもながらその扇子の文字はどうして変わるのだろうと思うが、とにかく説明して貰う事にした。そもそもウマ娘のライブとは応援してくれるファンへの感謝を示すもので当初は全員が主役と言ってもいい物だった。だが、レース後の疲労や体力、全員主役というのは中々に難しくなっていき、その中で様々な修正などが行われていった結果として現在のレースで勝利したウマ娘がセンターを飾るウイニングライブとなった。

 

「詰まる所、そのグランドライブってのはウイニングライブのプロトタイプって認識で良いんですか?」

「はい、その認識で合っています。確かに今のウイニングライブは華やかです、勝者が勝ち取る事が出来た栄光としてそこに憧れてモチベーションにしている子も多いのは分かっています。でも……それは本当に感謝を伝えられているんでしょうか」

 

ライトハローの言いたいところはそこだった。元々は感謝を伝える為のライブだった、それが勝利がなければ感謝を伝えることが出来ないものへと変わっていた事がどうしようもない違和感だった。勝てなかったものには感謝を伝える意味はないというのだろうか、本当にライブの意義はそれでいいのか、ウマ娘としてはそれは確かに思う所だ、常に絶対的な勝者だったランページに突き付けられたそれは鋭く感じられた。

 

「成程ね……それで、俺にグランドライブに協力してほしいと」

「……私はこの想いを友人や知人に話しましたが、無理だとか今の方が良いという意見ばかりで……私だけの力では無理なんです、ですから最もG1の舞台で勝ってセンターに立ち続けたランページさんに力を貸してほしいんです!!」

 

彼女の顔を見て、正直この展開は予想は出来ていた。シナリオでもトレセン学園やURAの協力を得られずに実現は難航していたのだから、だがここでは自分がいる。URAファイナルズやレジェンドレースを成立させてしまっているメジロランページが。計画に自分が賛同したと分かれば事態は一気に好転して実現は夢ではなく現実の物へと変わっていくだろう。

 

「断る」

「えっ……!?」

 

ランページの率直且つ直線的な言葉にライトハローは言葉を失った、彼女は秋川理事長にこの事を話した時に彼女ならば力になってくれるだろうと太鼓判を押してくれたのだ。その驚きは同じなのか、理事長も言葉を失い、たづなも意外そうな顔をした。

 

「俺を利用しようって魂胆は気に入った、素直に相談しに来た事もいいだろう、だがそれだけじゃだめだ。仮に俺が計画に賛同してグランドライブが実現したとして、それはお前の夢見たグランドライブではない筈だ、何故ならば俺の力で成り立たせたグランドライブだからだ」

 

言葉が詰まった、確かにそうだ。だけど、それでも自分はグランドライブを実現したい、その思いを胸にして一歩前に出る。

 

「例えそうなったとしても構いません、私はっグランドライブを実現させたいんです!!」

「だったら自分の力でさせればいい、ライトハローさん貴方の力でな」

「それが出来れば……」

 

自分は一回の大学生に過ぎない、そんな自分にそれだけの事を成し遂げられる人脈もなければ力もない。出来る訳がない……

 

「だからだ、実績を作ろう。来年からもURAファイナルズやレジェンドレースは開催される、そこでもライブはやる予定だからな。そのライブの企画チームを正式に立ち上げようと思ってるんだけど……如何かな、参加してみる気は」

「わ、私がURAファイナルズ、レジェンドレースのライブの企画チームに……?」

「俺だってこの二つを成立させる為って訳じゃないが実現させるだけの実績があった、ないなら作ればいい。簡単な事だ、初年度のライブは豪華な顔ぶれのウイニングライブと変わりないかもしれないが……次年度からは変える事は出来る、違うか?」

 

ウィンクしながら微笑むランページに先程までの絶望を前にした顔は一転し、歓喜に染まった顔へと変わった。

 

「是非やらせてください!!まだまだ勉強中の身ですけど、いえ勉強中だからこそもっともっと勉強しないといけないんです!!」

「その意気や良し!!ってな、悪かったな意地の悪い事言って。まあ試されたと思ってくれや」

 

秋川は思わず胸を撫で下ろしてしまった。あれだけランページならば絶対に力になってくれると大見得を切ったのにこれではカッコが付かなかったところだ。そんな自分を見てたづなが笑う。

 

「力を貸す、確かにその通りでしたね。協力するのではなく道を整えて自分で歩かせる、方向ですけど」

「然り。自分の力で道を歩く、それこそが大事だと分かっているから故だろうな」

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