ランページが学園で色んな文句を吐き出したりライトハローと会ったりしている間、中山レース場では年末の一大レースである有馬記念が行われている。今年の有馬も白熱を極めている、ほぼ全員がG1経験があるかG1を何時取っても可笑しくない面子ばかりで固められている。そんなレースが盛り上がらない訳がない、
『さあ一週目のホームストレッチ!!先頭を行きますは矢張りツインターボ、ツインターボが先頭を譲りません。2番手にはメルボルンカップの覇者メジロパーマー、二冠ウマ娘ミホノブルボンが行きます。この二人がペースを作りますが矢張りというべきか最早お馴染みの超ハイペースです!!メジロランページのワールドレコードを更新してやると言わんばかりの熱意がひしひしと伝わってくるような凄まじさであります!!』
「ターボ全開ぃ~!!!」
「いやぁ、凄いなターボ、こんなペースなのに……だけどあたしだって負けないからぁ!!」
「まだ許容範囲内です」
先頭を取る三人の内二人のウマ娘、ターボとパーマーと言う日本ウマ娘を代表すると言ってもいい大逃げウマ娘二人。目指すは矢張り制覇、そしてワールドレコードの更新。常に自分たちの先を走り続けていたあの背中はずっと目に焼き続けている。ブルボンにとってもその背中は見えている、何故ならばあの人は自分にとっても目標なのだから。
『そこから3バ身程離れてイクノディクタス、メジロマックイーン、ライスシャワー、トウカイテイオー、ビワハヤヒデが一塊。マチカネタンホイザ、ナイスネイチャ、ウイニングチケット、エルカーサリバー、ナリタタイシンと行きますが今第二コーナーへと行きますが、ツインターボがどんどん飛ばしていくがこの中山でターボエンジンは持つのでしょうか!?』
全力で燃やし続ける己の体力、くべる手は絶対に休めないし脚も止めない。止めたら自分が自分ではなくなると主張するかのようなターボの走りは誰もを魅了するしその必死に走る姿は誰かに力を与えている。実際、出走しているメンバーの中でも屈指の人気を誇るのはターボ、それこそ無敗の三冠ウマ娘として名を馳せるテイオーやマックイーンにライスと言った大人気ウマ娘にも負けるどころか追い越すような大人気がある。
「ターボ、全開ぃぃぃっ~!!!」
『ここで更にターボエンジンが更に燃焼開始!!まだ先が長いが此処でツインターボが更なる逃げ切りを狙う、速過ぎないか、それでも逃げ切れる自信があるのか!!?私情を言ってしまいますが私はそんなターボが好きです!!!』
『実況は公平に……でも、私もターボは好きだぁ!!』
実況の赤坂はランページとの奪い合いで吹っ切れたのか、実況とは別に私情を語る事も増えて来た。だがそれはレースを見に来ている全てのファンの総括のような意見にもなっている所があるので許されている。実際ターボを嫌う者はいない。そして同時にターボを警戒していないウマ娘もいない。
『さあターボエンジンに導かれるこの超ハイペースですが、しかし後方も全く離されない!!最後方のナリタタイシンまでの距離は10バ身程でしょうか、全員が引っ張られるまま第3コーナーへと入ってきた!!っとここでビワハヤヒデ!!ビワハヤヒデが仕掛けた、前に出るぞ出るぞBNWの一角が仕掛け始めた、が此処でそれに呼応するように一斉に二強も上がってくる!!BNWが上がってくる!!果敢に、シニアウマ娘に戦いを仕掛けていくぞ!!今年のクラシックを盛り上げた三強が伸し上がってきた!!ナリタタイシンが一気に上位陣に喰い迫る、さあどうなる、間もなく第4コーナー!!』
「負けるもんかぁぁぁぁ!!!」
「まだ先はあるんだ、そこまで気張って持つのかチケット!」
「ハッ他人の心配するなんて余裕じゃんハヤヒデ!!」
「タイシンも、ね!!」
「私は負けん……私に続くブライアンに示す為に、尊敬する先輩の為にも!!」
「「「勝負っ!!!」」」
一斉に大地を蹴る。一斉にBNWが先頭集団へと上がっていく。未だにターボが守り続ける牙城、しかしそれも捉えるのも時間の問題。あんなペースで飛ばし続けていたら持たない筈だ、それを逃すわけにはいかないと上がっていく。そんな彼女たちを見てイクノは思わず笑う、次世代は着々と育っている。
『さあ第4コーナーを越えてここから一斉にっ―――来たぞ来たぞ来たぞ来たぞぉっ!!イクノディクタス、メジロマックイーン、ナイスネイチャ、マチカネタンホイザが一斉に牙をむいたぁ!!!クラシックからの挑戦者を迎え撃つ兵達が上がってくるぅ!!!ミホノブルボンも懸命にツインターボを追う、ツインターボ先頭!!だがメジロパーマーも伸びてくる!!大逃げの波は高いのか、ビワハヤヒデが懸命に上がってくる、今ビワハヤヒデが3番手!!矢張り最も強いウマ娘、菊花賞ウマ娘の意地を見せるか!?長距離は独壇場だと言わんばかり、ならば自分だと名優が来る!!名優がビワハヤヒデを抑えにかかる!!いやダービーウマ娘が競り合う!!ウイニングチケット、ナイスネイチャが激しく差し合う!!後方から一気にマチカネタンホイザが来る、ナリタタイシンを捉えるか!!?ツインターボ粘る粘る!!いやイクノディクタスが一気ぃ!!矢張りランページ世代の女傑が来るかぁ誰が勝つんだ!!?』
その叫びは最早総意だったに違いない。縺れ合うようなドッグファイト、優駿たちがお互いのプライドと実力をぶつけ合って目指す頂き。その先を誰もが目指す、誰もが等しく気高く飢えている、もう何処に注目したらいいのか分からなかった。先頭のターボか、それに挑戦する者たちなのか―――その時、それらを飛び越えるかのように、跳躍したそのウマ娘は一気に先頭にまで迫りあがった。
『とっ……トウカイテイオーがトウカイテイオーが来たぁ!!?トウカイテイオー大外から一気、トウカイテイオー強襲ぅ!!!無敗の三冠ウマ娘が上がってくるぅ!!ビワハヤヒデを、越えていく!!ミホノブルボン、メジロパーマー、イクノディクタスを抜いたトウカイテイオーツインターボと並んだぁ!!三冠ウマ娘同士の激突だぁ!!!』
「ボクがボクが勝つ!!これに勝って、ボクは海外に行く!!」
「ターボが、ターボが勝つ!!ランみたいに勝つんだぁ!!」
『残り100を切った!!勝つのはトリプルティアラか!!それともクラシック三冠か、ツインターボかトウカイテイオーか!!まだ決まらない!!ツインターボ、極限噴射で対抗!!トウカイテイオーもまだまだ伸びてくる!!いや後方からもメジロパーマーも伸びてきている、イクノディクタスも迫っている!!いやビワハヤヒデも食らいついてきているが如何だ、如何なんだ!!!?―――トウカイテイオー、トウカイテイオーが僅かに前に出れた!!そのまま、そのまま……ゴール!!!二着にツインターボ、三着にメジロパーマー、四着ビワハヤヒデに、五着にイクノディクタス!!有馬記念の錦を羽織って海外へと飛び立つのはトウカイテイオー!!!独裁暴君の後に続くのは不屈の帝王、トウカイテイオー!!!』
勝者の名は不屈の帝王、トウカイテイオー。無敗の三冠ウマ娘となった彼女は今度は世界へと戦いを挑む。偉大な暴君の後に続く王の一人として、彼女は空に向けて拳を振り上げた。帝王に相応しい威風堂々な姿だった。
「これで、ボクも自信が出来た……会長、見ててね。ボクは―――トウカイテイオーとして、世界の舞台で勝ってみせるから」
「テイオー!!」
「うわぁっ!!?」
そんな決意を吹き飛ばすような衝撃が襲って来た、思わず倒れ込んでしまうが、自分に抱き着いてきたターボを見て文句を言う気持ちを失せた。晴れやかな顔をしていたからだ。
「本当に悔しいぞターボ!でも、次は負けない、先に海外で勝つのはターボだもん!!」
「いやぁ……参った参った。あたしに勝ったんだからさ海外でもきっと大丈夫だよ」
「パーマー、有難う」
「本当に凄かったです、フフッ私もまだまだですね」
「ハヤヒデだって凄かったよ、ボク負けるかと思ったもん」
テイオーコールが響く中、テイオーは何処までも晴れやかな気持ちの中だった。次は世界、それに心を躍らせながら滝のような喜びの中で少しばかり空を見上げた。