貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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活動報告に新しいお知らせを掲載いたしました。

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375話

「ランページさんデュエットしましょう」

「断固拒否する」

「えっ~!!?」

 

フローラの自己アピールのインタビュー後、流れの確認も兼ねてライブを行う事にした。その時にデュエットを求められるが平然と拒絶するとコメントが笑いで溢れる。フラれてやんのwwwというのが大半である。まあ一緒に歌うというのは現役時代にやった事はあるが、デュエットの一点が破滅的に嫌なのである。

 

「世は歌につれ歌は世につれる、今年はもう直ぐ終わるからこそ新しい始まりにはピッタリかも、それではアグネスフローラに歌っていただきます」

「えっ何ですかそのノリ、歌合戦?」

「曲は彼女の2勝を飾る栄冠の記録というスペシャルレコード、Special Record!」

 

そんな訳でマイクをフローラに押し付けて自分は壇上から降りる、状況が呑み込めないフローラだがライトが切り替わって曲が流れ始めるとスイッチが切り替わったかのように歌い始める。この辺りは流石にリギルの一員というべき素質だ。それを利用して自分は休憩にさせてもらう事にしよう、パーティという事もあって各種、和洋中、様々な料理を山のように用意してあるので好きな料理を楽しめる。メジロ家のシェフチームとシンボリのシェフチームが合同で腕を振るって貰っているのでウマ娘だらけのこのパーティでも料理不足という事はない。

 

「っ!!タマ、この料理凄いぞ!!」

「どれどれってオグリィ……ウチの分ないやんけ……」

「ご心配なさらず、お代わりをご用意致しました」

「いやどっからその量の料理運んできたんや!?」

「企業秘密でございます、オグリ様もどうぞご存分に」

 

このように、超が付く程の大食感であるオグリがいたとしても対応が出来る程の手練れのシェフ軍団が寧ろ満腹で食べられないと言わせてやると厨房で張り切っている。

 

「にしても……」

 

ステージ上で踊るフローラ、そんな彼女を輝く瞳で見ているウマ娘もいる。自分に対するあれで忘れがちだが、フローラもフローラでジャパンカップを2勝している上に海外挑戦をしている日本を代表出来るほどのウマ娘の一角、彼女に憧れている者がいたとしても全く不思議はないしそれにふさわしいだけの活躍をしている……自分に対するあれがあれすぎるだけで。

 

「ああしてりゃ、後輩からも人望も人気も厚い頼もしい先輩って訳か……」

「ええ、リギルとしても助かる先輩よ」

「あれま、おハナさん」

 

壁に寄りかかるようにしながらステージを眺めていると隣に東条トレーナーがやってきた、その手にはカクテルがあるが自分にその一つが差し出される。匂いからしてノンアルコールカクテル、有難くそれを受け取る。

 

「なんだかんだであの子は優秀なのよ、リギルにはあの子以上に活躍している子がいるから目立ち難いだけで実際はあの子だって一つのチームの中核を十二分になせるぐらいには強い。なんなら私の代理だってこなせるぐらいわ」

「トレーナー志望でもしてるんですかあいつ」

「それは流石に知らないけど、数日の出張ぐらいなら私はあの子に任せられるから安心して行けるから助かってるわ」

 

そう思うとやはり優秀なのだな、という認識の正しさを得る。そもそもフローラはあのアグネスの家系、流石にメジロやシンボリと言った超有名家と比較してしまうと見劣りはしてしまうが十分すぎる程の良家。様々な意味でスペックが高くても可笑しくはない。

 

「意外と信頼してるんですね」

「これでもね、あの子は次世代のリギルのキャプテンを担えると思ってたのよ―――トリプルティアラを取ってね」

「あらまっ恨み言かしら」

「違うわ、これでも感謝してるのよ貴方の存在には」

 

ランページに敗北するまでのフローラに不満があった訳ではないが、彼女というライバルが出来てからは自分が想像していた以上にフローラは伸びた。矢張り精神的にライバルというのは必要なのだなという事を思い知らされた。フローラはそれからランページに固執するようになっていたが、それはそれで悪くはなかった。何せモチベーション方面は打倒ランページだったので気にする必要もなかったので楽と言えば楽だった。

 

「結局貴方打倒のメニューに苦心したけどね」

「やっぱり恨み言」

「違うって言ってるでしょ、感謝してるわ……心の底からね」

 

ルドルフを送り出したチームリギル、そんなチームの次なる躍進を誰もが期待した。と言ってもそんな連続して逸材が出て来る訳もない、出てきたとしても東条が育てられるわけでもない、そんな中訪れたオグリ世代、そしてランページ世代、リギルが送り出したフローラはリギルに相応しいウマ娘なのかという記事を何度見て腹を立てた事か……リギルはルドルフの才能に頼っていたなんてふざけた記事を見たルドルフを抑えるのも大変だった。リギル、不作と無敗の三冠ウマ娘の反動かなんて記事もあったか……

 

「でも、何故かしらね……フローラを育てていて一番楽しかったわね、絶対的な強さを持ったウマ娘を育てるのも大変だし寧ろ気を遣ったり苦労する事も多いわ。だけど……何が何でも貴方に勝ちたいってギラギラした闘志を燃やして前に進むあの子の手伝いをする事は心の底から充実していたわ」

 

何だかんだでフローラと共に打倒ランページを目指していたころはチームトレーナーになる前の自分を思い出すような日々で非常に楽しかった、一緒に顔を突き合わせて希望と現実を擦り合わせながら目標へと向かって行く時は本当に楽しかった。

 

「そう言ってる場合ですかね、あいつ次は凱旋門とか言ってるんですよ。おハナさんだってまだまだ苦労の日々は終わってねぇんですぜ」

「確かにね……私も私なりに努めていくつもりよ、あの子のトレーナーとしてね」

 

カクテルを一気に飲み干しながら自分に手を振りながらその場を離れながらも地方からやって来たトレーナーたちの相手をし始めた、自分がやろうとしていた事なんだが代わりに引き受けてくれるという事なのだろうか、それはそれで有難い限りだが……と思っていると今度はオグリがやって来た。

 

「ランページ今良いか?」

「うっす、大丈夫ですよ」

「私は今回、カサマツのオグリキャップとして走るんだ。だからろっぺいだけじゃないんだ」

「おって事はカサマツ時代のトレーナーもいるって事ですか」

「ああそうだ、ってあれ……さっきまで一緒に……」

「お~いこっちだこっち」

 

そんな声に惹かれてそちらを向けば、そこには慣れない高級スーツを着込んでいるからか少々居心地が悪そうな顔をしながらもゆっくりと向ってくる男性がいた。

 

「あんま急がないでくれよオグリ……このスーツ、レンタルで汚したくないんだよ……」

「大丈夫だろう、汚れても大丈夫だとランページが言ってたぞ」

「ああ大丈夫っすよ、何だったらそのまま着て帰ってもいいっすよ」

「いやそうは……ってオグリ、いるならちゃんと言ってくれよ……」

 

ランページの前に立つと彼は急に背筋を立てながらも咳払いをしてから自己紹介をした。

 

「は、初めましてメジロランページさん。今日はご招待していただいて心から感謝します、まさかオグリのトレーナーとしてまた一緒にレースに挑めるなんて思ってもみなかったので……そう意味でも心から感謝してるつもりです。笠松トレセンでオグリを担当していた北原 穰です」

「別名キタハラジョーンズだ」

「ちょっおまっ……!?」

「キタハラ、そんなに堅苦しくしたらランページも苦しい。私とランページは友達なんだ、ベルノと同じ感じで良いんだ」

「簡単に言うなよお前……」

 

そんなやり取りに少し感動してしまった。そう、オグリのトレーナーは今では六平トレーナーだが笠松時代は違っていた。この人、北原トレーナーが務めていたのだ。そんな二人が並んで立って共にレースに臨む、それを聞けただけでなんだかレジェンドレースを企画した甲斐があったような気がしてしまった。

 

「こっちこそオグリさんには何時も世話になってますから、敬語とかいいんでフランクに接してくれると有難いです」

「ああいや……分かった、何とか努力する」

 

後ろで簡単オグリとなりながらそれでいいんだと頷くのを尻目に握手を交わす、さて自分もこの前夜祭を巡って色々な話をしてみるとしようか。

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