貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

380 / 636
380話

短距離の王者がラビットパラベラムに決定したURAファイナルズは更なる盛り上がりを見せ始めた。地方トレセンからやって来たウマ娘が中央の最強スプリンターたるバクシンオーに迫る程のタイムを叩き出したからだ、コーナーが致命的に下手くそという点はあるがそれにも関わらずあのタイムを叩き出したことが極めて恐ろしい。中央のトレーナーたちが戦々恐々としている中で次はマイル部門、距離は1600で行われることになっている。

 

『URAファイナルズ第二戦、マイル部門が今……スタートしました!!先頭を取ったのは兵庫県からやってきたサクラコガレオー!!これはいいスタートを切りましたがそれに負けないように飛び出すのはロケットアロー!!これはその名の如くの大逃げです!!』

『ツインターボを思わせるような大逃げですね、これは面白くなってきました!!』

 

「オレのスピードに追い付けるもんなら追いついてみやがれ!!」

 

港区からやって来たロケットアロー、その名に偽りなしと言わんばかりの最初っからの全開で走りだしていく。そんな彼女にハナを取られたサクラコガレオー、彼女はバクシンオーと同じくサクラ一族の出、レースとしての資質は文句なしだがレースに対する闘争心が湧かず惜しまれながらも本人が希望した一般校へと進学した。今回ファイナルズに出たのは周りに押されて致し方なくという面もあった、あったが―――

 

「(あの走りは―――最後まで持つ、あの領域に踏み込むしかない)」

 

『サクラコガレオーがロケットアローに続いていきます、上手く背後に着きました』

 

レースに対して興味は無かった筈だけど、いざ出ると決めてかかれば不思議と頭の中がクリアになって何時も以上に頭が回る事に自分もウマ娘なんだな、という事を自覚する。忌避感はない、これならトレセンに行ってても良かったかもしれないと思っただけ、ただそれだけの事だと頭を切り替えて走る。

 

『中央ウマ娘マスクスカットがこの位置、そしてそこから少し離れて長崎のヴェルトロ、シャドーエースがこれはいい位置に付いている。そこから少し離れた所にはダンシングブレードが控えております』

『いやぁ短距離とは打って変わって一般校のウマ娘達が前に出てますね。ロケットアローの走りは良いですね、このまま駆け抜けていけるか』

『間もなく第三コーナー、先頭は変わらずロケットアロー。このまま逃げ切れるのか!!』

 

間もなく最終局面、其処に入ろうとしたときにバ群の中から一つの影が抜け出して一気に駆け上がっていく。

 

「バ群は俺の領域だ、此処から仕掛ける!!」

 

『シャドーエース、シャドーエースが一気に来たぁ!!?信じられません、バ群を中央をまるで影を縫うかのような見事な動きで抜け出して一気に先頭集団へと強襲を掛けていくぅ!!ぐんぐんと伸びていく伸びていく、サクラコガレオーを捉えられるかいやここで後方からも来た!!第四コーナーに入った瞬間にヴェルトロが良い位置から上がってくる!!これは面白い、良い所から来ています!!』

 

「賽が投げられた、後はっ―――!!」

 

見逃さぬと言わんばかりに続々と仕掛け始めていくウマ娘達、その気配を感じながらも先頭のロケットアローは笑みを強めていた。自分が憧れるランページもこんな気持ちだったのかな、と思いながらも思いっきり地面を踏み締めた。

 

「行くぜ爆走特急!止められるもんなら止めてみやがれぇ!!」

 

『ロケットアロー、ロケットアロー!!ロケットの名に恥じぬ程だ、此処で一気に伸びて来たぁ!!此処まで逃げ続けてきたと思えぬほどの脚だ!!これは決まった、いやロケットアローよろけている、少し斜めに走っているが大丈夫か!?』

『後ろからサクラコガレオーが来ている、彼女も負けてません!!これはいい脚だ!!』

 

「コース取りが、ブレる!!」

「散るも一興、また始まるのです!」

 

コガレオーもロケットアローを猛追する、領域は加速しながら相手の視野を狭める。それによってロケットアローはブレながら走らざるを得ない。だがそれでもとんでもないスピード、しかしこのままならなんとかゴール前でさせる―――筈だった

 

『先頭はロケットアロー、しかしサクラコガレオーが迫る!!差し切れるか、いやここで後方から一気に上がってくるウマ娘がいるぞ!ダンシングブレードダンシングブレードだ!!えっ何この凄い末脚!?一気に先頭集団にまで上り詰めてくる!!府中の坂もなんのその!!一気に三番手ぇ!!!』

『一瞬でここまで上がって来てる!?何ですかあれ!?』

 

赤坂と斉藤も思わず驚きの声を漏らしてしまう程の末脚が爆発させるダンシングブレード、直線と坂に対する強さを遺憾なく発揮して一気にトップを脅かす存在となっていく。ロケットアローとサクラコガレオーも必死に駆けるが余りの末脚に呼吸が乱れてしまったのか走りがブレる、その隙を見逃さぬと言わんばかりにダンシングブレードは更に加速する。

 

「肺活量ならだれにも負けない自信があるんだぁぁぁ!!!」

 

『ダンシングブレード先頭!!ロケットアローとサクラコガレオーを撫で斬り一閃ぃぃぃ!!!ロケットアロー、サクラコガレオーは苦しいか少し下がります!!そこを逃すことなくシャドーエース、ヴェルトロが上がってくるぞ!!ダンシングブレード先頭、このまま決めるか、決めてしまうのか!!?シャドーエース伸びてくる、ヴェルトロも必死に粘ってくるが、ゴールイン!!!ダンシングブレード、最後方からすべてを薙ぎ払いましたぁ!!!福山トレセンからやって来た驚異の切れ味の末脚、ダンシングブレードが全てを切り伏せてファイナルズマイル部門初代チャンピオンに輝きましたぁ!!!』

『とんでもない末脚でしたね!!2着のシャドーエースのバ群突破も凄かったですけど彼女の末脚もとんでもなかったです!!』

『二着にシャドーエース、三着にサクラコガレオー!!四着にヴェルトロ、五着にロケットアロー!!トレセン所属が意地を見せましたが掲示板には一般校出身がずらりと並んでおります、これは凄い結果です!!』

 

トレセン所属のウマ娘が意地を見せた、と言えば聞こえはいいだろうが地方トレセン。マイルには中央から出走していたウマ娘もいたのだが掲示板に入る事も出来ずに敗北を喫している。地方は中央の二軍、何て事がいともたやすく覆されているこの事実に中央トレーナーは戦々恐々とし、地方勢は大喝采だった。

 

「か、勝てた……や、やったぁぁぁっ……」

 

思わず空を見上げながらもへたり込んでしまう、あれほど滾っていた血が冷めて力が抜けるような感覚が襲ってくる。全力を出したが、まさか勝てるなんて思いもしなかった……夢か現か分からぬと言いたい自分にヴェルトロが手を差し伸べた。

 

「おめでとうございますチャンピオン」

「チャンピオン……?」

「と、とても凄かったですぅ……」

 

バ群を抜けたときの迫力が嘘のようなシャドーエースも自分を褒めてくる。続くようにロケットアローが自分の背中を叩いてくる。

 

「いやぁ負けた負けた!!アンタ本当にスゲェよ!!マジで負けたぜ!!」

「おめでとうございます、本当に凄い末脚でした」

 

褒め称えられる自分、それに徐々に勝利を確信できたのか彼女は立ち上がると満面の笑みを浮かべてガッツポーズをとるのであった。

 

 

「う~ん流石激戦区のマイルなだけはあったなぁ……」

 

大まかに分けてウマ娘として適性が一番多いのがマイルから中距離とされるのでこの二つが激戦区になると予想していたが間違ってはいなかった。スタートダッシュから楽しく熱く見る事が出来た。ついでに中央勢が戦々恐々と南坂からメッセージが来る。

 

「1着が地方トレセン、2~5が一般校だしな……こりゃひっでぇ様子になるのも頷けるな、そしてURAの無能っぷりがまた露呈した瞬間でもあるのか」

 

そう言いながらもランページは笑う、次は―――王道とも言われる芝2400、中距離部門。一体どんなレースになるのか楽しみでしょうがない。

 

第一回URAファイナルズ

マイル初代チャンピオン ダンシングブレード

 




マイスイートザナディウム様よりロケットアロー、イスレ様よりサクラコガレオー、幽々やおい様よりシャドーエース、osamu1974様よりダンシングブレードを頂きました。有難う御座います!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。