貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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381話

URAファイナルズは中央勢の大勝利で終わるというのがTV番組の特集でも予想されていた。地方と中央とではそれほどの差があるというのが実情だからだ、なので地方がどれだけ中央に肉薄したりするのかが見所とされていた……のだが実際は如何だろうか。短距離とマイルを制したのは何方も地方のウマ娘、しかも掲示板には中央を抑えて名を連ねているどころか、一般校出身のウマ娘の名も多かった。これが短距離だけならばまだいい訳も付いただろう、短距離は何方かと言えば人気は低い方ではあるが、マイルまでもが取られてしまうとそうは行かなくなっていく。

 

「な、なあこれ、マズくないか……?」

「まさか、うちの子が……地方どころか一般校のウマ娘にも届かずに惨敗……!?」

「あ~あ……大番狂わせもいい所だぜこれ……」

 

トレーナー席にいる中央勢は顔を青くして戦々恐々としていた、中には自分の担当が地方どころか一般校のウマ娘に惨敗したことにショックを受けて膝から崩れ落ちている者も多い。

 

「いいやったぁぁぁぁ!!!ブレードお前は最高だ~!!」

「短距離に続いてマイルまでもが地方トレセンが取った~!!」

「祝いだ~酒だ、酒持ってこい!!」

 

一方の地方勢はお祭り騒ぎである。中央が顔を青くするどころか膝から崩れ落ちている所なんて愉悦に浸れるどころの騒ぎではない、長年夢見た中央が地方に倒される瞬間をこの目で確りと目の当たりにしたのだから。このまま王道路線である中距離も地方が取るのではないかと皆が期待する、だがそうは行かせないと中央勢は胸を張る。何故ならば芝の中距離こそが中央の領域という自信がある。

 

「さて、どうなる事やら……」

 

地方を負かす事を期待し願う同僚を冷めた目で一瞥しながら、間もなく出走するゲートを南坂は見つめた。

 

『さあURAファイナルズ、芝中距離部門2400。王道の中距離で日本ダービーとジャパンカップと同じ舞台にどんな走りを見せてくれるのでしょうか。さあ今―――スタートしました!!おっと先頭に躍り出たのは素晴らしいスタートを決めました鹿児島の純金、オーロジパング!!素晴らしいスタートからの逃げを打ちました!!これは目を引きますね』

『勝負服も見事なまでにキンキラ金ですものね、これはまぶしいですねぇ』

『その後に続くのはイギリスからの留学生、ロックスミス。これは良い位置と距離を保っております。その後ろに茨城からやって来たヒッチャキリープ、中央のオーバードレイン、トリプルステージと続いています』

 

「さあ陛下、ボクの煌をご照覧あれぇ!!」

 

再来年辺りに入学してくる覇王を思わせるようなセリフを言いながらも先頭を行くジパング、ファイナルズを勝ち抜いて自分に愛を捧げると豪語するだけの能力はあるらしい。その背後のロックスミスは遠巻きだが、鋭い瞳でジパングの走りを観察するかのよう。

 

『そこから離れてソードラマティック、そして最後尾には横浜のみなとみらいから参戦のリッシュモン、小田原のシダーブレード、東京のメテオロアテナイとなっております。此処からどうなっていくのか楽しみであります。向こう正面、先頭はいまだオーロジパング、このまま逃げ切ることが出来るか。だが後方からはロックスミスが逃げるオーロジパングを追いかけていますが全く距離が開かず縮めずの距離を維持し続けています。ヒッチャキリープが今、オーバードレインを差し返して2番手を維持』

『まだまだどうなるかわかりませんね、後方の追い込みがいつ始めるかにかかってますね』

『さあ残り半分に来ました、所でおっとメテオロアテナイが此処で上がります、此処から上がっていきますメテオロアテナイ。早めに先頭を捉えようというのでしょうか』

 

「さあ、ギアを入れますわ……!!」

 

『メテオロアテナイが上がっていく、どんどんと上がって今7番手にまで上がっていきます。おっとソードラマティックも上がっていきます』

『メテオロアテナイにつられてますねぇペースを崩してしまって大丈夫でしょうか』

 

「さぁ輝く時が来た……華美!煌びやか!そしてゴージャス!!その全て!ボクだけの為の言葉さ!!」

 

『さあ第3コーナーへと入っていきます、先頭はオーロジパングですが此処でロックスミスが上がっていきます。凄い脚で上がっていく此処で勝負を掛けました!!さあオーロジパング逃げる逃げる粘れるのでしょうか!!ヒッチャキリープはまだ動かない、まだ勝負を仕掛けない。さあ第4コーナー、この辺りで、オーバードレイン、トリプルステージが上がっていくぞ!!さあレースが本格的最終局面!!さあどうなっていくか、っとと如何したオーバードレイン、トリプルステージバランスを崩したかいや立て直している!!何とか立て直したが此処で一気に来たぞ!!リッシュモンリッシュモン!!リッシュモンが一気に上がって来たぞ!!』

 

乱れ飛ぶスキルの利を一撃のもとに無へと返した一つの領域、リッシュモンの領域が他者の全てを無効化してしまった。他者の強さを自らの糧へと変換するかのようなランページのそれとは別の意味で脅威としか言いようのないそれによって得た速度はリッシュモンもあっという間に先頭集団へと連れて行った。直線へと入る、後は府中の長い直線とこの坂を攻略すればいいだけ。

 

「レッツ・オンステージ!!」

 

最後方から声が聞こえて来た、大外を回るかのようにしながらも誰も足を踏み入れない綺麗な芝を蹴って疾駆するウマ娘。

 

「いけ~シダー!!!」

 

友の声を力に変えて、今シダーブレードが行く。

 

『こ、此処で後方からシダーブレードが上がってきたぁ!!最後方、大外一気ぃ!!これは凄い末脚だ、どんどん順位を上げていく。リッシュモンに続いて先頭集団へと入ったぞ、オーロジパングを捉えられるか。いやロックスミスもどんどん上がっていく!!オーロジパングまだ行けるか苦しいか!!だがヒッチャキリープも負けてはいないぞ!!メテオロアテナイ4番手!!ロックスミスがオーロジパングに並ぶ並ぶ並ぶぞ!!オーロジパング粘る粘る!!さあ東京レース場の長い直線、残り200を切った!!先頭はいまだオーロジパング!!ロックスミス交わすか!!?いや後方からもヒッチャキリープも伸びてくるがメテオロアテナイ、リッシュモン、シダーブレードが此処まで来ているぞ!!オーロジパング逃げ切れるのか!!?ロックスミスが迫る迫る、抜いた抜けているのか!!?うわぁっ追い込みの三人も来た!!凄いデッドヒートだ!!URAファイナルズ、中距離初代チャンピオンとなるのは一体誰なんだ!!?ゴオオオルイン!!先頭はオーロジパングいやロックスミスとシダーブレードが食い込んでいる!!これは分かりません!!』

『これは、際どい!!』

『4着にはリッシュモン、5着にメテオロアテナイ、6着にヒッチャキリープです。これはどうなるのか!!?いや、判定が終わったようです。URAファイナルズ、芝2400、中距離を制したのは―――シダーブレードォッ!!シダーブレードです!!ハナ差で勝利をもぎ取りましたぁ!!2着にロックスミス、3着にオーロジパング!!この辺りはもうほとんど同着と言っても過言ではありません!!』

 

全身から汗を噴出させるように汗だくになったシダーブレードは膝をついたまま、荒い息をし続けていた。周囲の様子に気を配る余裕などもなく、唯々呼吸を整えるだけに必死になっていた。そんな時、自分に誰かが抱き着いてきたのが分かった。

 

「シダーブレード!!君本当に凄いよ~流石僕の友達だ~!!」

「テ、テイオー……?あれ、私どうして……」

「何言ってるの、ほらあれ見て!!」

 

言われるがままに掲示板を見れば、そこにあったのは自分の番号が一番上にあった。それはつまり―――自分が勝ったという事なのだろうか、現実として受け止めてられない中で甲高い笑い声と共に盛大な拍手をするジパングが此方を見ていた。

 

「ハハハハッ!!全く以て完敗だよ、君という輝きを、煌を讃えよう!!さあ君の勝利を祝う皆の声援に応えてあげるんだ、この喝采は君の物だ!!」

 

目を白黒させているとリッシュモン、メテオロアテナイ、ヒッチャキリープが此方に向けて拍手をしている。ロックスミスも悔しそうにしつつも何処か嬉しそうに拍手を送っている。そして隣のテイオーの満面の笑みを見て、シダーは立ち上がってスタンドを見た。此処に集った全ての人が自分の勝利を祝ってくれている……ただそれだけが溜まらなく嬉しくて、絶対に味わえないと諦めてレースの喜びをその身で受けて、シダーブレードは涙を浮かべながらもその声援にこたえた。

 

 

「遂に、一般校のウマ娘が勝った……しかも中距離で。だからレースは面白い、あ~……早く俺も走りてぇ~……!!」

 

第一回URAファイナルズ

中距離初代チャンピオン シダーブレード

 




シェルフィ様よりメテオロアテナイを頂きました。有難う御座います!!
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