貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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382話

王道の中距離、東京の2400と言えば日本ダービーやジャパンカップが該当する誰もが知る超王道レースの条件とも言える。日本ダービー何て一生の内に一度しか出られないレースの代表例として挙げられるしウマ娘としてもトレーナーとしてもそれを制するためにトレーニングに勤しむ。このファイナルズに出走している中央のウマ娘も目標としていた者も多い、出られなかったり敗北こそしてはいるが負ける訳はないと思っていた―――その結果

 

「ちぃ~す、南ちゃんに上ちゃん差し入れのジュース持って来たんだけど一緒に如何……ってあらら、こりゃ酷い有様ですこと」

 

「「「「「……」」」」」

 

ランページが南坂と上水流に差し入れを持ってトレーナー席へとやって来たのだが、そこは酷い有様だった。先程までは地方も盛り上がっていた筈なのに中央と一緒になって沈黙してしまっている。まるでお通夜でもやっているかのような沈黙具合にランページお得意の茶々も出ないのでジュースを二人に渡す。

 

「有難う御座います、ご覧の通りです」

「地方どころか一般校のウマ娘が中距離取ったからなぁ、幾ら中央がトゥインクルシリーズに集中する連中が居ないとはいえこれは流石に利くか」

「そりゃねぇ……甲子園の舞台で名門野球部と農業高校の野球部が対決して名門が大敗しましたみたいなもんだからな」

 

言い得て妙だ。確かにそれならば地方勢がこうなるのもよく分かる、地方どころか一般校出身のウマ娘が王者になってしまったわけだから中央を笑っていられる場合などではない。これはこれで地方の指導にも問題があるのでは?という考えにも繋がる訳でそちらもやり方を本気で考えなければいけない。

 

「これを機に確りと考えるようになれば御の字、出なきゃ俺ゃ知らん」

「これも狙い通り、だったのかい?」

「中央と地方の確執はひでぇ事は知ってるけどさ、それって中央だけが悪い訳?地方だって何も手段打たずに中央(あいつ)の態度気に喰わないで通し続けたんだから同罪でしょ」

 

ランページの言葉がほぼ全員に突き刺さった。地方の気持ちは分からなくもないのだが、其処で諦めて中央が譲歩するまで努力を怠ったのは事実だ。

 

「さて、このまま一般が長距離を取るか、それとも地方がまた取るか中央が意地を見せるかだな」

 

 

『さあURAファイナルズ、芝長距離部門2500。今―――スタートしました!!綺麗なスタートを全員が切りました、さあ一塊になって行きますが如何やら逃げを打つウマ娘はいないようです。さあ誰が先に出るのか、先頭は―――中央のグレンシンクが今先頭に立ちました。ぬるりと押し出されるような形ですがいいフォームで走りながらの先頭に出ました。続くのはゴールドフェイク、アルベトドイルが続いていきます』

『先頭に立たされてしまう形でしたが直ぐに修正していい走りをしてますね、中央トレセンの意地を見せてほしいところです』

 

逃げを選択した者はいない、長距離を逃げ切れる自信はないという理由からだろうが。ほとんどが先行を選択しているが、それは焦りもあった。此処までファイナルズに出場している中央はいい成績を残せていないからである。だからこそ前へ前へ出なければいけないという精神的な物があった。それらは如何でもよくこの舞台で全力を尽くすだけに徹している者たちの心は酷く穏やかである。

 

『そして2バ身程離れた所にイギリスからの留学生のスティールヘイズが控えます、そんな彼女の後ろに北海道からやって来ましたマッシヴロード。ばんえいレースと農業で身に着けたパワーが自慢との事です。そしてサトノ家からやって来たサトノルシファーもここに控えています』

『サトノ家は新興ではありますがウマ娘レースにはかなり力を入れている所ですからね、期待できますよ』

『そして最後尾には東京のバレットレインと茨城のアウルムアーラが居ます』

 

第二コーナーを越えて直線へと入るが、未だに先頭集団は纏まり続けている。先行ウマ娘達が上手い事風避けを作ろうとして敢えて抜かせようとしたり、追い抜いたりをしたりとかなり落ち着きのない展開となっている。そんな様子を後方から伺い続けているスティールヘイズは少しだけ笑う。

 

「そのつもりならば、私がその役目を引き受けようじゃないか。乗るか反るかは任せる、だが自己責任でな!!」

 

そういうと一気にスティールヘイズは上がり始めた。まだ中盤にも差し掛かったばかりだというのに一気にスピードを上げて上がっていく。

 

『此処でスティールヘイズが上がります、ぐんぐんとスピードを上げていく!素晴らしい加速力で今、先頭争いに加わりいえそのまま先頭になりました!!ですが此処で加速して最後まで持つのでしょうか!?スティールヘイズを捕まえようとペースが上がっていきます、斉藤さんこれは少々危ない兆候ですね』

『ですね。スティールヘイズは線が細めですが見た目にそぐわない程の瞬発力とスタミナが自慢らしいですからこれは敢えて前に出て幻惑するつもりでしょうね、敢えて乗って罠を食い破るぐらいの気概じゃないとこれはきついでしょうねぇ……』

 

それこそランページの幻惑逃げに近しい所がある、ある程度まで安定したペースとスピードだったのにもかかわらず一気にペースを上げてしまったら想像以上にスタミナは持っていかれてしまう。

 

『さあ間もなく第三コーナーですが、先頭はスティールヘイズ。それを追いかける形でグレンシンク、ゴールドフェイク、アルベトドイル―――ッとここで後方からマッシヴロードが徐々に上がってきているぞ!』

『いいコーナリングですね、ウチを良い感じに突けてます』

 

「芝は流石、だけど走った跡からすると―――この辺りから、崩れる」

 

『おっとゴールドフェイクが遅れ始めました!!デュアルスピル、サウンカタウも位置を下げています』

 

先行勢が垂れ始めた、スティールヘイズのスピードに着いて行けずにスタミナ切れを起こし始めている。それを見逃さずに後方で控え続けていた者達が直線に入る前からスタンバイし始めた。

 

『さあ直線に入ったスティールヘイズがこのまま逃げ切るのか!?グレンシンク、アルベトドイルはもう苦しいか!!マッシヴロードが伸びてくる、サトノルシファーも来るぞ来るぞ来るぞ!!一気に上がってくる、いや後方からもアウルムアーラ、バレットレインも上がってくる!!!府中の直線は長いぞ!!さあ誰が抜け出せるか、スティールヘイズがさらに伸びてくる!!凄いスタミナだ、此処でここまで長い末脚を使えるのか!!スティールヘイズ先頭、だがアウルムアーラが凄い伸びてくる!!サトノルシファーも負けていない!!バレットレイン、バレットレインが弾丸のような末脚で上がってくる!!マッシヴロード、マッシヴロードか!!?残り200を切る、スティールヘイズの末脚はまだ続く!!どうだ、逃げ切れるのか!?バレットレインが迫る迫る、サトノルシファーがあと少し!!スティールヘイズ、スティールヘイズ、スティールヘイズ行けるのか、来るのか!!?いやバレットレインが並んだ!!いやサトノ、サトノが伸びた!!サトノ家の夜明けか、サトノルシファァァァ!!!サトノルシファーが勝ちました!!サトノルシファーがスティールヘイズを飲み込んでの1着!!2着スティールヘイズ、3着アウルムアーラ、4着にバレットレイン、5着にマッシヴロード!!』

『これはサトノ家のこれから目が離せませんね!!』

 

「ハァハァハァっやった……?」

「飲み込まれたか……流石に長すぎたか」

 

荒い息の隣でまるで息を乱していないスティールヘイズがいた、彼女は此方を見ると笑みを浮かべながら拍手をし始めた。

 

「負けたよルシファー、これがサトノ家の夜明けだな。素晴らしい幕開けに相応しいじゃないか」

「私が、勝てた……?」

 

掲示板に灯された光は淡々と自室を映し出し自分の勝利を飾りつける。妹たちの未来を切り開く為とレースから身を離していた自分が、まさかこの舞台を獲れるなんて思いもしなかった。顔をずらせばスタンドにはサトノ家の使用人に父や母が涙を流しながら自分の勝利を祝福してくれていた。

 

「やった、やったっ……この競争(ケンカ)、私の勝ちです!!!」

 

 

「おっ~スティールに勝ったぜ。ロングスパートが初めてだったのかもな、もう少し遅くやればネイチャみたいに上手く行っただろうに」

「あれはあれで効果的ではあるんですけど、回数をこなせばもっと良くなるでしょうね」

「にしても……一般校出身が2連勝だね」

「別に良くね?」

「君はね」

 

 

第一回URAファイナルズ

長距離初代チャンピオン サトノルシファー

 




天羽々矢様よりアウルムアーラ、サトノルシファーを、うみへすろ様よりバレットレイン、ムッシー様よりマッシヴロードを頂きました。有難う御座います!!
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