貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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383話

「これが、君の望みなのかメジロランページ」

「何がよ」

 

トレーナー席でのんびりとしていたランページへと一人のトレーナーが声を掛けた。内容はもちろんこのURAファイナルズを設立した目的。

 

「中央と地方の差を曖昧にしてURAでも乗っ取る気か?」

「何それ、ギャグだとしても笑えねぇな。センスを磨くんだな、お姉さんの腹筋はその程度じゃ割れねぇよ」

「真面目に聞いているんだ!!」

「だったら真面目に質問しろよ」

 

トレーナーは中央でトレーナーに従事している、難関と言われる試験を潜ってサブトレーナーをこなしてトレーナーとして何人のウマ娘を担当してきた。G1クラスのウマ娘を担当した事はないし、精々オープンクラスまでしか進めずにこれまでの最高成績もG3を勝たせるのが精一杯だった。

 

「確かにファイナルズに出走している中央出身者は重賞勝利ウマ娘はいない、だがこの結果を見れば確実に中央の怠慢だと言われるに決まっている!!」

「だったら改めればいいだけの話だろうに、元々ファイナルズの発表自体が急だったしな。大元のスケジュールを組んでいた連中は出られないと踏んでいたし、中央から早々重賞クラスが出るとも想定してない。出るとしたら来年以降って思ってた」

「じゃあ、これは君の掌の上だったと……!?」

「人聞きの悪い事を仰るなぁ……これでも清廉潔白に生きてるつもりだぜ」

「どの口が言うんですか」

「ニャハッ☆」

 

初年度という事もあって規模も出走ウマ娘のレベルも計る事が難しいファイナルズにG1どころか重賞ウマ娘は早々出てこないと思っていた。そもそも中央でトゥインクルシリーズに出走しているウマ娘からすればファイナルズはメリット自体が少ないので地方や一般校向けなのである。

 

「逆にファイナルズに中央の重賞クラスが出たら何しに来てんだよってなるわ、現役でトゥインクルシリーズにも出てるのに」

「でしょうねぇ……ファイナルズ自体が人材の発掘や地方勢との関係改善の一環ですし、それこそレジェンドレースに出ろと言われるだけだと思います」

「あ~オグリキャップとかイナリワンは実際にレジェンドレースにエントリーしてますしね」

「寧ろこれで中央は地方と手を取って話をしたりとか、地方は地方で地元と更に密接な関係作りをしたりとかすりゃいいだけの事よ。これだけで中央は全然ダメじゃねぇか!!って判断する方がどうかしてるわ、寧ろ中央と地方の溝を作った側の問題が更に浮き彫りになるだけ」

 

オープンクラスのウマ娘としては次へと繋がる舞台の一つとして地方や一般校ウマ娘の交流にも繋がるし考え方一つでこのファイナルズも有意義に使えるとは思っている。だがそれらを考えるのだってトレーナーやウマ娘の仕事だ。そこまでまめまめしく面倒を見てやる義理もない。結局は自分の事だ。自分でやれと言いたい。

 

「さてとダートが始まるぜ、ある意味で一番楽しみだったんだよ」

「おや、その心は」

「オグリ先輩の―――ライバルが出るんだぜ?いやでも気になるって」

 

その言葉を聞いて周囲が動揺する中で一人だけ笑みを浮かべていた―――北原トレーナーである、そして隣に居るトレーナーを軽く肘でつつく。

 

「ほら言われてるぜ」

「……彼女に言われると、少し誇らしいな」

 

柴崎トレーナー、彼女が担当しているウマ娘は―――

 

『URAファイナルズ、最後の部門、ダート部門1800ゲートイン完了しました。そして今―――スタートしました!!良いスタートを切りました、先頭を取ったのはカサマツトレセンからやって来たフジマサマーチ!!これはいいスタートから先頭に立ちました!!』

 

そう、カサマツからファイナルズにコマを進めたのは何もオグリだけではないのだ。オグリはレジェンドレース、そしてファイナルズのダートで本選にまで勝ち進んだウマ娘がいた。それこそがオグリキャップの初めてのライバルであるフジマサマーチ。

 

「(見ていろオグリ、私の走りをっ―――!!)」

 

ダートは地方では主流レース、中央とはダートウマ娘の質では大きな差がある。だが、フジマサマーチは背後に迫る影に少しだけ危機感を感じる。

 

『続きますは千葉からやってきましたダーレージャパン、予選は追い込みでしたが他の追随を許さない走りで大差勝ちをしております。今回はフジマサマーチをマークするような逃げを打ちました』

『一般校からの子ですし適性がはっきりしていないかもしれませんが……いやこれはすごくいい走りをしてますねぇ』

 

「あの人に倣ってみたが、これもいいな」

 

『そこから3バ身程離れた所に大井トレセンのツキノイチバンと姫路トレセンから参戦のマグナムレオン、中央のスマッシュウルフ、レガリアロード。そして福井からのミルガマネ』

『最後尾には同じく千葉からのタラサジャイロが良い位置を取ってますね。前と後ろでいい勝負が期待できます』

 

先頭をキープし続けるマーチ、背後のジャパンは自分から着かず離れずの良い位置を取ってくる。少しばかり揺さぶりを掛けてみるといい具合に反応はしてくるが、直ぐに反応して立て直して影響が僅かな時間しか通用しない。

 

「(こいつ、オグリ以上にやばい……!)」

 

数多くのレースを経験したからこそ分かる嗅覚が何かを察知した。ダーレージャパンは言うなれば超天才肌の天才だ、レース経験がないだけで十分な練習と経験を積んだら中央でもやっていけるレベルの……だが、その程度で自分は負けないとマーチは自信を持って言える、今日まで自分が走り続けて来たレースは絶対に無駄にはなっていない。

 

『さあ1000mを通過したところのタイムが59.1。フジマサマーチはこのまま逃げ切れるのか、カサマツトレセンの期待をオグリキャップと共に背負う彼女には多くの声援が向けられております、第三コーナーを越えた所でタラサジャイロが此処で上がってきます。最後尾からどんどんと順位を上げていくがこの辺りが仕掛け始めるウマ娘も多いぞ。さあオグリキャップの故郷が行くというのであればイナリワンの故郷、大井の刺客でツキノイチバンも仕掛けて来るぞ!!マグナムレオンも来る、さあフジマサマーチは行けるか!!?間もなく第四コーナーですが此処でダーレージャパンが一気に加速し始める!!ここで抜かすか!!』

 

「楽しいなぁッこの辺りで仕掛けるべきかな!!」

 

高揚感に満ち溢れる感覚、レースは楽しいで満ちていると実感しながらもダーレージャパンは競り駆けて行く。このまま先頭を貰ったと思ったが、フジマサマーチをなかなか抜けない。外へと回ろうとしているのに内々へと誘導されているような感覚がある、マーチはウチをギリギリ通っていてもう入れるスペースがない。

 

「行かせるか……!!私が、私が―――」

 

―――私も共に中央に行く、だから……全力を尽くしてカサマツの力を見せてやろう。

 

―――ああ、勿論だ。私はカサマツの代表のオグリキャップだ。

 

「約束を破る訳にはいかない!!」

 

『さあ最後の直線だ、ダーレージャパンは中々前に出られない。外に出れるかいやここでツキノイチバンとタラサジャイロ、マグナムレオンがどんどんと上がってきて出るに出られなくなっている!!ダーレージャパンは下がる、ミルガマネに並ばれるが共に大外へと何とか持ち出せるか?!先頭はフジマサマーチ、いやツキノイチバン、ツキノイチバンが大きく来たぁ!!』

 

「我、燦めく、故に敵う者無し!!!」

 

ツキノイチバンが大きく加速していく、心と身体を燃やし尽くしてでも最初にゴール板を潜り抜けると言わんばかりの気迫を生み出しながら。それを感じながらもマーチも懸命に走る。だが差は徐々に縮まっていき後方からも他のウマ娘が迫ってくる。もうマージンはない、もう此処までかと思ったその時、スタンドに居たライバルが此方を見据えていた。声を出さずとも聞こえてくる声援が自分に届いてくる。

 

「ッ―――!!」

 

『フジマサマーチが此処で伸びる!!?まだ脚を残していた、まだまだ死んでいないぞフジマサマーチ!!ツキノイチバンが来る、少しずつだがが満月へと満ちようとしている!!如何だ、届けるか、カサマツか大井か、どっちだ!!!?』

 

死力を尽くして大地を疾駆する。そして―――ゴール板を駆け抜けていく、足音だけが永遠と響くように頭に反響する。だがそれはそれ以上の衝撃でかき消される。その正体は―――

 

『フジマサマーチィィィ!!カサマツからやって来た代表が、勝利をもぎ取りましたぁ!!!二着ツキノイチバン、三着にタラサジャイロ、四着にスマッシュウルフ、五着にダーレージャパン、六着にミルガマネ―――』

 

それ以上は聞こえなかった。只聞こえてきたそれが真実なのかどうかを掲示板を見上げて確認する、そこにあったのは紛れもなく自らの番号、ハナ差での辛うじての一着。だがそれでも勝ったのだ。全力を尽くして、勝った。

 

「勝った、勝ったぞ……っどうだオグリキャップ……!!!」

 

疲労困憊と言いたげな表情のまま、オグリの方を見るとそこには自分の勝利を讃えるように笑みを浮かべて頷いている彼女の姿があった。それだけでもう全てが報われたような気になって思わず座り込んでしまった。

 

「やったぁぁっ……」

 

 

「流石オグリさんが推すだけはあるわ」

「素晴らしい走りでしたね」

「う~ん……これは中々……」

 

フジマサマーチの勝利を見届けたランページはファイナルズの成功を確信できた。地方の底力と在野にいる未知数の存在をこれだけ発掘で来たのだから初年度は大成功と言っても過言ではないだろう。後は明日のレジェンドレースを控えるのみ……あんな熱いレースを見せられたら今から走りたくてしょうがない。震える身体を抑え付けながらもトレーナー席を後にするのであった。

 

第一回URAファイナルズ

ダート初代チャンピオン フジマサマーチ

 




糸田ひろし様よりツキノイチバン、マイスイートザナディウム様よりタラサジャイロ、イスレ様よりミルガマネを頂きました。有難う御座います!!
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