URAファイナルズは無事に大成功を収めた。無事に5部門の初代チャンピオンは誕生し終幕へと至った。トロフィーの贈呈とインタビューなどを一通りこなした後は当人たちの希望を立ててウイニングライブを敢行、その後は明日に備えて解散という運びになった。ファイナルズの優勝を祝したパーティというのも考えたのだが、そうなるとレジェンドレースの優勝者とはまた別で開かなくてはいなくなる。そうなるとシェフへの負担が尋常ではないので流石にレジェンドレース後にパーティという事になった。それに、流石にファイナルズで疲れているだろうし。
「いよいよか……」
世間はファイナルズの熱が全く冷めていないらしくニュース番組はそればかりの放送している。その気持ちも分からなくはないが……地方トレセンが3勝、一般出身が2勝、中央はまさかの0勝。予想は大きく裏切られての大どんでん返しに中央の全勝だと胸を張っていたコメンテーターは赤っ恥だろう。それらは中央の主力とも言える重賞クラスが出ていないのだから当然だろうと述べる中で自分のコメントが如何に情けないか分かる。
『重賞が出てないのはある意味当然でしょう、寧ろそっちはトゥインクルシリーズを優先して当然の事。開催も結構急だったから前以て組んでいたスケジュールを考慮しても此方に出すのは難しいと判断しても可笑しくはない。俺は順当な結果だと思ってますよ、レースは何が起きるか分からないからこそ面白いんだ』
絶対王者たる貴方が言うのかととも言われたが、現役時代は時代で何時敗れ去るのかそれとも続くのか分からないと言われたから同じだと返しておいた。兎も角、明日はレジェンドレース。いよいよ自分の手番が回ってきたと言っても過言ではない
「武者震いが止まらねぇな、凱旋門やBCでもこんなのはなかったな」
不思議と、今の自分は海外遠征時よりもやる気に満ち溢れている気がしてならなかった。日本が悲願とする世界一の舞台よりも、アメリカ最速を決めるダート最強決定戦よりも遥かに楽しみでしょうがないと思えてしょうがないのだ。
「さて、明日はどうなるかな」
何処か他人事のように言いながらもランページは震える身体を必死に静めながら、ハーブシガーに火を灯す。既に精神テンションは現役時代に戻っている、ラストラン位にまでは高められるかもしれないという期待を込めながらも夜空を見る。良い月が出ている、この月にも願うとしよう。レジェンドレースの素晴らしき成功を―――。
『さあ皆様お待たせ致しました、本日も此処府中の東京レース場から実況、赤坂がお送りいたします。本日の解説もウマ娘のレースコメンテーターとしてもお馴染み、MCとしても芸人としても活躍しておられるこの方!!』
『皆さんハァ~イナイスですね~!!どうも斉藤です、本日も宜しくお願い致します!!』
『宜しくお願い致します。つい昨日の熱気と興奮がいまだに冷めやらぬまま今日という日がやって来てしまいました、いよいよ本日は大晦日で既にTVでは大晦日の特別企画が行われておりますがそれにも負けないどころか勝る勢いが此処にあります!!そう、本日此処府中で行われるのは伝説の名を冠する祭典―――レジェンドレースです!!』
会場に木霊する言葉にボルテージが一気に上がっていく。本当にこの日を待ち侘びたと言わずにはいられない、ファイナルズですらあれだけ盛り上がったというのに今日はそれを前座に出来てしまう程の圧倒的な盛り上がりを見せるのだから。
『此処に居る皆さんはレジェンドレースについては把握しておられると思いますが改めて解説させていただきます。レジェンドレースは基本的にはURAファイナルズと同じですが、此方は最初から高難易度であることが前提とされております。開催前からメジロランページが上げた名前の中にはTTGやマルゼンスキー、我々がよく知る名前がずらりと並んでおりました。それらに挑んでみたい、共に走りたいという夢を叶える正しく夢の舞台なのです!!』
『しかもそれだけではありません!!本来、ドリームトロフィーリーグに出走する筈のウマ娘が此方に殴り込みを掛ける事も容認されています。事実として本日のメインレースと言っても過言ではない中距離にはオグリキャップ、タマモクロス、スーパークリーク、イナリワンという名前も並んでおります!!!』
このレース条件に心が揺れ動かないウマ娘なんている訳がない、その資格が得られるのであればトゥインクルシリーズの現役中だろうがドリームトロフィーリーグに所属中だろうが参加したいというのが素直な本音だろう。事実、トゥインクルシリーズ現役からこれに出ている者もいる。
『先日のファイナルズの地方、一般勢の大活躍も胸が高鳴りますが矢張り此方の方が期待値というのは高いですね』
『この辺りはしょうがないでしょうね、何せ既に引退してもうレースが見られないと思っていたあのウマ娘達の走りをもう一度見ることが出来るんですから。この機会を作ってくれたランページには感謝してもしきれないでしょう』
控室、今回ランページは司会を南坂とアサマに任せていた。理由は唯一つ―――己の中にある全てを練り上げる為、その為にシンザンから教えて貰った精神統一方法を実践してみている。
「……」
それは座禅である。脚を組んで瞳を閉じて極限まで自分と向き合う、普通に考えれば座禅を組めば脚は固くなって十分なコンディションで走る事は難しくなるだろう。だがランページはそれをやっていた、シンザンも現役時代にはこの座禅をして精神を高めていたと語っていた。今回それを取り入れてまでランページは極限にまで自分を高めようとしていた。震えそうに身体を抑え付ける、封印でもなすかのようにギチギチになる程に。
「(不思議だ……あんだけ楽しみにしてて暴れ出しそうだったのに、今は落ち着けてる……すげぇリラックス出来てる……)」
だが、ランページには酷く効果的だった。現役時代にもやっていればよかったかもしれないと思う程にしっくり来ていた。既に何分間座禅を組んでいるのだろうか、時間の感覚さえも分からなくなるほどに没頭し続けた座禅は肩に乗った感覚で漸く終わりを告げた。
「ランページさん、ランページさん」
「―――……南ちゃんか、何開会式終わった?」
「何を仰るんですか、もうマイルまで終わりましたよ」
「えっマジで?」
何を言っているんだと思いながら時計を見たらびっくりした、座禅をし始めてから既に1時間は軽く経過していたのだ。体感的にはまだ10分位だと思っていたのに……
「短距離ではバクシンオーさんが、マイルではニッポーテイオーさんが初代チャンピオンとなりましたよ」
「は~納得の名前が挙がってらぁ」
バクシンオーがレジェンドレースに出ているのは知っていたが、勝利する辺り流石日本が誇る最強スプリンターだ。ラビットパラベラムとどっちが速いんだろうか。因みにタイムは1:07.3だったらしい。流石驀進王。
「座禅をするとは知りませんでした、シンザンさん辺りからのアドバイスですか?」
「流石敏いな、あの人に集中力高める方法知ってる?って聞いたら座禅組めばいいだけの話だろって返されたわ、レース控えたウマ娘に勧めるものではないのにな」
「普通なら関節は固くなり脚も痺れてしまう筈ですが……ランページさんにはそんな様子は有りませんね」
立ち上がって軽く身体を伸ばしているランページにそんな様子はない、長時間座禅をしていたとは思えぬ程に柔軟な動きをしている。
「さてと―――行ってくるぜ」
「はい、いってらっしゃい」
ハイタッチをして―――ランページは行く。
『さあ短距離とマイルの激戦を越えて遂に、遂に本日のメインレースがお目見えです!!!レジェンドレース中距離部門、芝2400!!』
『うわっもう鳥肌が凄い事になってますよ、見てくださいよ皆さん!!』
『いや私にしかわかりませんってうわ凄いですねこれ!!?おっと、地下バ道から来ました!!中距離のレジェンド達が!!』
『日本初のジャパンカップ制覇ウマ娘、その勝利はシンボリルドルフ、ミスターシービーの三冠ウマ娘を同時に破っての栄光!!日本のエース、1枠1番カツラギエース!!!続くは笠松からやって来た葦毛の怪物、ライバル達とこの舞台でも覇を競うのか!!1枠2番オグリキャップ!!』
「久しぶりだなぁこの感触―――いいねぇやっぱりこうでなくちゃ」
「マーチ、見ていてくれ」
『深紅の閃光、その走りをそう表現した者は多いでしょう。超快速の俊足が帰ってまいりました!!2枠3番、マルゼンスキー!!一流の演出家は一対一ではなく第三の色を加えた攻防を好むと言います、ならばそれは彼女の事でしょう!!TTGが一角たる緑の刺客!!2枠4番グリーングラス!!』
「ハァ~イ!!皆~元気~?」
「元気なのはそちらでしょうよ、まあ私もですが」
『葦毛の怪物との一騎打ち、この両者の激突は日本を大きく盛り上げました。葦毛の怪物に対抗するは矢張り白い稲妻、3枠5番タマモクロス!!その足取りはまるで宙を舞うように軽やかでその走りに皆が夢を託して空へと送り出しました、TTGが一角、天馬3枠6番トウショウボーイ!!』
「今日は宜しく頼むぞ、白い稲妻。共に空に衝撃を走らせようじゃないか」
「望むところや、稲妻に打たれて痺れても知らんで」
『メジロランページよりも以前に海外へと2年もの間遠征した女傑、彼女の海外レースでのノウハウがなければ暴君の活躍もなかったでしょう。ダービーの一等星4枠7番シリウスシンボリ!!オグリキャップと戦ったウマ娘と言えば彼女も外せません、クラシックの一冠をその手にした快速ステイヤー、永世三強の一角、4枠8番スーパークリーク!!』
「本日は宜しくお願いしますね先輩」
「ハッそうのんびりしてておいていかれても知らねぇぜ?」
「フフフッそうはならないと思いますよ」
『暴君を語る上で彼女を外すのはニワカがする事、暴君へと挑み続けた末に手に入れた力でこの府中で二度の栄冠を手にした大華、5枠9番アグネスフローラ!!あの有馬記念はデッドヒートにも戯れにも見えた、過去も未来も消え去り今が激突した伝説の直線勝負をここで再び!!TTGが一角たる流星の貴公子!!5枠10番テンポイント!!』
「伝説が相手とは言え負けませんよ、何せ私が現役の代表ですから」
「良い面構えだ、掛かって来い」
『さあこの伝説だらけの中距離路線に殴り込みを掛けた勇者がご登場だ、北海道からやって来た彼女は圧倒的な走りでここまで来ましたが伝説にどこまで対抗出来るのか!?流星の女王、6枠11番アカリポイント!!故郷の大井からやって来た狐が今伝説へと挑む、この対決を心待ちにした方も多いでしょう!!天下をとれるか、永世三強が一角、6枠12番イナリワン!!』
「あんまり緊張してないみたいだねぇ、その意気や良し」
「女王の名を此処で本当にしてみせる……!!」
『かつて、地方からやって来たウマ娘がいた。地方だけに飽き足らずその強さで中央でも勝利をその手にした軍神が帰ってきました!!地方の軍神7枠13番ホウショウツキゲ!!TTG世代にはもう一人、皇帝が居た。既に三強状態を作っていたにも拘らず彼女は果敢に挑みダービーを制し、その名の通りに王座へと上り詰めた!!登極皇帝、7枠14番クライムカイザー!!』
「軍神と皇帝が一緒だって~ニャハッこれは縁起いいかもね~」
「ハハハッこりゃいい、犯罪的に字面がカッコいいな!!」
『暴君と共に駆け抜けた末に手にしたのは皇帝に続いた三冠ウマ娘という称号、クラシック三冠とトリプルティアラが同時に達成という奇跡はこの先起こるのか!!?メジロの三冠、8枠15番、メジロライアン!!』
地下バ道から次々と現れるレジェンド達、そして三冠の後に続くのは―――伝説を作り上げ、この夢の舞台を創設した暴君。
『30戦30勝、生涯無敗を貫いたトリプルティアラ、ワールドレコードホルダー、彼女へと向けられる様々ありますが矢張り独裁暴君が一番相応しい!!世界最速最強の独裁暴君!!8枠16番、メジロランページ!!!』
「久しぶりに―――待たせたな」
遂に出揃った伝説たち、これから覇を競う伝説の一戦を日本が、世界が見つめる。
1枠1番 カツラギエース
1枠2番 オグリキャップ
2枠3番 マルゼンスキー
2枠4番 グリーングラス
3枠5番 タマモクロス
3枠6番 トウショウボーイ
4枠7番 シリウスシンボリ
4枠8番 スーパークリーク
5枠9番 アグネスフローラ
5枠10番 テンポイント
6枠11番 アカリポイント
6枠12番 イナリワン
7枠13番 ホウショウツキゲ
7枠14番 クライムカイザー
8枠15番 メジロライアン
8枠16番 メジロランページ
間もなく出走
マルシン牌様よりアカリポイントを頂きました。有難う御座います!!