貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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387話

「……疲れた」

 

シンプルに自分の気持ちが集約された四文字を吐き出した。レジェンドレースでは南坂にも呆れられるような走りをした結果、身体はオーバーホールが必須なオーバーヒート状態、と言っても現役時代と違って休養し続ける訳にもいかない。何故ならば自分には立場があって自分を頼りにするネメシスとプレアデスの生徒たちがいる。自分が長期休暇を取ればその皺寄せはそちらに行く、それは看過できないので頑張る。

 

「これは張り切り過ぎましたね、針打ちましょう」

「やっちまってくれ」

 

レジェンドレース後はファイナルズとレジェンドレースのお疲れ様パーティ兼表彰式に出席しそこでは一人一人にトロフィーなどを渡してインタビューをしたり、記念撮影やら諸々をこなした後にメジロとシンボリ合同パーティに出席して色んなお偉いさんと話をする羽目になった、これも自分の蒔いた種だと自分を強引に納得させながらも大忙しの大晦日を過ごしたのであった。

 

「主治医さんも悪いな……つうかこういう事も出来るってスゲェな」

「それが私の責務ですから、メジロ家のお嬢様方の御身体を整えるのが私の仕事です」

 

メジロ家の御屋敷の一角でランページは主治医に施術を受けていた。本当は商店街の鍼灸院へと行こうとしたのだが年末年始はお休みになっていたので行けず、如何しようかと思っていたら主治医がしてくれる事になった。

 

「大分疲れが溜まっておりますね……本来ならば療養所にて休養を取るのが一番だと思いますが……」

「つっても利用できるのは冬季の休みだけだからなぁ……トレーナーとしての仕事もあるし長々と療養所でお休みとは行けねぇよ」

「左様ですか……でしたら、本日は徹底的に解しましょう」

「頼むわぁ~……」

 

結局、お正月は身体のメンテナンスばかりになってしまい初詣は昼になって行く事になってしまった。

 

 

「おはようございますって殆どはいないか」

「おはよう御座いま~す」

「ってうおっ!?」

 

数日後。トレセン学園の職員室に出勤してきた上水流トレーナー、トレセン学園も冬季の休みに入っているのだが冬のシーズンにもレースはあるのでそれらに出走予定のウマ娘の担当はトレセン学園に出て来るし練習するウマ娘も多いので普通に解放されている―――が、まさかランページがいるとは思わなかったのか酷く驚かれた。

 

「えっなんでいるの!?」

「いちゃ悪い?」

「いやいやいや、悪いとかじゃなくて休養期間じゃねえの!?」

「そうしたいのは山々んだけどなぁ……俺もトレーナーとしての仕事があるから、そうも言ってられねぇんだよ」

 

あれだけの走りをしたウマ娘ならば最低でも1~2週間は集中的な休養に入る、トレーナーならばそう考える。なのでランページが一番乗りで職員室に居る事は驚いた。

 

「やっぱりネメシスの統括チーフってそんなに忙しいの、あっコーヒー淹れるけど飲む?」

「あっお願いするわ。それもなくはないんだが……今回のファイナルズとレジェンドレースの波紋が想像以上にでっかくてなぁ……」

 

URAファイナルズとレジェンドレースは全世界に配信で中継された、その結果として海外でもファイナルズとレジェンドをやるべきではないか?という動きが出始めてしまっている。それに加えて是非日本のレジェンドレースで走りたいというラブレターがトレセンに殺到してしまっているので出勤せざるを得ない状況なのである。

 

「ったく勘弁してくれよって話だよ、そもそもこんなに自由にやれたのも国内に絞ったからこそなんだぜ?それなのに海外まで対象にしたらどんだけ面倒くさい事になるか、日本に留学か移住してますって条件だけでも頑張ったんだぜ俺ちゃん……あ~もうなんか眩暈してきた……」

「想像しただけで俺は胃に穴が開きそうだよ」

「そりゃ俺のセリフだっつぅの……」

 

この数日で主治医に見て貰ったおかげで大分体が軽くはなった、が最低でも1月中は絶対に走ってはいけないと念押しをされてしまった。加えて終業後はメジロ家の屋敷で食事やマッサージによる療養が待っている。これが主治医から出されたトレーナー業務をこなす為の最低条件だった。

 

「なんか、ごめん」

「何で上ちゃんが謝んのよ」

「俺がもっとトレーナーとしてしっかり仕事が出来れば休めるのに……」

 

それを聞いて上水流が思ったのは自分の不甲斐なさ、新人トレーナー故の能力の低さや経験不足が足を引っ張っている。自分が対応出来ればワールドレコードを更新した彼女を確りと休ませることが出来るというのに……そう思っていると頭を撫でられた。

 

「何言ってんだよ、上ちゃんが責任感じる事ねぇよ。寧ろこれは俺が好き勝手やったからこその苦労なんだよ」

 

珈琲を受け取りながらもランページは笑っていた。

 

「まあ今年度のファイナルズとレジェンドについてはもうちょっとゆっくり出来るとは思ってただけどねぇ……ハァッ……」

「ンで、海外からの参戦希望は如何するの?」

「全部蹴るに決まってんでしょうか、こんなん対処しきれるかって話だ」

「ですよね~」

 

シンプルにそれが一番正しいとは思う、国際競争にまで発展すると色んな意味で問題が山積みになる。取り合えず各国が勝手にファイナルズとレジェンドを創設する事は勝手にすればいいと思っている、が態々日本に来て走るなんて事はしないで欲しい、と思った所でいい考えを思いついた。

 

「ああそうか良い事考えた、俺天才だいい解決案思い浮かんだ」

「えっマジで?」

「これURAにもやらせたろ」

「うぉおいいいいっ!!?」

 

まさかの仕事ぶん投げである。確かに今回URAは名前こそ冠させて貰っているが、実際の所は運営に関しては全く携わらせて貰っていない。殆どがランページと秋川理事長と地方トレセンが連携したに過ぎずURAは強いて言えばレース場に関するあれこれ位しか出来ていない。

 

「いやいやいや無理だろ幾ら何でも!!?」

「大丈夫大丈夫、実際問題今回の事でURA仕事しろってめっちゃ叩かれたじゃん。地方からも中央への不満もある意味で直撃した、じゃあ次は中央が頑張ってますって所を見せる番って訳」

 

素直に言えばファイナルズとレジェンドはURAにも協力して貰った方が遥かに運営は楽なのである。自分の負担を減らしつつ、URAに仕事を押し付けつつも地方との関係を強引にでも取らせて改善を嗾ける。出来なければまた自分が出張って世間から叩かれるだけ、それが嫌なら働けばいい。

 

「個人の俺が頑張ったら出来たんだから大組織のURAが出来ませんなんて道理は通らないからねぇ……ヒッヒッヒッヒッ……ハハハハハッ……!!」

「控えめに言って悪魔の所業だよ」

「違います、独裁暴君です」

「どっちにしろ性質悪いよ」

「ニャハッ☆」

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