貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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389話

2月。漸く毎日メジロ邸に通う生活から解放されたランページ、脚のコンディションも元に戻った。これで漸く本格的にトレーナー業に復帰出来る、マヤの本格的な仕上げとネメシス全員の面倒を見る身としては走れないというのは思いの他不便だった。データを取るにも矢張り一番理解出来るのは共に走る事だから、なので定点カメラを設置したり、ドローンを飛ばして上からそれぞれの走りを観察出来るように整えた。

 

「お前、幾ら掛かった?」

「いやこれらはある種の試供品、俺の配信で宣伝とテストを兼ねる代わりにプレゼントして貰ったんだよ」

「……なぁ俺も使っていい?」

 

という訳で、トレセン学園でドローンカメラの活用が本格化したりと色んなことがあった。因みにトレセン学園は一応理事長の私有地という扱いではあるが、日本政府直々の許可証は発行して貰っているので問題はない。そんな日々を過ごしている中で南坂からあるお願いをされたのであった。

 

「カノープスをか?」

「はい、佐々田さんにもお願いしてありますがランページさんにもお声をかけておこうと思いまして」

「そりゃ構わないが、どったのよってあっそうか、ドバイか」

「はい」

 

南坂からカノープスの事をお願いされた。それはターボと共にドバイへ海外遠征を行う為である。流石に自分のようにスーちゃんが同行するという事は出来ない、というかスーちゃんだって自分が行くからこそ行く気になってくれたようなもんなので普通はこうなる。

 

「ターボさんも相当に張り切ってますし、早い内に現地入りして馴らしておくにいいと思いまして」

「それは同感だな。俺も一月近くは向こうに居たからな、初めての海外だし」

 

南坂ではなく代理を立てる事も考えなくもなかったのだが、ターボは臆病な所があるので見知らぬ土地でたった一人というのは精神衛生宜しくない。なので南坂が同伴する事になった。

 

「まあ話は分かった、佐々田ちゃんだって腕は悪くないし俺以外にもカバー頼んでんだろ?だったら大丈夫だろ、ンでどれに出るだ?」

「ドバイターフです」

「芝の1800だっけか」

 

ターボが出走するのはドバイワールドカップミーティングの一角、G1レース、ドバイターフ。芝1800のレースなのでターボとしても距離の心配は考慮しなくてはいい、問題は日本との芝の違いと初の海外という事で緊張しないか否か。

 

「実はそちらの方はあまり心配していないんです、精神的にはターボさんは出来上がっていますから」

「そうなのか?」

「ええ、先日の香港ゴールドカップはご覧になりましたか?」

「見たけど、ああ成程……シルバーに触発されたって事ね」

 

自分だけではなくターボともしのぎを削り合った間柄であるシルバーストーン、彼女は先日に香港で行われたG1レースの香港ゴールドCに出走し見事に一着で制覇。同じ大逃げウマ娘としてライバル視している彼女の活躍にターボも奮起している。

 

「にしても俺じゃなくていいのか、俺が一緒に行っても良いんだぜ?代わりに南ちゃんがプレアデス見てくれれば」

「ターボさんが私に一緒に行って欲しいと」

「ターボがぁ?」

 

『ターボと一緒にドバイ行ってくれないかなトレーナー』

『私、ですか。ランページさんにお願いする筈ではなかったのですか?』

『……何時までもランに甘えてたらターボはターボのまま、ドバイはターボの力で勝ちたい!!ターボは、ランともう一度戦いたい。だからそんな自分を作りたい、レジェンドレースで戦うために!!』

 

何とも意地らしい言葉だ、ターボは確かに自分の弟子でよく自分を頼ってくる。それはターボ自身がランページを目標としているから、だがこのままではいけないとターボは自分で思ったのだろう。何時までもランページの弟子のツインターボのままでしかない。今、殻を破ろうとしている。

 

「全く、背伸びした事言いやがって……」

 

何時までも手の掛かる妹のような存在だったターボがまさかそんな事を言ってくれるとは……何だか嬉しくなって来てしまうじゃないか。それならば望むようにさせてやるのが師としての役目だろう、まあ師として何かをやった覚えなんてあんまりない訳だが……。

 

「んじゃまあ南ちゃん、ターボの事頼むぜ」

「言われるまでもありませんよ、そもそも私の担当何ですから」

「そりゃそうだ―――勝って来いよ」

「はい」

 

 

「じゃあラン、ターボ行ってくる!!」

「応。ちゃんと勝って来いよターボ、カノープスの海外戦線二人目はお前だ」

「任せろ~!!」

 

普段と変わらぬ元気さでターボは意気揚々とドバイへと向かって行った。そんな間でも自分は変わらぬ毎日を貫き通していた、カノープスの面倒で久しぶりに後輩たちと走ったりと何処か昔に戻ったかのような感覚を味わったりもした。時折ターボから進捗状況の報告が来て、ドバイの芝にも早めに慣れることが出来たという話が着たりと順調そのものだった。そして―――

 

『先頭はツインターボ!!日本のツインターボが爆走だ、ターボエンジンは本日も全力全開で稼働中!!日本のツインターボ逃げ切れるかここで世界の強豪たちが一気に上がってくるぞ!!』

 

「いけぇターボ!!!」

「あと少し、頑張れ~!!」

「ターボさ~ん!!」

「先輩頑張れぇ!!!」

「タイマンだぁ!!いっけぇ~!!」

「先輩あと少し~!!」

 

ドバイワールドカップミーティングの当日にはカノープスの全員で大応援会が催された。既に夜だが最早絶叫のような応援の叫びが木霊する。

 

『此処で一気に来たぞ!!ツインターボもう厳しいか!?安全マージンももうないぞ!!』

 

「ターボ、なんか走りがいつもより悪い!?」

「海外の環境に適応しきれてねぇ、マズいな……」

 

最後のコーナーを曲がって直線に入るが、もう後方との差は殆ど無い。もう限界か、だがその時に全員が見えた。直線に入る瞬間にターボの表情が見えた、笑っていたのだ。心の底から楽しそうに、厳しいレースの状況を嬉しそうに。

 

 

―――これが本当の……ターボの、ドッカンッターボだぁぁぁぁ!!!

 

 

聞こえて来た、確かに聞こえて来た。ターボの声が!!

 

『きっ来た来た来た来たァ!!ツインターボのドッカンターボが火を噴いたぁ!!半バ身程しかなかったリードが一気に開いていく!!マドックスも懸命に追うが差が縮まらない!!ゼルカセットも猛烈な勢いで追い込みがこれは届かない届かせない!日本のツインターボ、爆速エンジンのツインターボが今っぶっちぎりで今ッゴール!!!ツインターボ、ツインターボォォォ!!!なんと2着のゼルカセットに6バ身を付けてドバイターフを圧勝ぉぉぉ!!!カノープスがまたやりました、メジロランページに続いて日本のウマ娘がドバイの舞台で堂々の大逃げ切り勝利ぃぃぃっ!!!』

 

「いいやったぁぁぁぁ!!!」

「ターボが、ターボが本当に勝ったぁぁぁ!!!」

「お姉様ターボさん勝ったよ!!」

「あいつ、ほんとにっ……やりやがった!!」

 

勝利を信じていたが、いざこれだけの勝利を見せられると滾ってしまうものがある。あのターボがドバイワールドカップミーティングの一角を制覇したのだから。

 

『ラ~ン!!イクノ、ネイチャ、マチタン、ライスにチケット、アマゾン、ローレルにドララ~ン!!見てるか~ターボ勝ったよぉ!!!』

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