貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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39話

「あ"っ~……行きたくねぇ……」

 

メジロ家のリムジン。乗り慣れないと思っていたのだが何時の間にか乗り慣れてしまっている自分が居る、と思いながらも絶対的に出来ない現実逃避に挑戦するが大失敗し改めて思いを口に漏らす。今日ほどメジロ家のお屋敷に行きたくないと思った事はない。

 

「そう言わないでくださいランページ様、皆様本日を楽しみにしてらっしゃるのですから」

「分かってる、分かってるよ……だから愚痴は言うけどちゃんとこうしてるでしょうよ……」

 

ランページも今日ばかりは欠席する訳には行かないと思っている、何故ならば主催はアサマなだけではなく招待されているウマ娘の皆様に挨拶をしなければならない。仕事やスケジュールの関係で紹介するのが二人と言うのは非常に有難かった……まあ漏れなくその二人が怪物的なウマ娘なのだが……。

 

「到着致しました」

「あっはい……なんか死刑宣告受けた囚人の気分だぜい……」

 

苦笑するが言いたい事は理解出来る、だが自分に出来るのは応援だけだと内心で彼女の無事を祈るだけである。それもそれで如何かとは思うが……リムジンを降りるとそこには笑顔を作ったライアンが待ち受けていた。ああ、きっとお屋敷に着いてからも逃がさぬ為に派遣されたのか……と思う程度にはランページの心は荒れていた。

 

「早く早く、お婆様達も待ってるよ」

「もうその言葉だけで腹一杯で紅茶入らねぇから帰っちゃ駄目かな」

「だ~め♪」

「おうふ……」

 

手を取って笑いながら歩き出すライアンは処刑人のように感じられた……そんな気持ちを正すと一種の諦めの境地に立てたのか、もう開き直り始めた自分が居て驚いた。人間、来るところまで来ると一周するというのは本当らしい。

 

「ライアン、弥生賞おめっとさん」

「あっありがと!!お茶会で言おうって思ってたのに知ってんだね!!」

「まあな」

 

ライアンは順調にクラシック路線への道を歩んでおり、皐月賞のトライアルである弥生賞に勝利している。お互いに立てた約束を果たす為の第一段階へと確実に上がる事が出来る。

 

「皐月賞か……そっちは中長距離だから大変だな」

「と言ってもマイル中距離のティアラだって楽って訳じゃないでしょ?」

「まあな。桜花賞にはイクノの奴も出て来るし、リギルのフローラも出て来る」

 

思い出すは先日のチューリップ賞。勝利を収めてこそいるが、あの中で別格だったのはやはりアグネスフローラ。リギルに所属するだけはあるし、アグネスタキオンやフライトの母なだけはある。タキオンの母と言われるとあの強さにも不思議と納得が行くのは何故なのだろうか。

 

「さっ此処だよ。お婆様達も御待ちだよ」

 

そして遂に到着してしまったお茶会の会場、ああ来てしまったと思えるお茶会とは何だ、何処の四皇のお茶会だ。

 

「覚悟極めるしかないか……」

「なんか可笑しくなかった今?」

 

そんな事を言いながらもノックをするライアン、直ぐにお入りなさい、というお婆様の凛とした声が響いてきた。開けられる扉、そしてその奥に広がっていたのは……メジロ家に相応しい立派な内装、その中央に置かれた立派なテーブル、それに相応しいだけの椅子に腰かけているメジロのウマ娘達が居た。

 

「お先に頂いておりますわランページさん」

 

微笑みながらも令嬢に相応しい作法で紅茶を嗜んでいるマックイーン、この時ばかりはその余裕が恨めしい。ライアンに手を引かれる形で中へと入るととある人の隣に座らせた。

 

「初めてのお茶会ですね、余り緊張しなくていいんですよ」

「いや無茶言わないでもらえますからねラモーヌさん……」

 

メジロの至宝の隣に座らされてしまった。ラモーヌはトレセン学園と変わらぬ感じで声を掛けてくれるのは有難いが、この部屋の空気で平常通りにやれと言うのが無理な話なのである。

 

「いつものようにちゃん先輩で良いんですよ」

「おや、そのようにランページさんに呼ばれているのですか」

「そうなんですお婆様、とても可愛いらしいでしょ♪」

「ええ、貴方が好みそうな呼び方ですこと」

 

直ぐ傍にはお婆様が座っており、ニコニコとしている。出来る事ならば今すぐにでもクロスオーバーステップで逃げ出したい、今ならまだ逃げられる!!と思った瞬間に扉がノックされた。

 

「お婆様、参りましたわ」

「どうぞお入りなさい。ランページさん、これから会う子達とは初見でしたね。皆、貴方と会える日を楽しみしていたんですよ」

「ソレハウレシイカギリデスネ」

「ラン、落ち着いて落ち着いて……」

 

思わず片言になったランページに声を掛けるライアンだが、直後に本当の意味で緊張が一周する事を理解するのであった。

 

「まぁっ其方の方がお話に聞きましたランページさんなのですねお婆様」

「ええそうですよ」

 

それを聞いて嬉しそうにするのはおっとりしつつも儚く、優しく、思慮深く、そして高貴な深窓の令嬢という印象を与える青毛のウマ娘。オグリキャップ、スーパークリークの同期、ラモーヌの妹のメジロアルダン。

 

「初めまして、メジロアルダンと申します。ランページさんの事は伺っています、今日お会い出来るのを楽しみにしていたんです」

 

何処かウキウキとしつつも、何処か自分をキラキラとした瞳で見て来る。如何するべきかと思っていると彼女の後ろから二人のウマ娘が顔を覗かせた。

 

「私達にも挨拶させてほしいな、楽しみにしていたのは同じなんだから」

「そうそう。是非とも話をしたかった」

 

その時強い緊張を味わった。この二人は違う、纏っているものがまるで違う。本質的な物は恐らくラモーヌの方が絶対的に強いだろうが、其方は本人気質故かそこまで強く感じないが……この二人から感じるそれは強く気高い。

 

「色々話は聞いてる、大変だったね。今日は色々な事を話そうじゃないか」

 

何処か温和そうだが、その表情は凛々しい。その凛々しさからは寮長でもあるダイナカリバーとの接戦を勝利した強さが滲みだしている。メジロ家のクラシック三冠競走初制覇を勝ち取り、オグリキャップらとも激突した名馬……メジロデュレン。

 

「お婆様が是非会わせたいと言っていたからね、何とか時間を作ったよ。フム、確かにお婆様が好みそうな子だ」

 

自分を何処か品定めするかのように見つめて来る凛々しさよりも猛々しさと気高さに溢れている。気の強さはこれまで積み重ねた戦いの証、その戦いとはミスターシービーとの激闘。皐月賞、ダービーを2着、ミスターシービー最大のライバルとまで言われていたのも納得の貫録を纏う。そしてシンボリルドルフとまで戦った事もある。怪我の末に引退をしてしまっているが、その勇ましさは全く衰える事がない。メジロモンスニー。

 

「揃いましたね、楽しいお茶会になりそうですね」

 

微笑むお婆様だが、ランページはもうそれ所ではなかった。アルダンだけではなく、デュレンやモンスニーにまで注目されてしまっている。

 

「それでお婆様、私やデュレンを呼んだのは彼女を紹介したいから……という訳ではないですよね?」

「当然それだけではありません、まあそれはお茶を楽しみながらしましょう」

「そうね、折角集まったんだし……ランページさんもどんどん飲んで食べてね」

「はい、有難う御座います」

 

デュレンの言葉に微笑みを持って返すランページ、それを見たモンスニーは感心した。自分とデュレン、何よりお婆様を前にしていい返事をする。声にも震えがない、良い胆力をしている。確かにこれはアサマが好みそうな子だと改めて思いつつも気に入った―――が、

 

「(アハハ~もうどうにでもな~れ☆)」

「(あっやばい、ランってば半分ぐらい壊れてる)」

 

実際は完全なヤケクソだった。




お茶会メンバー

メジロアサマ
メジロモンスニー
メジロラモーヌ
メジロデュレン
メジロアルダン
メジロマックイーン
メジロライアン

何この凄まじい名前の羅列。そしてランページ。スゲェ場違い感。

「帰っていい?」

お婆様に言って、どうぞ。
尚、パーマーさんははヘリオスさんと遊びに行きました。前々から予定入れてた系の神回避。
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