「如何よ此処のハンバーガー!!マジ美味くね!?」
「うわっホント美味し~!!こんなに大きいのにこの値段っていうのも超お得だね!!」
「でしょでしょ!?マジやばくね!?マジ安くて美味くて食べ応えあるとか、テンアゲだよね!!」
「「ウェ~イ!!」」
ヘリオスとパーマーは一緒にハンバーガーを食べながらも一時を楽しんでいた。前々から今日は予定を入れていたので今日のお茶会には出席しなかったパーマー、ランページが地獄を味わっているとは露知らず、ヘリオスと元気にウェ~イと声を出していた。
「にしても良かったん?今日お茶会あるってパーマー言ってたじゃん」
「うん。でも前から予定を入れたなら其方を優先しなさいってお婆様が言ってくれたの、家族の時間も大切だけど家族だからこそまた時間も取れるから友達との時間を楽しみにって」
「おっ~!!パーマーのお婆ちゃんマジ話分かるね!!それじゃさ、今日はお礼になんかアクセサリーとか買ってかない?」
「あっそれいいかも!」
和気藹々とした雰囲気の中、ハンバーガーに被りつくヘリオスと少しずつ食べて行くパーマー。二人はお腹を満たすと早速お婆様へのお土産のアクセサリー選びに精を出すのであった。
「ねねねっこの蹄鉄型なんてよくない!?超かわいくない!?」
「あっ待って待って、これもいいんじゃない?!」
「ああウチもそう思ってたぁ~!!」
「やっぱり、私達やっぱり気が合うよね~」
「「ウェ~イ!!」」
「そうか、全くあのトレーナーも変わっていないか……安心したというか呆れたというべきか……まあシービーとの相性は最高なんだがな」
「それは認めざるを得ませんが、いきなり足を触るのは勘弁してほしいですわ。普通に驚いて蹴ってしまいましたもの」
「あ~分かる分かる、私もやった事ある」
溜息混じりに頭を抱えているモンスニー、マックイーンからスピカの沖野について聞いて溜息を漏らす。現役の頃と全く変わっていない、何をやっているんだと言いたくなる。それに同調するデュレン、如何やら同じように被害に合った事があるらしい。あれでもトレーナーとしての腕前は超一流なのだから困ったものだ。
「マックイーンは何時から本格的にレースに出るの?」
「私は三冠にはあまり興味がありません、なのでトレーナーさんとも相談したのですが天皇賞春を見据えて菊花賞に出るつもりですの」
「へぇっそれじゃあ最大のライバルにアタシがなるって事だね」
「望む所ですわ。同じメジロ家同士、正々堂々と戦いますわよライアン」
「こっちも負ける気はないよ」
メジロ家の御令嬢同士のぶつかり合いという構図、何処か品があって気品のあるバチバチとはこういった感じなのかと言わしめるようなそれに一同は何処か微笑ましそうな瞳を向けていた。同じメジロではあるが同じ家でライバル関係を結べるというのはそれはそれで幸運な事なのである。
「ランページさんはお次は桜花賞だとお聞きました、如何なのですか自信の程は?」
そんな中で遂に自分へと向けられた話題。もう色んな意味で諦めの境地に達しているので話を振られたとしても乱れる事は無かった、というよりももう取り繕う余裕すらないのである。
「自信はない、というのが本音ですよ」
「まぁっ……矢張り緊張されているという事なんですか?」
アルダンからの言葉に素直に自信なんてないと答えた。それにデュレンやモンスニーも視線を向けて来た、加えてアサマも興味深そうに此方を見て来た。此処まで来ると一周どころか数周してしまっているので境地も境地だ、これが天国に到達した気分なのかとすら錯覚する。
「自信なんて物は努力してりゃその内着いて来ます、胸張って生きてれば知らず知らずのうちにそれがカッコいい自分になる。それが自信でしょ」
「まぁっ素晴らしい考え方ですね」
アルダンは微笑みながらも頷いた。メジロ家という名門の高貴や誇りとはまた違った豪胆とも思える考え方は彼女にとっては何処か新鮮だったのかもしれない、そしてそれを見ていたライアンは苦笑しながらも内心で何を言っているのか分からなくなって来てるんだろうなぁ……という事を察した。
「フフフッカッコいい自分か、それなら今の自分はカッコよくないの?」
「いやぁ……自分を客観的に見えるのは苦手で、だから目標を達成出来た時に自分が胸を張れるかで判断します」
「二人目になるつもり満々って事ね♪」
「そうなると、早めにしておいた方が良いかもしれませんね」
ラモーヌの言葉に反応してアサマがカップを置くと一斉に其方に目が向いた。
「何を、お決めになるのですか?」
「私ならともかく、お茶会の為だけにモンスニーを呼ぶとは思ってなかったけど……」
デュレンはある程度、このお茶会の本題について察していた。自分はまだドリームトロフィーを走っている身ではあるが、モンスニーは完全に引退してメジロ家の仕事についている。それを呼んだという事は家に関わる事である事は分かっていた。
「モンスニー、貴方には少し話しましたね」
「ええ。彼女のお家事情の事ですね」
「如何言う事、ですの?」
如何にも話の内容について行けないマックイーン、そしてアルダン。この二人についてはランページのいざこざに関われていないのでこの反応はある種当然の物だろう。そんな中、モンスニーは瞳を鋭くしながらもランページを凝視した。
「私は問題ないと判断します、寧ろ気に入りました。レースも、ウマ娘としても」
「そうですか……デュレン、貴方は?」
「いい子だと思いますね。今度一緒に走りたいなって思える位に」
それを聞いてアサマは笑みを作りながらも改めて此方を見て来た。
「ランページさん―――正式に、メジロ家のウマ娘になりませんか?」
「お、お婆様!?」
「まあっランちゃんがメジロ家に?」
「ランが、家族になるって事!?」
「あらまあ……」
突然の言葉にマックイーンは驚愕、ラモーヌは何処か嬉しそうに笑い、ライアンは困惑しているが何処か嬉しそう、アルダンはシンプルにそんな話になっているんだと言いたげな表情だった。事情を知らぬマックイーンとアルダンからしたらいきなり過ぎる言葉に驚きを隠せないだろうが、デュレンやモンスニーの様子からして何か訳ありなのは察する事が出来た。
「面倒事の心配なら無用だ、其方は此方で処理する。何なら、走っている間はランページの名前のままで走ってもいい」
心配するなと言わんばかりにモンスニーがそう告げる。少し前から言われていた事が遂に本当の事として告げられてしまった瞬間だった。戸惑いを隠せないが、ランページは必死に言葉を紡ぐ。
「俺なんかが本当にそれを名乗ってもいいのなら……俺は、俺は―――私は……名乗り、たい……」
「ラン……?」
ライアンの瞳に映っていたランページが変わった。あの時から変わった彼女ではない、ずっと前から知っていた時の彼女だ。
「もう一度、家族と……一緒になりたい……」
「大丈夫です、貴方はもう―――私の孫なのですから」
そう言われた時、ランは男勝りの笑顔ではなく、正真正銘の少女の喜びの笑顔になっていた。そして直ぐにハッとなると恥ずかし気に咳払いをしてしまった。
「そ、その……これからはメジロ、ランページ……何ですかね?」
「お好きになさい、それを決めるのも貴方次第よ」
「アハハハッ……如何しよう、ライアン」
そして、僅かな時だけ見せたあの時のランはいなくなっていた。それに少しだけの寂しさを覚えながらもライアンは笑顔で言った。
「良いじゃんメジロランページ、カッコいいし」