貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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403話

『東京レース場、第10レースはこの日を待ちわびた方も多い事でしょう。女王を目指すウマ娘達が集うオークス!!本日は天候にも恵まれており、バ場状態は良バ場での発表となりました。この燦然と輝くティアラの舞台で歴史に蹄跡を刻むのは誰だ!!』

 

この日、東京レース場へと集まった人数は10万人を超えて14万人に届きそうな勢い。ティアラ路線はクラシック路線に比べると一段人気が落ちるという印象もあったりもしたが、どこぞの独裁暴君や大逃げターボエンジンの影響もあってか注目度もクラシックと同等かそれ以上になりつつある。その影響も受けてかティアラ路線を目指すウマ娘にとってはこれ以上ないカンフル剤となって益々良い走りが期待出来る。

 

『樫の女王を目指すウマ娘達が府中に集う、このオークスで戴冠するのは一体誰だ!?』

『3番人気は8枠18番ヒシアマゾン、桜花賞でのリベンジを同じチームカノープスのドラグーンランスに果たし女王としての名乗りを上げられるか!?』

『8枠16番オグリローマン、2番人気です。桜花賞2着で涙を流しましたがオークスでその雪辱を晴らす事は出来るのか!?』

『そして1枠1番、桜花賞を制覇せし女王ドラグーンランス!!本日1番人気です、メジロランページ、ツインターボというトリプルティアラに続けるか!?』

 

今年のティアラ路線の中心は昨年のBNWのような三強、矢張りこの三人の誰かがオークスを取るだろうという考えが一般的、だがそれすら飛び越えて誰かがオークスの栄冠を手に居る事だって十二分にあり得るのも事実。何が起きるか分からないからこそレースという物は面白い。

 

『各ウマ娘ゲートイン完了、出走の準備が整いました』

 

スタートの準備が整った、同時に歓声も静まっていき始まりの時を今か今かと時の声を待つ。さあどんなレースになるんだ、どんな走りを見せてくれるのか、誰が覇者となるのか。オークスが今―――

 

『スタートです、綺麗なスタートを切りました。横並びで各ウマ娘走っていきますがその中でもポンと抜け出ているのが1枠1番のドラグーンランス、桜花賞に続いてオークスも制覇するという意気込みに満ちているのかとてもいい走りをしております。そのまま先頭でレースを引っ張っていきます。おっと大外からヒシアマゾンも上がっていく、普段は後方策のヒシアマゾン、今日は果敢にも前に出ていきますがそれに競り合うかのようにオグリローマンも前に出ていく!!』

 

ドラランが先頭に立ってペースを握る、此処までは別段可笑しくはないがアマゾンが後方ではなく大きく前に出たのは初めての事だった。普段は追い込み、せめて差しといった位置なのに今日は先行、それを警戒するかのようにローマンも前へ前へと伸びていく。

 

『先頭はドラグーンランス、その後方にはオグリローマンとヒシアマゾン。今年のティアラ三強が早くも激しい競り合いをしておりますが、ヒシアマゾンはかかっているのでしょうか。普段は追い込みである筈ですが』

 

赤坂の実況にも戸惑いが感じられる、それもそうだ。普段追い込みのウマ娘がいきなり先行策に出たのだから戸惑うのも分かる。

 

「別にかかっちゃいないさ―――ただ、勝つための策さっ……!!」

 

周囲の困惑を他所にヒシアマゾンは駆け抜けていく、彼女はこのオークスを勝つつもりしかない。

 

「アマちゃんが先行策か……」

 

観戦するランページも思わずそれについて呟いてしまった。カノープス時代に彼女の練習を見たり付き合ったりはし続けてきた自分としても先行策というのは珍しいと思わずにはいられなかった。大外の不利を打ち消す為に前に出たのか、それとも……少なくとも南坂はこの作戦を許可したことは間違いないだろう、でなければアマゾンがいきなりこんな賭けのような戦法には出ないだろう。

 

『さあ間もなく第3コーナーの下り坂、先頭はいまだにドラグーンランスが3バ身のリード。オグリローマンとヒシアマゾンはほぼ横並びのまま、その後ろにはサウスプリンス、アグネスパレードと続いております。さあドラグーンランスがコーナーを見事に内ラチに沿うように最短距離を突っ切るぞ、このまま逃げ切る体勢を作れるのか!?さあもう直線に入るぞ、ドラグーンランス先頭!このまま桜花賞に続いてオークスも―――い、いやっそうはならないそうはならない!後ろからヒシアマゾンが一気に上がってくるぅ!!』

 

「さあやるぞっタイマンだぁぁ!!」

 

直線に入った途端にアマゾンは一気にアクセルをベタ踏みにした、一気に加速してローマンを引きはがすようにしながらもドラグーンランスへと迫っていく。先行しドラグーンランスの逃げのペースに着いて行ったとは思えぬ程の末脚を発揮してドラランとの距離を詰めていく。

 

「譲ってたまるかぁ!!」

「貰うんだよぉ!!!」

 

『ドラグーンランス、ドラグーンランスも必死に逃げるがヒシアマゾン驚異の末脚!!ドラグーンランス、もう苦しいか脚が伸びてこないぞ!!ヒシアマゾンが遂に並んだ並んだ!!ドラグーンランスも意地でヒシアマゾンを抜かせない抜かせない!!カノープスの一騎打ちだ、桜花賞に続いてオークスも制するかドラグーンランス、ヒシアマゾンがオークスで雪辱を晴らすのか!!?』

 

ドラランは逃げていた、それは1番を引けたことで包まれることを警戒して前へ出てしまったから。それによって絶好の逃げのポジションを確保できたことでそれに移行したが、アマゾンはその事を素早く察知して先行策に打って出た。スタミナではアマゾンの方がドラランよりも数段優れている、それを読み切ってのせめぎ合いが続く中でドラランがヨレる。流石に脚に来ているのか、内ラチへとぶつかりそうになりながらも最小限のそれで抑えるが―――その隙をついて自分とアマゾンの間に割って入ったウマ娘がいた。

 

「貰うよ、オークス!!」

「んなっ……どっから!!?」

「貴方の後ろだよ、走りやすくしてくれてっありがとうねアマさん!!」

「やって、くれるじゃないかぃ!!!」

 

『此処でオグリローマン!!オグリローマンが文字通り、ドラグーンランスとヒシアマゾンの先頭争いに割って入ったぁ!!さあ三強の争いとなっ……ていないっ!!オグリローマン、オグリローマンが抜け出していく!!ヒシアマゾンも伸びていくがオグリローマンがそれ以上の末脚で伸びていく!!ドラグーンランスはもう厳しいか!!?オグリローマンオグリローマンオグリローマン!!オグリローマンが今っゴールイン!!!オークスの女王となったのはスピカのオグリローマン、桜花賞での借りを返したのはオグリローマン!!2着ヒシアマゾン、3着ドラグーンランス!!』

 

「いよっしゃあああああああっっ!!!」

「っそぉぉぉおっ!!!負けちまったかぁ!!」

「ぐやじぃぃぃ!!」

 

悔しさに溢れた声こそ上げるが、その表情にはそれを全く滲ませていない。寧ろ自分達を破って頂点に立った彼女を祝福する笑みすら浮かべて二人はローマンを見ていた。

 

「負けちまったねぇ……ドララン」

「うん……驕ってたかも……」

「アタシもさ……アンタは警戒してたけど、ローマンはそこまでだったかもしれない……アタシもまだまだ、だね……」

 

同じチーム故にどちらも互いを警戒していた事が決定的な差となったのかもしれない。次はそれを抑えて走らなければならない……合宿でそれを叩き直す、そして―――次こそは勝つという熱意を燃え上がらせた。

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