貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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407話

日本ダービーの勝利者インタビュー。そこに立つ事は間違いなく名誉である事、名トレーナーと言われるトレーナーでも日本ダービーを勝たせる事は出来なかったという者の方が多く、仮に複数回ダービーを取ったのならばそのトレーナーの手腕は確実な物だろう。そんな今年のダービーウマ娘とダービートレーナーはチームリギルの東条 ハナとナリタブライアン、チームカノープスの南坂トレーナーとサクラローレル。再び訪れたダービー同着という結果に大盛り上がり。そんな舞台で二組へのインタビューは矢張り盛り上がりに決まっている。

 

「東条トレーナー、ナリタブライアンさん日本ダービー制覇おめでとうございます!!今のお気持ちは如何ですか?」

「同着ではありますが再びこの舞台に立てた事が光栄でなりません。ブライアンは今のリギルで一番勢いがあるウマ娘だと確信しています、もしかしたらルドルフを越えることが出来るかもしれないと期待を寄せております。彼女のトレーナーで居られる事は嬉しい事、この上ありません」

 

東条トレーナーをしてルドルフを越えるかもしれないというコメントに周囲は色めき立つ、無敗の二冠はトウカイテイオーに続いて3人目、そしてこのままの勢いで無敗の三冠を成し遂げるのではないかという期待も大きくなっていく中でブライアンへとマイクが向けられた。ブライアンはマイクに向けて、自分の思いを語った。

 

「私は……私は勝つつもりで此処に来た。ローレル、私はお前をライバルとして見ていたがお前は私を敵としてしか見てくれなかった。だが今日それが変わったと確信している、次の舞台でお前と戦う事が楽しみでならない―――次は同着では済ませんぞ」

 

勝利への情熱が感じられる、今のブライアンは今までにない程に満ち溢れている。自信と活力、そして次への意欲、ローレルに執着した事が良い意味で彼女に進化を齎してくれた。フローラのようにならなくて本当に良かったと、顔に出さぬようにホッとする。そして次にカノープスの南坂へと向けられた。

 

「昨年のウイニングチケットさんに続いてのダービー制覇、おめでとうございます!!どのようなお気持ちですか!?」

「成すべき事を成してくれた、思った以上の成長を遂げてくれたとローレルさんを称賛したいですね。此処まで大きく成長してくれるとは思いませんでした、ランページさんとは違う意味で予想外ですね」

 

そんな言葉に笑いが起きる、ランページを引き合いに出してこんな風に笑いを取れるのは恐らく彼だけに許された特権だろう。そしていよいよサクラローレルへとインタビューが向けられる。

 

「こうして此処に立てた事は非常に光栄です、私の目標の一つが達成できたと言っても過言ではありませんから」

 

矢張りクラシック三冠の一角を制することが出来た事に関するコメントが取れた、しかもダービーだ。これは感無量に違いない―――と皆が思う中でブライアンだけは気付いていた、ローレルの顔が既に次へと向けられている事に。

 

「次は矢張り菊花賞ですね、無敗の三冠が達成されるのかそれとも二冠が並ぶのかの対決となる訳ですがそれに対するお気持ちを―――」

 

聞いて当たり前の質問、クラシック戦線を駆ける上でされるのが当然の質問だったそれを途中で切断するようにローレルが手を上げた。そして胸を張りながら堂々と宣言した。

 

「私、サクラローレルは凱旋門賞に挑戦します。なので菊花賞には出走しません」

 

その瞬間に世界が凍り付いたと言ってもいい、東条トレーナーもブライアンもその言葉を聞いて固まっていた。記者たちも固まっていた、唯一固まっていなかったのは南坂とローレルだった。ローレルはそのまま続けた。

 

「私の目標は最初から定めていました。私の両親が出会ったフランスの地、そこで行われる最高峰のレースである凱旋門制覇。それが私にとって最大の目標でした」

 

確りと話を聞けているのか分からないが、ローレルはそのまま続けていた。

 

「当初の予定では、私の挑戦はシニアを予定していましたが南坂トレーナーがダービーで十分な走りをする事が出来たのならばクラシッククラスでの挑戦を許可してくれるとの事でした」

「っ……成程な、私を敵だと認めていながら私を見ていなかったそういう事か……私を、使ったな、自身の実力を計る為の競争相手にしたのだな……!?」

「はい。同期の中でもブライアンちゃんの実力は飛び抜けていましたし、確実にシニアクラスの実力が既にある。ならばそれを越える為の走りが出来たとしたら……?」

 

此方を見つつも淡々と事実だけを話し続けるローレル。競争相手として最適と判断されたのだ、自分を高めるライバルとしても実力を判断するためとしても。南坂を納得させるならばレースでブライアンとの走りで判断して貰うのが一番……東条も上手い手だとすら思った。皐月賞もそういう事だったのかと納得すら覚えた。

 

「だから、お前は菊花賞に出ないというのか。私はもう用済みだというのか」

「―――違うよ、私は貴方に勝ちたいから凱旋門に行ってくる」

 

ブライアンは悔しそうにしながらも屈辱に耐えるように歯を食いしばってローレルを見ながら言った、だがローレルの返答は全く違った。その瞳は自分を観ていた。

 

「今日、ダービーを走って私は勝つ気しかなかった。ランページさんに無理言って一緒に走って貰ったりしてた、正直言うと途中まで私はランページさんとレースをしてたつもりだったよ。でも―――途中から貴方と走ってたよ私は、私は貴方に完璧な形で勝ちたい、そんな自分になりたいの。だから凱旋門に行く―――ナリタブライアンに勝つサクラローレルになる為に」

 

間違いなく、ローレルはブライアンをライバルとしてその名を呼んだ。そして今度はライバルに負けたくない、勝つために凱旋門に挑戦すると言ったのだ。そんな彼女にブライアンは笑った。

 

「ハッ……世界一のレースが私を倒す為に必要か……望むところだ、なら宣言しよう。私は必ず菊花賞を取り無敗の三冠を達成する、その上で有記念で雌雄を決しようじゃないか。私は今日の何倍も強くなってお前を待つ。私が倒すに相応しい存在となって帰って来い、サクラローレル、お前と全力で勝負させろ!!」

「望むところだよ、今日みたいな決着は絶対にあり得ない。今度こそハッキリさせようよ、私か、貴方か、何方が強いかをさ」

 

気付けば、その場の全員が飲まれていた。ローレルの凱旋門挑戦に言葉を失っていた、だがそれ以上に滾る物があった。ライバルと認めていた相手は自分を競争相手として見ておらず、叩き台として見られていた。だがそれを自らの走りで覆し、今度は勝つ為に世界一の舞台に挑むという、それは最強のライバルとして認められた宣言と変わりない。握手を交わした二人にフラッシュが焚かれた、ナリタブライアンとサクラローレル……その決着は、12月に繰り越されることとなった。

 

無敗の三冠となり待ち構える事を約束したナリタブライアン。

 

世界一の舞台へと向かい、強くなる事を誓うサクラローレル。

 

この二人の激突は何を産むのか、そして―――今年のクラシックはさらに過熱していく事となる。

 

 

「漸くブライアンさんを見てくれるようになりましたね、既に引退している貴方ばかりを見ていられたら困ってしまいますから」

「南ちゃんも悪い奴だねぇ、ブライアンに惹かれないとか言ってた癖にローレルのライバルになるって事は分かってたんだろ?」

「勿論。ローレルさんが自分を観ていないと分かれば更に強くなることも分かっていました、そうなれば彼女もまた上を向く。時間はかかりましたけどね」

「やれやれ、計算高いというかなんというか、参ったよ南ちゃん」

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