貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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415話

プレアデスの合宿は矢張りというべきかレベルが違う物となってしまった。去年は去年で海外からの挑戦ウマ娘という幸運も重なって招待する事も出来たが、今年は今年でランページは悩んだりもした。どんな人が今のプレアデスには必要なのかを考えた時に最後まで残ったのがマルゼンスキーとタマモクロスだった。

 

「ほれほれっついてこんかい!!こんなのまだまだウォーミングアップや!!」

 

中長距離においてはオグリキャップと死闘をし続けた白い稲妻、精神力という点においてトレセン学園でも有数のタマモクロス。

 

「さあさっお姉さんについてらっしゃい、行くわよ~!!」

 

短距離マイル中距離までカバーしつつも圧倒的な走りを未だにし続け、技術も洗練されたマルゼンスキー。

 

「オラオラきっちぃ走りやがれぇい!!」

 

芝ダートの両刀のオールラウンダー、文字通りの暴力的な走りの中に余す所無く技術があるサンデーサイレンス。結果的にこの三人にお願いする事になった。タマの存在は有難くマヤの基本的な戦いの場となる距離のスペシャリストでもあるしマヤに足りない精神的な部分を刺激することが出来る。一方でマルゼン姉さんには短距離のタイキだけではなく大逃げの先輩としてスズカやサニーの相手までさせてしまう事が申し訳ないが……本人が快諾してくれたのは助かった。

 

「オラオラオラァ!!如何した如何したこのまま降参しちまうか、たっぷり休憩しちまうかぁ!!?」

「ンな訳、ねぇだろうがぁ!!!」

「だったら根性出して走りやがれ!!」

「上等じゃねえか、クソサンデーサイレンスがぁ!!!」

 

スぺを指導するという名目でこの合宿に乗り込んできたサンデーサイレンス、元々彼女が見つけてきたウマ娘で資格がないからプレアデスに委託した形になのだが……そんな彼女の御眼鏡に適ったウマ娘がもう一人いた。ステゴことステイゴールドであった。

 

「うぬっ!?こいつ生意気なぁ!!」

「さっさと俺の前から消えろってんだ!!」

「誰が消えてやるかぁ!!テメェが消えろやぁ!!」

「んだと、くそがぁぁぁぁ!!!」

「「あああぁんテメェ舐めてんのか!?上等だぁ!!!」」

「ひえええっ凄い迫力で怖いよお母ちゃん~!!?」

 

スぺの目の前で行われているそれは走りながらの罵り合い、実馬は凄まじく気性が荒い事でも有名だったがそれはウマ娘でも変わらない。というか人の言葉が喋れるという事である意味その気性難が十全に生かされてしまっている感がある。言葉一つ一つに重みと荒さが滲み出ており、相手に向けて殺気のような物まで飛ばしながら叫ぶために後ろにいるスぺとしては怖いなんてものではない。最早ヤクザのそれと同義だろう。

 

「あ~あ……スぺちゃんってばなんか凄い事に巻き込まれてるわねぇ……」

「噂には聞ぃとったけど聞きしに勝る気性難っぷりや。」

 

マルゼン姉さんやタマも思わずそちらを見てしまう程の迫力がそこにあった、もうあそこに巻き込まれてしまったスぺが不憫でならない。

 

「大阪だとあんなの日常じゃないんですかい」

「大阪をなんやと思うとるんやランページ」

「ヤクザの本場」

「ゴラァッウチの地元をなんやと思うとる……アカン、こんな反応するからそうだと思われるんや……」

 

何方かといえばランページのその意識は大阪の四課はマジでヤクザ顔負け云々というのを聞いたからである。

 

「お二人から見て、ステゴは如何思います?」

「ハッキリ言うと……その気にさせる事さえできれば敵無しかもね、まあそれが一番難しいって感じがするわ。元々基礎的な肉体レベルは相当な物なのにランちゃんがそれに輪を掛けて基礎練させてるからとんでもない事になってるの」

「そうやなぁ……問題はモチベ、如何いてもやる気ぃ持ってレースに望ませるかが問題やな」

 

二人から見てもやはりそこが問題なんだなぁ……と思い知らされる、こうなるとやっぱり互いに争わせる形式にしてよかったと思ってしまう。素直な事を言ってしまうとステゴは並の相手ならば本気を出さなくても勝ててしまうだろう、だがそれがレースに対する興味を失せさせてしまいその物への意欲を著しく削ってしまう恐れもある。だからこそ望ましいが強者とのぶつかり合い―――それをチームメンバーで代用するか、海外に向けての調整を主にするべきか。

 

「考えてない訳でもないですけどね―――まあそれはトレーナーの仕事な訳ですんで、姉さん達はスズカ達を頼みますよ」

「んっ~お姉ちゃんに任せて了解よんっ♪はぁ~んスズカちゃんにサニーちゃん、ドーベルちゃん、タイキちゃん休憩終わり。さあもう一回行くわよ~!!」

「は、はいっ……!!」

「ぬぉぉぉっ負けて堪るもんかぁ……!!」

「私だって、私だってぇ……!!」

「私だって、負けまセーン!!」

 

走りだしていくマルゼンスキーを追いかけるように走りだしていくスズカ達、逃げとマイル戦線が主なウマ娘を担当して貰っている。そんな様子を見つつタマも振り返る。

 

「ほらっ何時まで休んどるんや!!ほらっ行くで!!」

「グッ……はいっ!!」

「マヤも負けないも~ん!!!!」

 

既にデビュー済みのマヤと来年デビューのエアグルーヴを担当するのはタマモクロス。天才肌が故に精神面だけが不安なマヤを徹底的に鍛えてくれるだけではなく、来年に同じくデビューするエアグルーヴにはその厳しさが良くマッチする。何だかんだで彼女との相性はいいのである。

 

「あ~……お~いサンデーさんや、そのままステゴを扱くんなら一旦こっちでスぺ預かるぞ。ステゴ、どうせだそのままサンデーぶっ倒してくれても構わねぇぞ~」

「ハッ聞いたか、ウチのトレーナーからの御許しも出たぜ。テメェを叩き潰して一足先に世界デビューの幕開けにしてやらぁ!!」

「応スぺ任せる!!上等じゃねえか、そんな口を俺のメニューをクリアしたうえで俺と走れたら認めてやろうじゃねえか。世界デビューなんざテメェなんて無理だけどなぁ!!」

『ンだとゴラァ!!やるか!?』

 

「うわぁああんランページさ~ん!怖かったですぅ~!!!」

「お~よしよし、怖かったな」

 

許可が得られると逃げるように此方へと駆け寄ってきたスぺはランページに抱き着いた。その瞳には涙も浮かんでおり余程のあの二人の近くが辛かったのが分かる、実際自分だってあの二人の傍に居るなんて絶対に嫌である。上手い事ステゴとサンデーの双方を焚きつけつつスぺを救って新メンバーを担当する事になった此方に引き込む事に成功する。

 

「スぺちゃん、大丈夫デスよ。ランページさんと上水流トレーナーが守ってくれマスから……!!」

「そうよ、こっちも辛いかもしれないけど少なくとも罵声が当たり前のように飛び交うなんてことは絶対に無いから、ほら確り」

「うわぁああああん本当に怖かったよエルちゃんキングちゃあああん!!」

 

二人に慰められて益々泣き出してしまうスペ、これは後でサンデーに一言言っておかなければいけないな……ある意味で自分がステゴに集中しなくて良くなった分、自由度が増してはいるがこれはこれで問題だ。

 

「はいという訳で、俺と上ちゃんがお前達新人メンバーの相手をする事になった訳です。理由としては君達の基礎を鍛えてしっかりとした土台を作る為、マヤもそうじゃないのか言いたくなるのも分かるがあっちはあっちでデビューするに十分な物を既に作ってあるから無問題」

「改めてチームプレアデスはカノープスの系譜のチームだから基礎を重要視する、地味な反復練習ばかりだと思うけどその結晶が目の前の世界最速最強と言われるようになったウマ娘さんで効果もバッチリだからその辺りは心配しないでね」

 

提示されたのは海の中でのスクワット、砂浜でのボールキャッチ、砂浜ダッシュ。余りにも基本的な物だが―――一つ決定的に違う物がある。

 

「あの……如何してランページさんはタイヤを繋いでるんですか?」

「いや合宿中は俺も鍛えるからな。俺はこのまま海に入って2時間は歩く、その間もちゃんと目は光らせとくから安心しとけ。上ちゃん一応頼むぜ」

「分かってるよ、君も大変だね引退してるのに」

「今年のレジェンドレースもあるからねぇ……大変だぜ」

 

そう言いながら一足先に海へと入ってタイヤを引いたまま歩き出すランページ、それを見て三人はお互いに頷き合いながらも上水流に向き直った。

 

『ご指導お願いします!!』

「うん宜しくね、俺も俺で精一杯サポートするから頑張ってね。それじゃあまずはボールキャッチから始めようか」

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