貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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416話

プレアデスの合宿で基礎的な部分を徹底的に鍛える事は聞いていた上に普段の練習でも基礎練習が大部分の時間を占める時間を送ってきたスぺ、キング、エル。他の友達が自分達とは違う練習をしているのを聞いて羨ましがったり、その結果の果てが世界最速最強だと思い直したり、改めて練習に励んだりと様々な時間を過ごしながらも基礎練習を行い続けていた。そのお陰もあってか教官の授業でもその結果は如実に出ていた。

 

『抜きんでてるのはスペシャルウィークさん、キングヘイローさん、エルコンドルパサーさんの三人……貴方達、無茶な練習とかしてないわよね?』

 

教官の授業でもその結果がタイムに現れていて驚かれ、何か無茶をしていないのかと心配もされたが実際はその真逆。基礎的な事を何度も何度も繰り返す事しかしていない。教官がそれを聞いて本当に……?と怪訝そうな顔で尋ねて来たのは印象的だったのを三人はよく覚えている。

 

『スぺちゃん、本当にプレアデスだとそういう練習しかしてないんですか?』

『うんそれだけって事じゃないけど基本こういう練習ばっかりだよ。ツルちゃんもじゃないかな?』

『あれ話した事あったっけ?うん、私もそんな感じ』

 

カノープスに所属しているツルちゃんことツルマルツヨシにも話を振ってみれば同じような答えが返ってくる、彼女も彼女で記録は良いが矢張り三人と比べると見劣りする感が否めないが……身体が弱い彼女がそのタイムを出せている事が凄い事に教官は気付けておらず、南坂の凄さを理解出来ていない。

 

『でも、うちの沖ノッチトレは色々教えてくれるけどね~なんか方針が違うんだね~』

『おハナさんもこれからを見据えて色々な事を教えて下さってます、勿論基本は確りとですが。プレアデスとカノープスはそれ以上な感じがしますね』

 

スピカに所属しているセイウンスカイにリギルのグラスワンダーから見てもプレアデスとカノープスの基礎重視は些か行き過ぎていると思うが、偶然、授業の手伝いをしていた黒沼トレーナーがそれを訂正した。

 

『それは違うな』

『何が違うんですか?』

『お前たちの素質を見せられればトレーナーであればその才を引き出したくなる、故に応用に偏りがちになる事が多い。沖野と東条はそんなことないだろうが……より幅広く尖った強さを作り上げようとする。南坂とランページはそれにある意味で眼中にない』

 

天才型と言われる逸材を見れば指導者としてその強さをより一層高めたいという欲に駆られるが二人は寧ろ才能に別の意味で興味がないのだろう。基礎を重視するのは後々に大きくするための準備期間、そして怪我をさせない為。

 

『応用は分かる奴からすれば一発だ、だが基礎はそうは行かない。基礎は時間と比例する、そしてやればやるだけ伸びる』

 

そんな黒沼の言葉に教官ですら納得してしまっていたがその通りだと思った。その言葉を聞いてから益々三人は真剣に基礎訓練に明け暮れるようになった、周囲からプレアデスの練習は地味だのなんだのと言われても気にする事なく……

 

「フゥッ……よし一旦休憩!!」

『ハ~イ……有難う御座いました!!』

 

練習メニューを一通りに終えたので上水流トレーナーが休憩コールを出すと三人は一例をしてから設置された大きめのパラソルの下に腰を落ち着けた。砂浜ダッシュにボールキャッチ、波を受けたままのスクワットなどのメニューは確かに地味ではあるが真面目に終わらせた。

 

「それにしても……ランページさん、まだ歩イテマス」

 

汗を拭いながらも視線の先にはいまだに海の中に入ったままタイヤを引き続けているランページの姿があった。自分たちが一連のメニューを1時間半を掛けてじっくりとやっていたが、ランページはその間黙々とタイヤを引き続けていた。海は荒れているとまでは言わないが、それでもサーフィンを嗜む者にとってきっと楽しめる程度には波が大きな日。波によって大きくタイヤは動いてランページの体勢を崩しにかかるのだが、時折止まりはするものの彼女はブレる事もなく歩き続けている。

 

「私達も何時か、ああいう感じのことするのかしら……」

「私似たような事ならやった事あるよ、お母ちゃんが乗ったタイヤを走って引っ張るの!」

「スペちゃんも中々に凄い事、やった事あるデスネェ~」

「でもお母様が練習に付き合ってくれるなんて素敵じゃない」

「えへへ~お母ちゃんトレーナーとかじゃないのに一生懸命に考えてくれたの、一回お母ちゃんの部屋で凄い量の参考書とか栄養学の本があって私の為に……って分かって私も一生懸命にやったの」

 

それを聞いてキングは本当にスペが羨ましくなった。自分の母もそんな風にしてくれたらよかったのに……と思わざるを得なかった。そんな三人に上水流が差し入れとしてドリンクが差し出された。

 

「ほらっ水分補給は確りね」

「あっありがとうございます上ちゃんさん!!」

「流石上ちゃんトレーナーデース!!」

「んもう二人とも!!有難う御座います上水流トレーナー」

「その呼び方はなぁ……まあ好きにしてくれていいかな」

 

ランページが基本的に上ちゃんと呼ぶせいで上水流トレーナーの呼び方は上ちゃんトレーナーだったり上ちゃんさんと色々とバリエーションが豊富。そこまで気にはしていないが、先輩トレーナーからは舐められるだけだからやめさせろと言われたりもしている、まあこれはこれで慕われている感じがするので当人的にはOKらしい。

 

「上ちゃんさんから見て私達ってどうですか?」

「俺から見て?」

「エルたちセクシーデショ!?」

「あっそっちか」

「真面目にしなさい!!」

「ヘブッ!!?キ、キングそのハリセンどっからだしタデス!?」

「グラスさんから渡されたのよ、貴方がバカな事を言ったらこれで止めてって」

「グラスはエルになんか恨みでもあるデスカ!?」

「ソース云々でありそうだよね」

「スぺちゃん!?」

 

本当に彼女たちは賑やかだ、女三人寄れば姦しいと言うが彼女たちのそれは本当に楽し気でほのぼのとして空気に満ちている。まあトレーナーとしては真面目に答えよう。

 

「そうだね、三人とも全体的にかなりハイレベルなのは間違いないよ。デビューまでどこまで伸ばせるか本当に楽しみでならないけど、同時にこれほどの逸材を抱えた上でスケジュール管理までこなすランページの底知れなさも同時に感じてしまうよ、だって彼女あれで一応引退してるんだぜ?信じられないよ」

「本当にそうよね……今年のレジェンドレースにも出るから鍛えるんだから本当に凄いわ」

「デモ、ランページさんってシンザン鉄、何時も使ってマスデスよ」

「私あれで全然走れないんだけど……」

 

彼女達から見てもランページというのは圧倒的な存在だ。そして絶対的な憧れだ。それは自分にとってもそうだ。

 

「だったらあれの入門を体験してみるかい?この後はスタミナトレーニングで海で泳ぐ予定だけどその前に軽く汗を流すかい?」

「あれの入門体験って……重さはどの位なのかしら」

「普通の蹄鉄の1.5倍程度だよ、この位なら普通のトレーニングでも使われるよ。寧ろシンザン鉄を普通に扱ってる方が可笑しいだけだよ」

「そいつぁ南ちゃんに言う事だな。俺だって最初はビックらこいたもんさ」

 

そんな話をしていると海からランページが上がってきた、タイヤを結んでいたロープを外してタイヤを積み終えるとドリンクを飲む。競泳水着を纏っているが、三人はいまだに現役時代と変わりない肉体美にゾクゾクする。

 

「ほらっシンザン鉄の元締めと縁深い大将様のご登場だ」

「誰が大将だ、ンで何の話だったんだよ俺の悪口か?」

「いやいやいや滅相もございませんですよ、暴君様の悪口なんて恐れ多くも口に出来る筈も御座いません」

「それ言ってくるマスゴミとか俗物共って本当に何なんだろうな」

「社会の産業廃棄物でしょ」

「新人三人衆、見なさいこのトレーナーだって凄い事言うと思いません?」

 

そんな寸劇も一瞬で出来る辺り、上水流もランページのやり方に相当に染まっている。そんな光景に思わず三人は笑うとランページもつられるように笑いながら言う。

 

「ほれっ次は俺が面倒見てやるからジャージに着替えて着いて来い、走るぜ?」

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