貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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417話

合宿は問題なく続けられている。サンデーサイレンスはステゴと張り合い続けているが、その分ステゴの伸びもいい。だがあれだけ自分が鍛えると豪語していたスぺを自分に預けたままで良いのだろうかという気持ちがない訳ではないが……まあそのうち思い出すだろう、それはそれでスぺには不幸かもしれないが……まあサンデーは考えていなさそうで考えている事もあるので、今の段階ではランページに任せた方が自分で鍛えるよりも良いかもしれないと判断している、かもしれないし違うかもしれない。

 

マルゼンスキーが受け持つスズカ、サニー、ドーベル、タイキ。そちらの方も中々に順調らしい、と言っても元々マルゼンスキーは教導者としては向いているかと言えば向いていない。何方かと言えば超上位の実力者としてぶつける方が正しいが―――

 

「マルゼンスキーさんの此処なんだけど、身体の使い方がランページさんとは少し違うけどこれはいいやり方だと思うの」

「あ~成程、ランページさんの場合はパワーで支えてる感じだけどマルゼンスキーさんのはテクって感じだもんね」

「そうなると次はこんなアプローチは如何かしら。あ~でも比較はいるのかしら……?」

「それなら、私がランページさん役ヤリマース!!」

 

基本的にマルゼンスキーは細かな指導はせずに自分の走りから盗んでみろ、という方式を取っているのだがスズカ達はそれをくみ取って自分達でマルゼンスキーの走りを研究して自分達には何処を組み込めるのか、これは難しいのかを自主的に研究を行ってそれを話しに来てくれるという。積極的にコミュニケーションを取ってくれるのは彼女としても有難く、今度はこうするから考えてみてと次々と自分で考える問題を投げかけているとの事。

 

「芝の流れ、向き、状態、行ける―――加速するっ!!」

 

その結果として表れ始めているのがスズカのコーナリング技術の向上。ランページの芝の下の地面を捉えて走る走法は出来ないので別側面からのアプローチを続けているスズカ、そんな彼女にとってマルゼンスキーの走りは打ってつけだった。体重移動を行いながらも芝に逆らう事もなく、芝に脚を捉えて貰いながらもコーナリング時の負担を軽減して最短距離を一気に突き抜けるという技術が開花し始めている。

 

「う~ん今のは中々だったわね!!でもまだまだ荷重移動が甘いわね、移動に身体が付いて来れずにフォームが崩れてるわ。体幹を鍛えていきましょう」

「はっキャッ!?」

「スズカ~やりまシタネ~!!!」

 

一瞬だけ成功したそのテク、それを見た時にタイキ達は大はしゃぎだった。ほんの僅かな時間ではあるもののスズカがマルゼンスキーに迫ることが出来たのだ。

 

「やったじゃんスズカ!!これ私たちにとっても大きな一歩だよ!!」

「そうよ、私たちのこれからにも大きな意義があるわ!!」

「YES~!!!Good job スズカ~!!」

「分かったから抱き着かないでタイキ……!?」

「青春ね~♪」

 

 

エースを呼ぶことも考えていたのだが、如何やら答えを教えずに課題を与えるタイプとよく考えながらも仲間で相談してその答えを直ぐに聞きに行ける社交性の高いチームとなっていた。そして次は有る意味で一番心配なマヤヤとエアエアの二人を受け持つタマ。

 

「その程度でウチに勝つ?片腹痛いわ!!」

「ええええっ!!?」

 

「ほんでランページのティアラ路線を目指す、ハッ寝言は寝ていえや!!」

「くっ何だこの末脚は……!?」

 

まず、タマは二人の能力を走り込みなどで把握すると直ぐに実戦形式のレースを開始した。と言ってもエアグルーヴはまだデビュー前なのでマイル、マヤは予定しているホープフルステークスの2000m。そこで完膚なきまで二人を叩き潰したのであった。幾ら素質溢れる二人と言っても海千山千のウマ娘、あのオグリと死闘まで演じたタマモクロスに敵う訳もない。だがそれでもある程度は食い付ける筈だと思っていた自分を叩き潰された気分だろう。

 

「確かに強い、だが強さには際限はない。上には上はいる、ランページが何で強いか分かるか。常に上を目指し続けてるからや、今もそうや、あいつは常に向上心を持ち続けてる。だったらその教え子はどや、同じように強くある事が求められる。自分らが弱かったらどうなる、ランページが守ってくれるか、せやなきっと守ってくれるやろうな、それで満足か、情けないと思わへんのか、自分で守ったる位の気概で強くなれ!!」

「マヤがランページさんを守る……守って貰うだけじゃない……」

「甘えているのか、私は……くっタマモクロスさんもう一本お願いします!!」

「マヤも……マヤも!!トレーナーちゃんに胸張れるキラキラになれないもん!!」

「言うだけなら誰にも出来る、走りで証明してみせぇい!!」

「「望む所ォ!!」」

 

 

「やり過ぎっすよタマさん……」

「いやぁすまん、気合入ってもて」

 

夕食後の席で二人からトレーニング中の話を聞きながら思わずランページはため息交じりにジト目でタマを見てしまった。確かに精神的な強さを身に着けてほしいとは思ったがそこまで追い込むのは予想外だった。

 

「あらあら、そっちはそっちで熱血だったのね。でもそれは正しいと思うわ、結局の所レースって自分との戦いだしプレアデスの方針的にこれまでは仲間だけどいざレースになると敵になるんでしょ?そうなると精神的な強さは必要になってくると思うの」

 

そんな風に語るマルゼンスキーには同意しか浮かべられないが……タマはお茶をすすりながら言う。

 

「トレーナーと二人三脚で走ってきたウマ娘が一番躓きやすいのがレースだと一人って事やねん、物理的な距離は精神的な繋がりも絶ってまう」

「同感。助けてくれるパートナーの存在がないって結構キツいのよね」

 

そういう物なのか……と逆に自分は思ってしまったがランページの人生経験的に孤独には慣れっこだったのだから南坂と離れた所で不安になる訳がなかったのだ。なったとすれば欧州遠征の初戦直前のあの時ぐらいだっただろう。

 

「そうか、それは確かに……盲点だったかも、有難う御座います」

「ええよええよ気にせぇへんで。後輩が困ったら先輩が助けるのは当然の事、なんや世界最速最強と言われてもトレーナーとしてはまだまだやな」

「これでもまだ2年目の新米なんですぜ?お手柔らかにお願いします」

「フフッそれじゃあそんなランページちゃんの為にお姉さんも一肌脱いじゃうわよ」

「おっセクシーな姉さんが脱ぐとか凄そうだ」

「いやんまいっちんぐ♪」

「いや古いわっ!!!何年前のネタやと思うてるん!?」

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