貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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42話

誰かが言っていた、時間とは進む所まで行ったらどうなるのだろうか。一周するのだと。正しく時間とはその通りなのだろう、季節は進む、巡り巡って来る物が再びまたやって来るのである。一年が過ぎ去って、トレセン学園に春がやって来た。新しい生徒がやって来るというのもあるが同時にウマ娘にとっての聖戦のトゥインクルシリーズも新たな時代を迎える。それが春、様々な始まりの時。

 

「ランページさん、届きましたよ」

「おっ来た?」

 

そんな春を迎えたカノープス、その部室へと荷物を持ってやってきた南坂。部室内では新メンバー確保の為にカノープスを宣伝する為の看板を準備したり、チーム紹介の為の原稿を書いていたりなどを行っていた。

 

「何々、何が来た訳?」

「俺の勝負服の修正だよ、ホラッ俺メジロ家に入ったからメジロのカラー入れないと不味いだろ」

「あっそっか、ランさんってばメジロ家になったんだもんね」

「そゆこと~南ちゃんサンキュ~」

 

受け取った荷物には勝負服の白シャツが入っている、そこにメジロ家の勝負服に入れられる色の緑が加えられる程度の簡単の修正ではあるがそれはこの勝負服の話。

 

「まあもう一つの勝負服は全体的に改修されてるけどな」

「もしかして表彰式で貰った奴?」

 

ネイチャの言葉に正解、と示す。絶対に着ないと誓って衣装箪笥の奥深くで眠っていたそれを引っ張り出してメジロ家流の物に変えて貰うようにお抱えのデザイナー事務所にお願いしたのである。其方は簡単な修正で済ませる事が出来た現勝負服と違って完全に作り直す勢いで改修するらしいので暫くかかるとの事、尚、この事をURAに申請した時にデザインしたデザイナーチームは膝を突いて項垂れたとのこと。

 

「そりゃ項垂れるでしょ、プライドズタズタになってんじゃない?プロのデザイナーって意見聞かずして本人が望む物を作ってこそって一流って聞いた事あるし」

「んじゃURAのデザイナーチームが二流だったってだけの話だろ」

「うわ、辛辣」

 

まあ下手に聞いたら表彰されるウマ娘がバレるという事もあるから下手に聞けないのだろうが、そんな状態で作るなら表彰してから希望を聞いて作ればいいのにと思わざるを得ない。

 

「にしても、もう今週なんだよね~桜花賞」

「うぅ~どっちが勝つんだろうね」

 

そう、今週末の日曜日にはティアラ路線の初戦の桜花賞が開催される。ランページとイクノは当然それに出走予定なのだが、ジュニア王者のランページの独裁が此処でも巻き起こるのかと話題になっている。

 

「まあそっちも気になるだろうが、兎に角こっちも仕上げちまおうぜ~。まあ俺かイクノが桜花賞勝てば入部希望者増えるかも知れねぇけどな」

「おおっ!!確かにそうかも!!」

「最高のアピール方法ですね」

 

そんな事を和気藹々と行いながらも―――遂にその時がやって来るのであった。

 

 

阪神レース場、チューリップ賞でも走った身としては余り新鮮味はないかもしれないがあの時とは比較にならないレベルの熱気と活気に溢れていた。それもその筈、今日はトゥインクルシリーズのニュースターが明らかになるクラシック級、ティアラ路線の初戦である桜花賞が開催されるのだから。

 

「凄い活気~!!皆凄いキラキラしてる目で見てる~!!」

「当然だよね、本当の意味でのクラシックの始まりだもんね」

 

そう、此処まで行われて来たレースはこの時から始まるレースの前哨戦と言えるのだから。ジュニアクラスを駆って来たウマ娘達が此処で更なる鎬を削る、パドックにいるウマ娘達もこの日の為に頑張って来たと言わんばかりの気迫に包まれている。

 

「イクノ~カッコいいぞ~!!頑張れ~!!」

 

ターボの声援が飛ぶ、パドックでは纏っていたフロックコートを脱ぎ捨てるように登場したイクノに声援が飛ぶ。ランページを意識しているのか、彼女のそれは緑と白がメインとなった上品なフロックコートのようなデザインとなっている。ゆったりとはさせずに動きやすさを重視している辺り、イクノの几帳面さが出ている。そんな彼女は3番人気、1番人気はリギルのフローラになっている。

 

「でもなんでイクノが3番なんだろうね、7戦して6勝してるのに」

 

新聞を広げながら疑問に思うタンホイザ、戦績で言えば同じく4戦して3勝しているフローラと同じく一度負けているだけで寧ろ勝利の数では上。それなのに如何して……と首を傾げていると南坂がそれに応える。

 

「所属しているチームの差、ですね。何せフローラさんが所属しているのはリギルですので実績も知名度もカノープスよりも圧倒的なんです、寧ろイクノさんがフローラさんに迫る程の3番人気というのも相当凄いんですよ」

「へぇ~そうなんだ、それじゃ―――」

 

『最後に登場しますは8枠17番、ランページ―――』

 

と聞こうとした時、遂にその時がやって来たとアナウンスが聞こえてきた。視線を其方へと向け直すと幕が開けられてそこに立つウマ娘の姿が見え始めた。

 

『失礼しました。8枠17番、メジロランページ!!本日、2番人気です!!』

 

堂々と胸を張りながら、ゆっくりと歩き出しながらもコートへと手を掛けて勢い良くそれを脱ぐと露わになったのはメジロのカラーである緑がタスキのように走り、腕の部分にも緑のラインが走っていた。そしてランページはあの言葉を口にする。

 

「待たせたな!!」

 

低くも力の籠った言葉に待ってました!!と言わんばかりの歓声が上がった。

 

『チューリップ賞の後にメジロ家に入るという情報が公開された時は私も驚いてしまいましたが、仕上がりは万全と言いたげな程に力が入っていますね』

『家庭環境が激変してしまったが故にメジロ家に入ったと聞いた時は不安でしたがそれでも2番人気。彼女の人気と桜花賞に対する期待が現れていますね。そして―――不安は余計だったようですね』

 

当然と言わんばかりに、ランページのメジロ家の入りは大きく騒がれた。何故そうなったのかと説明を求める声が多かったのだが、家庭環境の激変によりメジロ家に引き取られたという話が伝えられた。それによって彼女に対して不安と心配の声が寄せられたが―――それを払拭するような強く元気な姿にファンは思わず胸を撫で下ろすのであった。

 

「ランページさんの事は言うまでもありませんね、メジロ家に入る際の事でちょっと不安視されてしまったんです。恐らく本来ならば1番人気だと思いますよ、フローラさんにも勝っていますし」

「納得!!ラン頑張れ~!!!」

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