貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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424話

「ハッハッハッ……!!」

 

ターフを駆け抜けるウマ娘、その姿はこの世界においては珍しいものなのではない。だがその走りは紛れもなく、限りある物だろう。王者こそが出来るそれを体現した見事な走りでターフを文字通りに跳ぶように駆ける。軽やかであるのに力強く、屈強にして柔軟、相反する物が融合した走りがそこにある。そんな走りをするウマ娘はラストスパートと言わんばかりに最後の直線で加速した。これまでの走りとは段違いの伸びと加速、そのままゴール板を駆け抜けた際にはストップウォッチを構えていた女性がタイムを確認する。

 

「……うん良いわね。目標達成よ」

「や、やっとかぁっ~……」

 

その言葉を聞いて力が抜けたと言わんばかりにその場にへたりこみながらも甲高い声で疲れた~……と愚痴を零すウマ娘。そんな姿を見ながらもアラアラと笑いながらも手を差し伸べられる。

 

「そんなんじゃランちゃんにはまだまだ及ばないわね、テイちゃん」

「むっ~ランと一緒にしないでよ~、ボクはボクなんだしスーちゃんなんて呼べるのはランぐらいだよ~」

「あらっいいのよ貴方もスーちゃんで、ほらっ呼んで頂戴スーちゃんって♪」

「無茶言わないでよ~!!」

 

駆け抜けていたのはトウカイテイオー、そして手を差し伸べたのはスピードシンボリ。現在テイオーは海外挑戦中で現在はアメリカに拠点を置いて来たるべきブリーダーズカップに備えている。そしてスピードシンボリことスーちゃんは何故テイオーと一緒に居るかと言われたら……テイオーのトレーナーである沖野の代理である。

 

「今更だけどさ~……ホントよく来てくれたよね」

「フフッこれでも結構融通利くのよ、ランちゃんのお陰でね」

 

テイオーの海外挑戦はトレーナーとして沖野も同行したかったのだが……チームトレーナーとしてはそれが難しく、南坂のように代理をお願いする事になったのだがその相手を誰にお願いするかで酷く難航した。何せ海外遠征経験をしているトレーナーも少数だし海外勝利ウマ娘であるランページもトレーナーとしての職務があるので難しい、そんな時

 

『ああじゃあスーちゃんに話通してやるよ』

『『えっ?』』

『……あっスーちゃん、今大丈夫?うん悪いね急に、スーちゃんさテイオーって分かる?そうトウカイテイオー、そうそう学園祭の。うんうん、テイオーが海外遠征するんだけどそのトレーナーをさスーちゃんにさ……あっそうなんだ、褒めるなよスーちゃんってば、はいはいはいは~い有難う、うん俺も愛してるよスーちゃん。うんじゃね~……いいって』

『『何が如何してOKになったの!?』』

 

爆弾をブッ込んだのがランページであった。普通ならば幾らランページの頼みと言えどスーちゃんだって海外遠征は簡単に引き受けてくれないが、相手がもう一人の孫のように可愛がっているテイオーならば話が別だという。加えてスーちゃんには凱旋門とブリーダーズカップクラシック制覇トレーナー、そんな彼女が見込みのあるウマ娘ともに海外に乗り出すのはURA的にもプラスになる事も多いのでOKは出やすい、というかウラヌスがサムズアップで行ってこいと言ってくれた。

 

「でも、これでブリーダーズカップターフに出て良いんだよね!?」

「ええ約束だものね。タイムも良い結果だったしちゃんとアメリカの環境に適応出来たみたいで安心したわ」

「ヤッタァ!!!」

 

これでターボとの約束を果たせる!とテイオーは気合が入る、アメリカのダートは既に日本ウマ娘に蹂躙されたと言っても過言ではない。何せ今年だってセイバーとダイナがやって来て激戦を繰り広げている真っ最中、アメリカはかつての借りを返す時!!と熱狂の渦。そんな中で芝まで負けたらどうなってしまうんだろうな、とスーちゃんは考えながらも改めてテイオーのポテンシャルの高さに舌を巻く。

 

「クイーンエリザベスⅡ世カップにキングジョージⅥ世&クイーンエリザベスステークス、名だたる海外G1を制覇してるのにまだまだ物足りないのね」

「物足りないっていうか、何ていうか納得出来てないって感じかな」

 

テイオーは自分の脚を見ながら言う。

 

「ボクの走りはランと同じ、モンスニーに教えて貰った全身走法。だけどランには勝てない、だから勝てる走りを作り上げたい、そしてターボにも負けたくない。ボクは妥協したくないだけだよ―――ボクはまだ皇帝を越えられてない」

 

その言葉に少しだけ目の色が変わる。シンボリルドルフを心から尊敬し憧れているテイオーがそういう風にいう事は極めて珍しい。憧れではない、ルドルフを倒すべき相手として捉えている良い証拠、テイオーはルドルフに本気で勝つつもりでいる。

 

「G1を10勝、ルーちゃんを超えてると思うけど?」

「それで超えられたら苦労はないよ。ボクはターボと本気で競いたい、そして会長に見せたい、これが―――」

 

『ボクはシンボリルドルフさんみたいに強くてカッコいいウマ娘になります!!』

 

始まりはあのダービーだった。あのダービーから自分はここまでやって来た、だけどまだまだ満足出来ない。最高のライバルとの決着もまだついていない、まだあの人には胸を張って報告できない。報告するならもっと強くてカッコ良くなってから、そう決めている。

 

「ボクがトウカイテイオーだって所を」

 

空を見上げながらそう言い放つテイオーにスーちゃんは頬に手を当てながらもその様子を微笑ましげに見てしまった。とても立派な姿なのは分かる、だがどうしてもこの子の事は孫のように愛しく思えてしまう、ランページとは違って意味で一緒に居たいと思う程に。だったら自分も全力でそれを手伝うとしよう。

 

「それじゃあテイちゃん、ルーちゃんに胸を張る為にもっと頑張りましょうか」

「うんっ!!あっそうだ、どうせならシンザン鉄使わせてよ。というかなんでボク使っちゃダメなの!?」

「だって相性が悪いんだもん」

「使いたい~!!」

「スーちゃんって呼んでくれたら考えてあげる♪」

「ブッ~!!ズルい~!!」

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