貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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43話

『咲き誇る桜が女王の誕生を待ち望む、クラシックティアラ路線第一弾、桜花賞!!』

 

ファンファーレが鳴り響き、ゲート前へと並び立っていたウマ娘達が次々とゲート入りを行っていく。その最中で矢張りというべきか自分は視線を集めている。ある意味当然だ、メジロ家入りした経緯のせいで人気も落ちていたのは精神状態の不安があった。だが実際は不安定とは程遠い、万全の状態だった。

 

『3番人気はイクノディクタス、フィリーズレビューでは見事な走りで勝利をもぎ取っております。同じチームでありますが、打倒メジロランページの代表格です』

『2番人気はメジロランページ。此処まで無敗、メジロ家に入り心機一転と言いたげな程にいい顔をしております。今日も彼女の独裁が起きるのか?』

『そして1番人気はアグネスフローラ。敗北はイクノディクタスと同じく、メジロランページとの戦いのみ。今回は勝つ事が出来るか?』

 

全員がゲートへと入った。そして今―――桜花賞の始まりのゲートが開かれた。同時に歓声がレース場に溢れる、それに背中を押されるようにウマ娘達が駆け出して行く。

 

『さあ一斉にスタートしました、さあ先行争いは―――大外からメジロランページとイクノディクタス!おっとそしてそこへアグネスフローラも参戦だ、このウマ娘達がペースを作ります』

『アグネスフローラはメジロランページを警戒してますね、今回飛び出したのはその為でしょうか』

 

大外から飛び出して行く二人、それに続くように走るアグネスフローラ。矢張りというべきか、この二人は破滅的と言ってもいい程のペースで既に走っている。最初っから遠慮なしのフルスロットル、タイムトライアルでもやっているのかと言いたくなるようなスピード。

 

「今日こそは勝ちます」

「やってみろよイクノ」

 

前方の二人は自分の事なんて露知らずと言わんばかりに軽口を叩きながらも走り続けて行く。その背後を取った、二人並んでのトップ。二人の壁の背後について風の抵抗を極力減らすスリップストリーム、大逃げを打つ二人の対策として考えたのがこれ。

 

「流石おハナさん、いい作戦を与えますね」

「どゆことなの?」

 

思わず首を傾げるタンホイザに答えを与えたのは意外にターボだった。

 

「後ろに付くって事だね、ターボもランと走る時にやった事ある」

「ええそうです、俗にいうスリップストリームです」

 

スリップストリームは前に走るウマ娘の背後に付く事で風の抵抗を減らす技術、風の抵抗を受けずに済むので体力の温存や速度を上げたりすることができる。逃げウマ娘に対する対抗策の一つとして有名な戦法である。

 

「でも何でターボがそれやったのよ、同じ逃げなのに」

「だってランの方が身体大きいんだもん」

 

単純な理由だった。身体の大きさゆえに隠れてしまった事があったとの事、その時は意外と早く走れるし楽になった!!と喜んでこれならランページに勝てる!!と思ったらしいのだが……

 

「ランのあれにスリップストリームやっちゃ駄目」

「なんで?」

「速すぎるから」

 

その疑問にネイチャとタンホイザは首を傾げた。速い相手にやるからこそスリップストリームは真価を発揮するのではないのだろうか?そのような事を思っている間にもレースは続いている。いよいよ800を超えた所、以前としてトップはランページとイクノが争いを続けており、その背後にはアグネスフローラが付いている。このままならば最後にフローラがトップを争ってスピードを上げ続けている二人を抜くと誰もが思う、東条ですらそう思っている。

 

「行けるぞフローラ、そのまま最後まで食らいつけ」

 

対ランページの対策として今日まで必死にメニューをこなしてきたフローラの頑張りを知っている、だから彼女が負けるわけがないとトレーナーである彼女が一番信じている。

 

『さあ間もなく第4コーナー!!このままメジロランページとイクノディクタスが行くのか、それとも後方のウマ娘達が抜き去るのか!?何時アグネスフローラは仕掛けるのか!?』

 

それは唐突に訪れた、第4コーナーに入って遠心力に身体が振られた時に―――フローラが一気に落ち込んでいった。

 

『アグネスフローラが此処で落ちて行く!!フロントパンチが外から抜いていく、その後ろからタイフンパピーが一気に出る!!アグネスフローラ苦しいか!!』

 

「フローラ!?」

 

思わずフローラの故障を心配する東条。だが違ったのだ、双眼鏡を覗き込んでみると彼女の顔は途轍もなく苦し気な物となっており呼吸も酷く乱れている。それを必死に立て直しながらも再び加速していくが既にランページとイクノは遥か先へと進んでいく。その二人の顔を見た時に東条は思わず歯軋りをした。

 

「乱れてない……なんてスタミナなの」

 

背後にフローラという刺客が居るのにも拘らず、二人は全くそれを気にも留めなかったのだ。それ所か互いで争う事だけを考えて更に加速していくのだ、信じられない。途中で抑えるとか呼吸を入れるなんて事を一切考えずに唯々スピードの維持と加速しかしない。それこそが、リギルの誤算だった。

 

オーバースピード。自分の限界速度で走り続けている二人に追走しようと自分も同じだけの速度で走っていたフローラの体力はガリガリと削られていく、そんな速度で二人はコーナーに差し掛かったのに全く外に膨らむ様子が無かった。何故ならば二人はシンザン鉄で鍛えたパワーがあるので十二分に遠心力に抵抗できる、だが彼女はそれが出来ずに、スリップストリームの恩恵を失って避けていた風圧に煽られ失速した。

 

「こっから勝負だぁ!!」

「望む所ぉ!!」

 

肝心の二人はまだまだ行けると言わんばかりに更に加速した、まだ脚を残していたという事実に東条は驚愕しながらも完全にマッチレース状態となっていたそれを瞬きして見逃す事が出来なかった。

 

『最後の直線だ、メジロランページとイクノディクタスがスパートを掛けた!!後ろのフロントパンチとは6バ身程!!さあ一騎打ちだ、何方が制する、何方が桜の女王となる!!?』

 

完全な一騎打ちにレース場は大歓声を上げる、その矛先を全て受けるのがメジロランページとイクノディクタス。それらを受けながら走り両者は一歩も譲らない、何方も冠を渡さないと言わんばかりの疾走に興奮の嵐は止まない。

 

「悪いがイクノ―――譲れねぇんだよ此処はなぁ!!」

 

獰猛な肉食獣のような表情となったランページの瞳に光が灯る、そしてそのまま一気に姿勢を低くするとそのまま……駆け抜けていく。

 

「まさか、これ程、なんて……!!」

 

『メジロランページ、メジロランページだ!!僅かに抜け出した、そのまま少しずつ差が開いていく!!イクノディクタス苦しいか、食い下がるが差を縮められない!!メジロランページがリードを半バ身から1バ身へと広げた!!メジロランページ8連勝でゴールイン!!!2着イクノディクタス、3着フロントパンチ、4着アグネスフローラ!!』

 

大歓声を手にしたのはランページ。これで不安なんて吹き飛んだだろと言わんばかりの笑顔を見せる彼女に益々ヒートアップしていく。

 

『勝ったのはメジロランページ!!今年の桜の女王は独裁者、独裁者メジロランページ!!まずは一冠、独裁者が一つ目のティアラをもぎ取りました!!』

 

「最初のティアラは頂いたぜ、ってこれじゃあ怪盗だな。ハハッまあそんな真似事が許されるのも独裁者の特権ってな」

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