貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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430話

「メ、メジロランページさんあの……」

「あ~分かってる分かってる、やっぱ聞きたいのはそれか」

「ハッハイ……そ、その、申し訳ありません……」

「アンタに謝られても俺は別に何とも思わねぇよ、素直に話して謝ってくれてるんだそれ以上は野暮ってもんだぜ」

 

ランページに投げかけられる質問の中、一人の記者は数名と共に静かに手を上げ続けていた。ランページはその人物を指名するとその記者は申し訳なさそうにしながらも、口を開いた。そしてランページもランページでその質問を察しがついているので何も言わない。

 

『パリロンシャンに日本の花が咲き乱れ!!』

『ロンシャン逆落とし!!』

『日本は世界に届いた!!』

 

様々な名前を冠しながらも発行された記事、それらは全て凱旋門に関するもの。日本のアグネスフローラとサクラローレルによるワンツーフィニッシュ、凱旋門制覇というニュースはあっという間に駆け巡っていった。日本の凱旋門5度目の挑戦、一方はクラシッククラスでの殴り込み、一方はベテランシニアウマ娘の記念旅行と日本では言われていたのにそれら全てを捻じ伏せたと言っても過言ではない勝利と栄光をその手にした。紛れもない日本が世界に届き、足並みを揃えたと言っても過言ではない日―――

 

『百花繚乱、アグネスフローラ凱旋門を踏み台扱い!?』

『次走はレジェンドレース!?』

『アグネスフローラ、メジロランページ以外に興味なし!?』

 

だったのだが、あのド変態ウマ娘が行った爆弾発言は瞬く間に世界に広がった。世界の凱旋門をステップレース扱いしてその栄光を手にしておきながらも興味がないと既にその視線は次のレジェンドレースしか見えていない。ランページのようにドリームトロフィーリーグには進まずにレジェンドレース後は引退するのでは!?と一部では囁かれている。なのでそれに関する意見をぜひとも自分から取りたいというのはあるだろう。まあ……

 

「本音を言っちまえばウチのマヤヤのレースの勝利インタビューでそれ聞くのってどうなんだよ、って思うけどな。ああ、アンタらは違うぜ?他の連中と違って手を上げて俺が指すまで待ってくれてたし好き勝手に喋ってコメント取ろうとしているのに比べたら桁違いに筋を通している」

「恐れ入ります……」

 

そう、この場はマヤの紫菊賞の勝利インタビューの場なのである。マヤにとっての三勝目を記念すべき場所なのに、肝心の報道陣はマヤへのインタビュー所ではなくフローラへの事で頭がいっぱいで開始早々からランページへと叫ぶように質問を連発。これは流石のマヤも臍を曲げてしまっているのか、そっぽを向いてしまっている。

 

「アンタらよぉ気持ちは分かるけどよ、此処が何処だか分ってる訳?此処は、紫菊賞の勝利インタビューの場で勝ったのは俺のチームのマヤだ。それなのに揃いも揃ってマヤへのインタビューガン無視でフローラフローラフローラ、俺もあいつの事は変態だと思ってるがお前らアイツ以下だな、変態以下って何になるか分かる?」

 

炎上なんて全く恐れる事もなく言いたい事だけをズバズバと言い放つランページ、その言葉の全てが報道陣に突き刺さっていく。気持ちは分かる、世界的な大ニュースへのコメントなんて取りたくて当然だ、だが場は弁えるという礼節も重んじる事も出来ない奴らの取材なんて受けるつもりはない。

 

「そこの二社以外の報道陣、テメェらの取材に受けるつもりはさらさらねぇから出ていけ」

「そんな!」

「は、反省しております!!だから取材だけは……!!」

「今更遅いわ。警備員さんお願いしまーす」

 

その声に導かれるように元ばんえいウマ娘の警備員が入ってきてランページがお気に入りにしている二社以外を追い出していく。勿論テレビ中継はされ続けている、逆らう者は強引に追い出していく姿は実に頼もしい。少ししてインタビュー場は二社とテレビクルーのみという寂しい場になってしまったがランページは報道陣を抑えきれなかったインタビュアーに視線を送る。報道陣に圧されて抑えようにも抑えられなかっただけだから彼らに罪はない。

 

「え、ええっとそれでは改めまして、紫菊賞を制しましたマヤノトップガンさんの勝利インタビューを開始したいと思います!!」

 

色々とあったが漸くスタートしたインタビュー、最初こそマヤは膨れっ面のままだったが

 

「マヤ、何時まで可愛い膨れっ面のままでいるつもりだよ。ほらっお前さんは勝ったんだから確りとせんとな、今度は可愛い笑顔を見せてあげないと坂原さんも困っちゃうぜ」

「ムゥッ~トレーナーちゃんの名前を出すのはズルい~……んもう分かった、マヤは子供じゃないんだからちゃんとやりま~す」

「よしいい子だ」

 

機嫌を取る事に成功して漸く臍を曲げるのをやめたマヤはインタビューに答え始めた。その様子を見ながらもこれならばウイニングライブも大丈夫だなと胸を撫で下ろす。

 

「次走の予定をお聞きしても宜しいでしょうか?」

「今回でマヤの中距離の強さには確信が持てましたっというか元々マヤは中距離以上でかなりの強さを発揮出来るって分かってましたけどね、なので次は重賞にチャレンジをしようと思っております」

「となりますと11月に行われる京都ジュニアステークスですね!!?」

「こ、こらそんな大声を出すな新人!?」

 

そんな中でランページが現役時代から気に入っている二社の一社、月間トゥインクルの記者に混ざった一人の女性が凄い気迫と共に大声で質問をしてきた。ランページとも顔見知りのベテラン記者が抑えつけるが、それをも苦にしないような熱意を纏ったまま質問を続ける。

 

「そのつもりです、そしてそのまま―――ホープフルステークスへと進む予定です」

「おおっ!!となると矢張りマヤノトップガンさんの進路はクラシック路線なのですね!?素晴らしいと思います!!マヤノトップガンさんの中距離での強さはジュニアクラスとは思えない程に突出してしますし重賞からを挟む事でランクアップによる空気の違いを慣れさせつつもそのままの勢いでG1獲得に向けて一直線という事ですね!!?」

「だから、お前なぁ!!」

「ええ、その通りです」

 

ベテランは冷や冷やしているが、肝心のランページは笑顔のままだしマヤもマヤで自分のレースやスケジュールについてここまで熱意を持ってくれる人が居る事を嬉しく感じているのか照れている。

 

「新人さんですか?」

「はいっ!!先月入社しました乙名史 悦子と申します!!」

 

やっぱりこの人か……と内心で思っておく。ウマ娘アプリでも出て来た乙名史記者、取材に対しては非常に真摯で高い熱意がある事が特徴……だが、その熱意があり過ぎる為か此方の言葉を拡大解釈する妄想癖があり、そんな事言ってないんだけど?みたいな事になる。悪い人ではない事は分かるのだが……。

 

「今回はオープンクラスでの取材ですので、新人には丁度いい場だと思って連れて来たんですが……すいません」

「さっきの連中に比べたら普通に良い記者だと思いますよ、なあマヤヤ」

「うんっマヤ、あの人なら取材受けてもいいよ☆」

「キャアァァッ聞きました先輩私、マヤノトップガンさんの専属記者に任命されましたよ!?」

「されてねぇよその妄想癖直せって言ったよな!?」

 

これも生中継されているのだが、その事を忘れているのだろうか……空気を変える為にインタビュアーが咳払いしてこの場を閉めようとするのだが最後にランページが一言だけ言いたい事があったので言わせて貰う事にした。カメラに向かって歩き、カメラを掴んで自分の顔がアップで映るようにしながら言う。

 

「フローラの奴が凱旋門を制してレジェンドレースにまた出たいのに関してコメントが欲しいなら言ってあげましょう―――望む所だこの野郎、この独裁暴君は逃げも隠れもしねぇ。生憎俺はそのワールドレコードは更新済みだ、追いついた程度でデカい面出来ると思ったらお角違いだ。決着、付けようぜフローラ」

 

そして最後にその場を見渡しながら、これで満足か?と笑いながら尋ねる。さあ今年もファイナルズとレジェンドレースの時期が間もなくやって来る、チーム運営が忙しくなる前に行われるレジェンドレース、一体どんな伝説が行われるかはまだ、誰も分からない。

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