貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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431話

「ランベージざぁぁぁぁんっ!!!ダキぢゃんとブラちゃんが、口きいてくれなくなりマジだぁぁぁぁ……!!」

「残当だバーロー、ローレルお疲れさん」

「はい、頑張ってきました」

 

日本へと帰ってきたフローラとローレル、残念ながら南坂はターボと共にアメリカへと渡っていった。今頃、スーちゃんとテイオーに合流してブリーダーズカップに向けての準備中と言った所だろうか。兎も角予定していた海外遠征も終了した二人は日本へと帰って来たのだが……トレセン学園に戻って来て早々にプレアデスの部室にいたランページに向けてフローラは号泣しながら抱き着いて来ようとしたので自慢の脚で顔を蹴りながら遠ざけつつローレルを労う。

 

「ブライアン、随分とお前の事見てたぜ。成長したなローレル」

「いえ、これもランページさんが一緒に走ってくれたお陰です。凱旋門2着、私は全てを出し切って満足出来る結果を出しました」

「悔いがないなら結構だ、ほれっ此処に行ってこい。バクちゃんとチヨちゃん先輩がお待ちかねだぜ」

「はい、それでは失礼しますね。あとフローラさんの事お願いしますね」

「されたくねぇんだけどねぇ……」

 

苦笑しつつも頭を下げて去っていくローレルを見送りながらも脚に押されているのに未だに抱き着こうと迫ってくるフローラを一度強く蹴り飛ばしておく。加減はしてあるので怪我はしないだろう。まあしたとしても自分は如何でもいいが。

 

「ダキぢゃぁぁぁん、ブラぢゃぁぁぁん……」

「そりゃ全世界に生中継中にあんな妄言駄弁ればドン引きされて当然だわ、タキオンの奴マジでキレたって俺に電話までしてきたぞ」

 

 

『今回という今回は本気で愛想が尽きかけた……!!ランページさん、貴方からも強く言ってやって欲しい!!』

『お~お~随分と御冠だな』

『ああもうカンカンのカンカン、怒髪天という奴さ!!ポッケが好きなゲーム風に言えば激昂状態さ!!』

 

ああ、ポッケの奴モンハン好きなんだ。今度一狩り誘うか、と適当な事を考えつつも本気で怒っているタキオンを宥めるが全く沈静化する様子がない。当然だ、あの凱旋門を制した事で一度は心の奥底から喜んで姉を尊敬したのに、そこから一気に地獄に叩き落されたのだから。

 

『全く勝った時はマジで泣いたぐらいには喜んだというのにったく……思わず父さんと母さんにあれを勘当しよう!!と申し入れたほどさ』

『そりゃまた、随分キレたな』

 

そのままタキオンの愚痴の捌け口を引き受けたのだが、タキオンは本当に心から怒っているのか何時までも話は続く。途中珈琲を淹れに行く位には続いた。2時間程経って漸く少し落ち着いてきたかと思った頃に思った事があったので聞いてみた。

 

『の、割に俺に対しての文句はねぇんだな。あれを変態にしたのはある意味俺みたいなもんだろ』

『何を言うかと思えば、勝手に変質して変態したのは姉さんだ。貴方を悪く言う程私は愚鈍ではないさ』

『そうか、まあ取り合えず元気出せ。今度ツインテールの店主がやってるエビフライが美味い店に連れてってやるから』

『むうぅ?今の話の流れで何故ツインテールとエビフライが出て来るのか分からないが楽しみにさせて貰おう』

 

 

「如何しよう……このまま私、タキちゃんとフラちゃんに口聞いて貰えなかったら生きていけない……」

「つうかワールドの奴は口に聞いてくれるわけ?」

「ワーちゃんは寧ろ優しかったです!!なんか凄い生暖かい目でしたけど」

 

恐らくだが、タキオンとフライトのキレ方を見て逆に冷静になったのだろう。自分位は優しくしてあげないとこれは姉が壊れるな、というのを察知したのだろう。沖野曰く、ワールドは気遣いは上手いとの事なのでフォローに回ったのだろう。

 

「というかお前またレジェンドレースに出るのかよ」

「当たり前じゃないですか!!ランページさんが確実にレジェンドレースに出れる最後の年ですよ!?」

 

来年以降となるとプレアデスから次々とデビューが始まっていくので自分自身の事よりもチームを優先しなければならなくなる、本格的にトレーナーに専念する必要が出てくる。故にレジェンドレースに確実に参加できるとなれば今年が最後になりそれ以降は不定期となる。

 

「今年も中距離なんでしょ?」

「ハァッ……まあいいか、推薦状は出してやる。来年以降はウーちゃん辺りに推薦状如何するか委任するからある意味でお前も今年でラストだな」

「勝ちますから」

「勝てればいいな」

 

一瞬にして、二人の間の空気は重く冷たい物へと変貌を遂げていた。そこにあったのは凱旋門を制したという世界でも一握りのウマ娘しか得る事の出来ない絶対的な強さを証明する栄光による覇気。そして二人の凱旋門ウマ娘、互いにライバルだと認めた上で絶対に勝ってみせる、絶対に負けないと宣言しあう関係であるからこそ出来る空間が出来上がっていた。それがしばし続くと互いに軽く笑ったのであった。

 

「ああそうだ、忘れる所でした。実はランページさんにお客さんを連れて来てるんでした」

「あん客だぁ?だったらローレルが居た時から待たせちまってたのか」

「一応気を遣って待ってるって言ってくださってますから大丈夫だと思いますよ」

「だとしても頭は下げねぇとな、訪ねて来てくれたのに待ちぼうけじゃ申し訳が立たねぇ」

 

兎も角中に入って貰うように促す事にした、フローラが扉を開けて待っていた御客人にもういいですよ~と声を掛ける。存外に軽い、もしかして自分が思っていたよりはそこまでVIPな客ではない―――

 

「しんゆ~!!」

「おっおおおおっ!!?」

 

入ってくると同時に抱き着いてきたのはなんとアイルランド王室の姫殿下、ファインモーションだった。まさか過ぎる来訪に流石のランページも驚きを隠せない。

 

「本当に久しぶり~!!会いたかったよ~しんゆ~!!!」

「マジか!?本当に久しぶりだなファイン!!1年ちょいぶり位か!?なんだなんだ来るなら来るで連絡位入れろってんだよ親友!!」

「サプライズって奴だよしんゆ~!!」

「ははは、こいつめ~!!」

 

ランページとしては非常に嬉しい来客、ファインがそう思っているようにランページも彼女の事を大切な友人だと思っている。そんなファインの後ろからもう一人、黒服のウマ娘が頭を下げていた。

 

「SP隊長さんじゃねえか」

「お久しぶりですランページ様」

「様なんていらねぇよ、にしてもファインが来るとはまた姫殿下としての仕事か?」

「いえ、今回はファイン殿下個人として来日致しました。実は……」

 

SP隊長こと、ピッコロプレイヤーが言うにはファインは日本のレジェンドレースを生で見たい!!ランページに会いたい!!と駄々を捏ねたらしく、国王陛下も困ってしまったが条件付きで来日を許可したとの事。

 

「ンで、その条件が俺の許可?普通来日する前に取らないかそれ」

「突然すいません……如何しても殿下がランページ様にサプライズをしたいと無理を仰りまして……そしてランページ様がダメだと言ったら直ぐに帰国するのが条件でして」

「あ~……」

 

これは寧ろそれが目的なんだと言うのが分かった。自分がダメだと言えば流石のファインも納得してくれるだろうし、流石に直ぐに帰国と言っても飛行機やらのスケジュールもあるので数日なら日本の観光位は出来るだろうからそれで我慢しなさいという意味合いがあるのだろう。

 

「しんゆ~ならいいっていうよね、よね!!?」

 

そう懇願するが、ファインの瞳は何処か諦観と理解の色が浮かんでいた。自分がどれだけの我儘を言っているのも分かっているのだろう、だから仮にも自分がダメだと言ったとしても自分に会えただけで自分を納得させるつもり気があるという事。一国の姫殿下なのだからここは……

 

「……」

 

そう思うが、後ろのSP隊長の瞳がそう言わせてはくれなかった。如何かファイン殿下の我儘を聞き入れて貰えないだろうか、そう言っている。ファインはランページが去ってからずっとランページに再会した時に立派なウマ娘になったと言って貰えるように努力し続けていた。それはウマ娘としてレースの練習をしていたというだけではなく、姫として相応しくなる為の物にも全力だった。

 

『しんゆ~……会いたいよぉ……』

 

だがそんな日々の狭間で寂しげな表情を作ってランページの名を呼んでいた事をSP隊長は知っている。それだけ一緒に過ごしたあの時間が楽しくて嬉しかったのが分かった。今回の来日、それがランページの一存に掛かっているのもファインの両親もその気持ちを理解しているからこそなんだと訴える。それを言われるとNOなんて言えなくなってしまう。

 

「……ったく我儘な姫殿下になったもんだな親友。しゃあねえな、SP隊長共々俺の家に来い。面倒見てやる」

「ほ、本当?嘘じゃないよね!?」

「ホントだよ、今日はパーティでもやるか。後で買い出しにでも行くから親友も手伝えよ?」

「う、うん!!」

「良かったですねファイン殿下」

「ヤッタ~!!しんゆ~と一つ屋根の下~!!!」

「何処で覚えやがったんだよ、マセたもんだ」

 

こうなったらしょうがない。折角だ、アイルランドが更に日本と親密になれるように尽くそうじゃないか。一先ず理事長に挨拶だけでもしておこう、日本に滞在するならどうせこのトレセン学園にも顔は出す事だろうし筋は通しておかなければ……取り合えず先に外で待ってもらう事にしてからお茶を飲んで落ち着くことにする。

 

「なんか、凄い事になりましたね……本当に大丈夫なんですか、一国の御姫様なんですよね……?」

「俺から後で国王陛下に連絡しとかないとなぁ……まあ何とかなるだろ……」

 

これから色々あるというのに、全く以て自分の周りは賑やかな物だ……さてと、ファインと共に行く前にやる事がある。それは―――

 

「フローラ」

「ハイなんでしょうっ!!?な、何故にアイアンクロー!!?」

 

フローラに対する制裁である。

 

「テメェって奴は何偉そうに下らねぇ内容をあんなに垂れ流しやがってんだ!!!どんだけ姫殿下を外で待たせれば気が済むんだ、あろうことか忘れる所だっただぁ!!?ふざけんのも大概しやがれこの大ボケ畜生の唐変木がぁぁぁぁっ!!!一回ドタマかち割ってその中身吸い出したろうかあああん!!?」

「ギャアアアアアアアアッッッ!!!頭が割れるぅぅぅぅっ!!!ガンダムファイト国際条約第一条に抵触するぅぅぅぅっっ!!!ああでもランページさんに脳みそを吸い出されるならいいかも……ってぎゃああああああ更に力がぁぁぁぁぁぁ!!!!???」

「タキオンの怒り、今俺が変わって晴らしてくれるぅ!!!俺のこの手が真っ赤に燃える!!お前を滅せと轟き叫ぶ!!食らうがいい、タキオンの怒りを借りて今放つ必殺の!!爆熱ッ!!!ランページフィンガァァァァ!!!!」

「怒りのスーパーモードじゃない上になんか他にも混ざってるってギャアアアアアアアアッッッ!!?」

 

「しんゆ~まだかな~♪」

「もう少しの辛抱ですよ」


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