貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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432話

『そうか……矢張り貴方は娘の気持ちを組んでくれると思っておりましたよ』

「〈これはこれは、随分と信頼されたものですな。私も捨てたもんではないようで〉」

『フフフッ貴方の事は親族のように心から信頼しておりますよランページさん』

 

電話の相手はアイルランドの国王様、即ちファインの父親。そんな相手の電話番号が携帯電話の電話帳のページの一つに記載されているランページの携帯、尚、他にはアメリカのトップやらドバイのトップやらのも乗っている。勿論会話は英語。

 

『娘は何れ、日本に留学させるつもりでしてね。その前段階のようなものです』

「〈留学、そうなりますと〉」

『はい日本のトゥインクルシリーズに、その時は是非貴方にトレーナーになって頂きたい。あの子も貴方との約束を果たすために一生懸命だったのですから』

 

海外遠征の折、ブリーダーズカップに参加する為にアイルランドを離れる時にファインに泣き付かれた事があった。その時にランページはある事を告げていた、それは自分は今年いっぱいになったら引退する、だが同時にトレーナーになるから何時か日本に留学しに来い。という物だった。

 

「〈私としては構いません、しかしそうなりますと様々な事が課題に上がりますが〉

『それらについては本格的な留学までに此方で日本政府と交渉をしておきます、貴方と友達になってからがファインは笑顔が増えた。娘の幸せを祈り、その為に尽くすのが親としての使命ですから』

 

それを聞いてランページは心のどこかが少しだけ熱くなった。本当の親というのはこういう人の事を言うのだ、自分の父と母がそうであったように……自分には子供はいない、だが親の心は分かるつもりでいる。自分の中にあるウマソウルがそう告げている。

 

「〈わかりました、その時が来たらファインモーション姫殿下の事はお引き受けします。何だったら海外遠征と称してアイリッシュチャンピオンステークスにでも参加させますよ〉」

『ハッハッハッハッ!!それは良いですな、是非お願いしましょう。願わくば貴方にも来てほしいですな』

「〈可能であればお伺いしましょう、それでは少しの間殿下の事はお任せください〉」

『はい、一杯楽しませてやってください。お土産も期待しております』

 

機嫌よく通話を切った直後にランページは深い深い溜息を吐いた。

 

「……ハァッ……緊張した、怒られなくて良かったぁ……」

 

幾らランページと言えど相手が立場が高ければ相応に緊張はする、今回は相手が親友の父親という緩和される要素はあっただろうがそれでも相手は国王様。緊張は当然だし当てが外れたと落胆されたり、怒られたりしなくて心からホッとしてしまっている。

 

「しんゆ~早くスーパー行こう~!!日本のお店ってどんな感じなのか楽しみ~!!」

「はいはい今行くから待ってろ」

 

そう言いながらインプから出る。理事長には果てしなく驚かれたが、国王の許可さえあればもう怖い物はない。取り合えずは二人の歓迎会の食材の買い出しにやってきている。ファインは以前ランページと一緒に遊びに来た時は中華料理店位にしか行ってなかったので今回は非常に楽しみにしているらしい。

 

「見て見て凄い量のお魚あるよ!!真っ赤っか~あっこっちはピンク!!」

「こうして見ると年相応の子供と変わらんな」

 

カートを押しながら鮮魚コーナーを見てはしゃぐファインを見る、元々が王族なのだからこういった庶民のあれこれは彼女にとってもかなり刺激的な上に興味がそそられるのだろう。加えてここは食に関しては世界一うるさいと言っても良い日本。外国人から見た普通のスーパーは凄いという話なのだから、致し方ないのかもしれない。

 

「あっニンジン!!ねえねえニンジン買っても良いよね!?」

「一応家にも在庫はあるんだぜ?まあいいか、何本?」

「全部!!」

「消費しきれねぇよ、9本までなら許す」

「わ~い交渉成功~!!」

「ドアインザフェイスかよ」

「すいませんすいません、殿下が滞在中に掛かった料金は全て此方で立て替えますので……!!」

「気にすんな、俺だって金は結構あるんだ」

 

隣には黒スーツではなく本人の私服だと思われる服装のSP隊長ことピッコロプレイヤーがいる。彼女も彼女で大変だろうに、ある意味で日本滞在中のファインの安全は彼女に掛かっていると言っても過言ではない。

 

「にしてもよくもまあ隊長さん一人で来たもんだな」

「念の為に部下数名も共に日本入りしておりますが、シフト分けして待機中です。出動メンバー以外のメンバーは日本観光中を堪能中です」

「ある種休暇か……」

「ねえ~お菓子も良い~!?」

「家にはケーキがあるからそれで我慢しなさい」

「じゃあこのラーメンのお菓子だけでも!!」

「はいはい、んじゃ次行くぞ~」

 

そんなこんなでファイン殿下と隊長と共に買い出しをして歓迎会の準備をしたのだが……

 

「ンで、本当にラーメンでいいのか?歓迎会がラーメンって」

「良いの良いの~ラーメンが良いの!!」

 

そう、ファインがご希望した歓迎会のメニューというのはラーメンなのである。確かファインが自分と遊びに行った際に食べたのがラーメンだった、思い出の味こそが日本滞在のスタートの美味にしたい!!というたってのご希望だったので折角なので鍋で作れる煮込みラーメンをチョイスする事にした。そして自宅へと二人をご案内した。

 

「ここがしんゆ~のお家~なんだ~わ~いしんゆ~の御家でお泊りお泊り~!」

「ああ殿下、日本では靴を脱ぐんです!!」

「あっそうなの?」

 

様々な事に興味津々なファインは家の中にある物にも興味を占めていたが、お腹も鳴らしているので早く仕込みをする事にした。具材を素早く切ってテーブルの上にセットした電子コンロの鍋へと投入。そのまま煮込んでいく。

 

「ふ~んふふ~ん♪ラーメンラーメン~メンメンメ~ン、お醤油お塩にお味噌にとんこつ~どんな味の~ラーメンも大好き~しゅきしゅきしゅきラーメメーン♪」

「もう少しの辛抱ですよ、殿下」

「ご機嫌だねぇ因みに今回は味噌醤油味だな」

「なんとっお味噌と醤油の合わせ味!?そんなの美味しいに決まってるじゃん!!早く食べたいよ~!!」

「慌てなさんな、まだスープも入れてないんだ。もう少し待ってなさい」

 

日本に来れた事、ランページに会えた事、日本に滞在しても良い事、レジェンドレースを生で見られる事、一緒にまたご飯を食べられる事などの事が重なってかファインは極めて上機嫌。オリジナルと思われるラーメンの歌まで歌っている。椅子に座って鍋を見つめてウキウキで歌っている姿を見ながらも自分に子供が出来たらこんな感じなのか……という事を考えてしまう。

 

―――人妻ランページさん……ですと!?

 

「……」

「如何なさいましたか、眉間をお揉みになられて」

「なんか毒電波が……」

「あっしんゆ~タイマーなったよ~!!」

「応、んじゃスープを入れて、また煮込みます」

「また待つの~?」

「美味しいものを食べる為には、その前の待つ時間も大切なのだ」

「むっ~待つ~……」

 

 

「野菜たっぷりで美味し~!!お肉も柔らかいし麺も美味し~!!」

「これは、凄いですね。こんな手軽に美味しいラーメンが……」

「つってもこれは鍋煮込みラーメンだけどな、スープはあんま飲むなよ。締めにこのスープで雑炊作るから」

 

そんなこんながありながらもファインとSP隊長は出来上がった煮込みラーメンをランページと一緒に美味しくいただいた。ラーメンだけではなく締めの雑炊にも大満足なファイン殿下であった。

 

「しんゆ~がトレーナーしてるところも見たい~」

「殿下、我儘は……」

「いや許可は取ってるから構わんぜ」

「ヤッタ~!!」

 

ファインの楽しい楽しい日本滞在記はまだまだこれから始まるのであった。ランページとしても賑やかな毎日が過ごす事になるのであった。

 

「しんゆ~お風呂入ろ!!」

「応良いぜ、んじゃ隊長さんファインは俺が面倒見るからのんびりしてていいぜ。流石に3人も入るのはキツいだろうしな」

「申し訳ありません、宜しくお願いします」

 

 

「本当にすいませんでした……」

「ハァッ……もういいさ、姉さんのあれはもう承知の上だったのに過剰反応してしまった私たちの方が悪かったのさ」

「だけどさ、流石にあれはないからホントにちゃんとしてよ。世界的に見ても一握りの存在になっちゃったんだからさ」

「はい、承知して―――」

 

―――わぁっしんゆ~おっぱいおっきい~!!どうやったらそうなれるの?

 

―――んっ~?好き嫌いせずに何でもよく食べて運動してよく寝る事だな。

 

―――凄い凄いお母様の言う事って本当だったんだ!!

 

 

「―――……」

「姉さん……鼻血が出てるが……まさかランページさんで嫌らしい想像でもしてるんじゃないだろうね?」

「し、してないです!!ただ、なんか凄いのを感じ取っただけだから!!」


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