貴方の強さは私が知っている。   作:魔女っ子アルト姫

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434話

「わぁっ~しんゆ~キーボード打つの早いね~!!」

「なれたら誰でもこんなの出来るぜ、というか本職のプログラマーなら俺より確実に早いだろうし。つうか見てて面白くもないだろこんなの」

「ううん、なんか前に見たアニメのシステムハックみたいで面白いよ!!なんだっけ、星座の日だっけ」

「もしかして射手座?」

「あっそれだ!!」

「俺は戦艦オリオンじゃねえ」

 

職員室。トレセン学園のそこは忙しく働くトレーナーたちの居場所なのだが……今日ばかりは異様な雰囲気に包まれていた。何故ならば……アイルランドの姫殿下たるファインモーションがメジロランページの膝の上に座ってジュースを飲みながら彼女の仕事を見学し、その近くではSP隊長がその様子を見ながらも警護をしているからである。

 

『如何やら、私が御父上に口添えした甲斐があったようで何よりです』

「あれま、何南ちゃんもなんか仕込みでもやったん?」

『ええ。ターボさんと話している時に日本にいらっしゃりたいというお話をしてらっしゃったので私の方からお話を通しておきました』

「わ~い南坂さんありがと~」

『いえいえ、この程度何でもありませんよ』

 

周囲のトレーナーはファインの存在感に気圧されているのにも拘らず南坂は平然とした顔でランページとテレビ通話をしながらファインと会話をする。来日に当たって国王陛下に対して話を通していたらしい。

 

「……南坂、お前サラッとアイルランドの国王陛下に話通したとか言ったけどどうやってだよ」

『単純にランページさんのファンでトレーナーの私のサインも欲しいと言われてしまったんですよ、その時に殿下が日本でレジェンドレースを見たがっているとお伝えしたまでです』

「そうじゃなくて、だとしても相手は国のトップよ?よくもそんなサラッといえるわね」

『ランページさんと一緒ですと凄い方々と出会いますからね、慣れてしまいました』

 

沖野と東条相手にそんな事を言う南坂によく言うぜ……と内心でため息交じりになった。大統領やら長官やらに顔が利く立場に居たからなのに自分のせいにされるとは……まあある意味真実なのだから否定しきれないが。

 

「あ、あれってマジの姫殿下なのか……?」

「数年前にテレビに出てたよな……ほら、天覧レースの時の」

「ああ、あったな……あいつのコネってどうなってんだよ」

 

遠くで此方を見ながらこそこそと話声が聞こえてくる、ウマ娘の聴力を舐めているのか気が動転してそれどころではないのかは分からないがそんな集まりに六平が脚を運んだ。

 

「おめぇらも好い加減に嬢ちゃんにちょっかいを出すのはやめておくんだな。トレーナーとしての腕も確かなのは明白だ、それに―――あの嬢ちゃんはアイルランドの国王だけじゃなくてアメリカとドバイのトップともコネクションがあるんだ。仮に嬢ちゃんがお前らからの嫌がらせで海外に行くってなったら……どうなるだろうなぁ」

「「「……お、大人しくしときます……」」」

「そうしとけ」

 

別に刺さなくてもいいだろうに、六平が特大の釘を打ち付けてた。彼方側からすればオグリの件で世話になったからそれ関連の御返しのつもりなのかもしれないが、その程度で海外に行くほど自分は心は狭くない。何せ一度自殺まで行っているんだ、行くとしたら弁護士立てた裁判ぐらいだ。そんな事がありながらもファインのランページの仕事見学は過ぎていき、お昼にはランページお手製の弁当を屋上で食べる事になった。

 

「アニメで見たんだよね~屋上でシート広げてお弁当食べてるの!!」

「まあ確かに学園アニメ系の定番と言えば定番と言えなくもないか……だけどシートなんて持って来てねぇぞ?」

「ご心配には及びません、こんな事もあろうかと思いまして既に準備しております」

 

と鞄からシートを広げるSP隊長を見て何処の執事だよ、と突っ込みたくなるのを抑えながらもシートに腰掛ける。そしてランページが作ったお弁当の包みを開けるファイン、ウマ娘用のお弁当なので重箱、日本では運動会ぐらいでないと準備しないような光景だが、ウマ娘世界ではむしろポピュラーな光景になるのも面白い。

 

「さて、口に合えばいいけどな……」

 

何せ弁当を作るなんて久しぶりだったので僅かな心配が過る、そして開けられたそれを見て―――ファインは歓声を上げ、SP隊長は素直に感嘆の声を上げた。まず顔を覗かせたのはウマ娘のような飾りがついたオニギリ、チキンライスを卵で巻いたようなオニギリや花のような模様になっている太巻きまで完備。他にも弁当箱の高さに合わせてカットされた紙コップに入れられた唐揚げにハート形の卵焼き、定番のタコさんウインナーやらニンジンメインのサラダなどがこれでもかと詰められた豪華なお弁当だった。

 

「凄い凄い!!アニメで見た奴よりもずっと豪華!!あっ見て見て、このオニギリ私にそっくり!!」

「これはもしやキャラ弁、という奴ですか?もしやこれは私……!?」

 

オニギリの中には流星まで確りと再現されている物もあり、ファインはそれが直ぐに自分を模しているのだと見抜いた。勿論隊長の物も確りとある。

 

「初めての弁当だと思うから張り切っちまったんだよ……さ、流石に毎日こんなレベルは無理だから勘弁してくれよ?」

「しんゆ~って何でも出来るんだね、これお姉様とかに作ってあげたら喜ぶかなぁ」

「飛び上がる程お喜びになると思いますよ、ピルサドスキー殿下はファイン殿下の事が大好きですし」

「ま、まあそんなのは良いから早く食うぞ!!いただきます!!」

「「いただきます!!」」

 

思えば、何時も学食だったからこうして弁当を作って食べるのも何時以来の事なのだろうか……あまつさえ自分で弁当を拵えるなんて……年数で言えば10年も満たぬほどの歳月の筈なのにもう酷く昔のように感じられてしまうから不思議な物だ……

 

「んっこの唐揚げ、温かくないのに中からジュワッとしてる!」

「この赤いオニギリも海苔代わりの卵ともよく合いますね」

「気に入ったならどんどんやってくれ」

「うんっ!!」

 

―――あらあら、ランちゃんはお母さんのから揚げが大好きね。

 

「……っ」

 

不意に見えた、きっとあの時は母は今のファインのように食べている自分を見たのか……そう思うとファインを預かったのは思った以上に良かったのかもしれないと、保温ポッドに入れて来たお吸い物を口へと運ぶのであった。そして大満足のお昼が過ぎれば……お次はプレアデスの面々との顔合わせである。

 

「という訳でアイルランドの姫殿下、ファインモーションとそのSP隊長のピッコロプレイヤーを世話にする事になったから」

 

放課後になってプレアデスの活動が本格化するタイミングで部室でファインとSP隊長の事を皆に紹介する事になったのだが……思ったほど反応が芳しくない。

 

「なんだよ冷めてるな」

「ランページさん、多分冷めてるんじゃなくて皆驚いてるんだと思うよ~?」

「の、割にマヤは驚いてないな?」

「ランページさんだから有り得るかな~って、あっマヤって呼んでね♪」

「うん私の事はファインでいいよ♪」

 

早速ファインと仲良くなるマヤは流石と言わざるを得ない。一方で他のメンバーは驚きの余りショートしていると言っていいだろう。

 

「さ、流石はランページさんだ……まさか超VIPというべき方が会いに来るとは」

「ランページ、お姉様だもんね……当然よね……」

 

何とか状況を飲み込もうと必死になるエアグルーヴとドーベル。世界的にも有名なランページだ、海外からVIPが訪ねて来たとしても可笑しくない。寧ろそれに驚いていたらチームメンバーとしてやっていけないだろうと驚く自分を抑え付ける。

 

「お、お姫様なんですか!?え、え~っと……ほ、本日はお日柄も良く?」

「大丈夫だよ、私は個人として来てるだけだから。ファインでいいよ」

「それならエルもエルでいいデース!!あっエルコンドルパサーだからエル、デース!!」

「ハウディ~!!プリティーリトルプリンセス!!」

「私もお母様を訪ねて凄い人が来た事あったけど、ランページさんは比較にならないわね……失礼キングヘイローよ」

 

マヤを筆頭に仲良くなれるであろうメンバーはファインの笑顔を見てすぐに仲良くなっていく。プレアデスはある種問題児だらけではあるが、一番仲良くなりやすいチームでもあるのかもしれない。

 

「アイルランド……」

「如何したのスズカ」

「ううん、ランページさんが走ったレース……その先頭ってどんな景色なのかなって思って」

「またお前それかよ、向こうの強豪とかに目を向けるだろ普通」

「でも海外かぁ……私も行けるかなぁ」

「そこは行くって気前よく言えよ。俺は行くぜ、景気良く勝って世界中に俺の名前を轟かせてやる。世界最強のウマ娘って称号は、俺が貰っといてやるよ」

「ムゥッ最速は譲らないわ」

 

ファインの事から飛び火して何やら火花を散らせるステゴとスズカ、それを見ながらもこれからの事を考えるサニー。それを見ながらもランページは言う。

 

「世界を目指すのは構わないし俺は強制する気はない、行きたきゃ行けばいい。国内専念がダメって訳でもないしな。さてと、自己紹介も終わった所でプレアデス練習開始と行きましょうか。マヤも次は重賞なんだから気合入れて行けよ」

「勿論!!」

「そしてエアエアは来年にはデビュー、今年いっぱいでデビュー時期を仮決めするつもりだ。ポテンシャル、見せてくれよ」

「はいっ!!」

 

先程までの和やかな雰囲気は一転した事にファインは目を丸くし、SP隊長は素晴らしい緊張感だと思った。これは強くなるはずだ、環境は整っているそれぞれやる気がある。彼女たちがデビューするときは生で見て見たくなって来てしまった。

 

「さあ、ファインも見学するだろ。将来的に留学するであろうトレセンの練習を確り見ていきな」

「ハ~イ!!」

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